Carmen






ドイツ語で歌われた「カルメン」全曲盤です。ホルスト・シュタイン指揮オーケストラはBerliner Symphonikerと表記されています。歌手はR.Schock、H.Prey、C.Ludwigほか、1961年の録音で、独ElectrolaのLP。

まあ、聴き慣れたフランス語でないことに違和感があることは否定できません。もっともジプシー女カルメンや闘牛士エスカミーリォがドイツ語ではおかしいというのなら、オリジナルのフランス語で歌ってるのだってヘンですよね。

これは先年亡くなられたこの指揮者が残したレコードのなかでも出色の出来じゃないでしょうか。ワタシはホルスト・シュタインさんといえば、なんといってもこのビゼーの歌劇「カルメン」のレコードがもっとも印象的ですね(^^*

演奏はモダンな感覚によるメリハリ調、重くならず軽妙、ドラマティックで生彩に富む。ベルリン・ドイツ・オペラの合唱団だけはちょっと堅苦しいけど、これはドイツ語のせいで仕方がない。録音は独Electrola盤らしく高域弦優勢のバランスながら、生々しく細部まで見通しのよい、たいへんすぐれたものだね

ドン・ホセのルドルフ・ショックは弱いんですが、カルメン役のクリスタ・ルートヴィヒはいい意味で知的な役作りがすばらしく、エスカミーリォのヘルマン・プライも独特のおもしろさがあると思いますよ

エスカミーリォ役って、数ある「カルメン」の全曲盤でもなかなかこれはというひとがいないんだよね(^^;力みすぎて自滅というパターンが多い(笑)ここでのプライはこの役にしてはめずらしく、ほどよく力の抜けたリラックスぶりで、陽気な闘牛士というイメージなんだよね。ただ、こちらの先入観もあるのか、なんだか「カルメン」の舞台にフィガロが飛び込んできたみたいなんだよね(笑)







これもドイツ語歌唱の「カルメン」。カール・ベーム指揮シュターツカペレ・ドレスデンによる1942年の録音。歌手はT.Ralf、J.Herrmann、E.Hoengenほか。PreiserのCD。

カール・ベームは、この時期にしてさすがに懐の深い演奏。重厚な響きながらリズムが重くならないんですね。じつはシュタイン盤を聴き直して、これは見事なものだわいとすっかり感心してからこちらを聴いたんですが、上には上があるものです。エリザベート・ヘンゲンはことさらに悪女らしさを演出しない(できない?)歌唱で、かえって好感が持てます。残念ながらほかの歌手は生彩に欠けます。録音は鑑賞に差し支えることはなく、年代を考慮すれば立派。

♪Ich sprach,dass ich furchtlos mich fuehle,
und trotz Gefahr,Mut meine Seele belebt;
doch wenn ich auch die Trapfre spiele,
vor Angst und Schreck mir das Herz erbebt〜ヽ( ̄0 ̄)/〜♪


それは・・・ミカエラのアリアだね(^^*







アンドレ・クリュイタンス指揮ケルン放送交響楽団による全曲録音、これもドイツ語歌唱です。カルメンはイーラ・マラニウク、ホセがハンス・ホップ、エスカミーリォがワルター・ベリー、ミカエラがアニー・シュレムといった布陣、録音は1958年2〜3月、おそらく放送用録音でしょう。

これがまた、いいんですなまたしても「上には上があるもの」・・・と、同じことを言います(笑)やはりクリュイタンスは一枚上手。周知のとおり、クリュイタンスの「カルメン」といえば、ソランジュ・ミシェルのカルメン役で、パリ・オペラ・コミーク管弦楽団を振った1950年のスタジオ録音がありますね。もちろんそれもすぐれた演奏なんですが、歌手に関してはやや印象が薄い。その意味では、この1958年録音のdiscはドイツ語版であることについて許せるのであれば、歌手では一長一短・・・よりやや上。クリュイタンスの指揮はあるいはこちらの方が充実しているかもしれません。

ちなみにHoffmannが所有しているケルン放送交響楽団によるオペラの放送用録音といえば、エーリヒ・クライバーの「魔弾の射手」が1955年、カイルベルトの「オベロン」が1953年、同じくカイルベルトの「魔笛」が1954年・・・ひょっとすると1950年代はこのオーケストラの黄金時代だった?







さて、そのアンドレ・クリュイタンスの正規録音、パリ・オペラ・コミークを振ったレコードです。1950年のmono録音。オペラ・コミーク版。

結論から言えばオーケストラはケルン放送交響楽団のほうが上かも。しかしながら、さすがに板に付いた演奏には違いなく、兵営のラッパにまで盛大にヴィブラートがかかっているのもほほえましい(笑)当然のことに、オールフランス人のキャストによるフランス語は自然で心地よく、ソランジュ・ミシェル以下少々小粒な歌手も、台詞入りのオペア・コミーク版には、むしろふさわしいのではないかとさえ思えてきます。







Hoffmannの大好きなカルメンがこちら―魅惑のアネゴ声、ジャンヌ・ロード。残念ながら全曲盤はなくてハイライト盤。Robert Benzi指揮パリ・オペラ座管弦楽団の演奏で1959年のstereo録音。歌手はJane Rhodes、Albert Lance、Robert Massard、Andrea Guiotなど。仏Philips盤LP。

Robert Benziロベルト・ベンツィは、いずれも音楽家である両親がイタリア人なんですが、1937年にマルセイユで生まれたフランスの指揮者。幼少期から専門的な音楽教育を受け、1947年からはアンドレ・クリュイタンスに指揮を師事。1948年に指揮者としてデビューして、翌1949年には自身の天才少年ぶりを描いた映画「栄光への序曲」に出演(主演)。1954年にオペラでのデビューを飾り、1959年にはパリ・オペラ座で『カルメン』を指揮。これはオペラ座での同作品の初めての上演(一説によると、フルシチョフがフランスに来るんで、文化相のアンドレ・マルローが国威掲揚のために決めたんだとか)であり、同劇場の1961年の初の日本公演(オーケストラ等は日本側で用意)にも選ばれたプロダクションですね。1972年から1987年までボルドー・アキテーヌ国立管弦楽団、1989年から1998年までアーネム・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を歴任。世界各国の主要なオーケストラに客演したほか、メトロポリタン歌劇場、モネ劇場などでオペラも指揮しているひと。

ベンツィの指揮は、さすがに(この録音時期)若手とあって、老練さはありませんが、素直にフランスオペラの伝統に従って、充分な成果をあげたという演奏です。全曲録音でないのはまことに残念。ハイライト盤なので、結果Jane Rhodesがクローズアップされて、これはこの歌手のカルメンを聴くdiscとなっていますが、オーケストラもその他の歌手も含めて、総合点は高いといっていいでしょう。







これも全曲盤ではない、コンチータ・スペルヴィアが歌うビゼーの歌劇「カルメン」の名場面集です。Parlophone-odeon盤LP。花だけ深紅に着色したジャケットデザインが秀逸。

Conchita Superviaコンチータ・スペルヴィアは、1895年スペインはバルセロナ生まれのメゾ・ソプラノ歌手ですね。14歳でコロン劇場にデビュー、翌年(ということは15歳で)イタリアの歌劇場に客演してカルメンを歌い、スカラ座ではラヴェルの歌劇「スペインの時」のイタリア初演にもご出演。オペラから民謡、近代歌曲までこなし、とくにコンサートでもスペイン民謡は民族衣装で歌って人気だったとか。オペラのレパートリーは意外と狭く、やはり当たり役はカルメンで、その情熱的かつ野性味ある歌と演技は「生まれながらのカルメン」と絶賛されたそうです。1936年惜しくも没。

ことさらに悪女っぽくもなく、妙に色っぽいラテン気質のカルメン。このひとの名前、どうしてもピエール・ルイスの小説を連想しちゃいますね(^^*一聴してヴィブラートが目立つんですが、テクニックとしての振る舞いではなく、あくまで直情的な表現というか、役への没入と聴こえ、その醸し出す妖艶さが印象的です。







ジョルジュ・プレートル指揮パリ・オペラ座管弦楽団、カラス、ゲッダ、ギオー、マサールと、当時の一流どころを揃えた1964年の録音。プレートル盤というよりカラス盤だね。国内盤LPも持っていますが、お写真撮ってない。ギロー版による演奏。

プレートルといえば昔はこのマリア・カラスと共演した「カルメン」ばかりが有名で、某評論屋がプレートルのレコードは「『カルメン』だけがいい」なんて書いていたもんですが、プーランク演奏にも古くから定評があった模様。もっとも後にはそればかり言われるようになって、本人が「自分はプーランクのスペシャリストではない」なんて言い出す始末。そんなにダメな指揮者じゃないと思うんですが、Hoffmannがこれまでdiscで聴いた限りでは、たしかに出来不出来の差が大きいみたいですね。かなり以前ですが、フランスのオーケストラと来日して、なんとも気の抜けた、散漫としか言いようのない「幻想交響曲」を振って、たしかそれがまたTVで放送されちゃったんですよね。あれを観たひとなら、プレートルに悪い印象を持っていても仕方がありません。じっさい、liveだとオーケストラのアンサンブルが悪くなるようで、この「カルメン」の充実は、やり直しのきくセッション録音のマジックかもしれません。

マリア・カラスは舞台でカルメンを歌ったことは一度もないそうなんですが、さすがに見事なものですね。声域がぴったり、カラスが歌うのにふさわしい。ゲッダも若々しく、しかしマサールのエスカミーリォが冴えないのが惜しい。

どうでもいいことなんですが、ある年長の知人は、我が家に来てレコードのジャケットを飾るマリア・カラスの写真を見ると、必ず「ムカシ遊んだ女を思い出す・・・」と言い、Hoffmannを放ったらかして、ひとりしみじみとしています。パゾリーニの「王女メディア」のDVDなんか観せたら、茫然自失となって、そのまんま幽体離脱しちゃうかもしれませんな(^o^;







サー・トマス・ビーチャム指揮フランス国立放送管弦楽団による全曲盤。歌手はロス・アンヘレス、ゲッダ、ミショー、ブランクほか。1958〜59年のstereo録音。ギロー版。

伝えられるエピソードから皮肉屋のimageが強いビーチャムですが、その指揮は直情傾向の熱血ぶり。なんかね、自信に満ちあふれた指揮といった印象です。活気ある自発性。さらに、このdiscは歌手が揃っている点では随一といっていいもので、ロス・アンヘレスの悪女というより奔放な優雅さはカルメンとして決して場違いでない個性があり、ゲッダも若々しくミショーも自然な清純派を演じて魅力的。さらに、ブランクこそ「カルメン」録音史上ベストのエスカミーリォですね。ことさらに大きく構えることなく、必要充分なキャラクターとして全体のスタイルのなかで存在感を示しているのは見事と言うほかなし。録音も良質。







Alain Lombard指揮Orchestre Philharmonique de Strasbourgの仏Erato盤LP。カルメンはRegine Crespin、ドン・ホセがGilbert Py 、エスカミーリォがJose van Dam、ミカエラがJeannette Pilou。1974年の録音。仏Erato盤LP。

演奏は残念ながらさほどすぐれたものでもなし、そんなに悪いわけでもないんですけどね。責任の大半は指揮者に帰せられるようです。歌手たちは大物が揃っているわりには意外にもしゃしゃり出るひとがいなくて、重唱などのアンサンブルがいいですね。van Damが冴えないんですが、どういうわけかLPの時代からCD、DVDに至っても、「カルメン」でエスカミーリォ役の歌手がすばらしいという録音がなかなか見あたらないんですよね。1974年のアナログ録音で仏Erato盤なんていうと、さぞかし音質もよさそうに思われるかもしれませんが、たしかにダイナミックレンジも広めで、前奏曲は冒頭から低域がズンズンとよく鳴るものの、高域が歪みっぽく、早い話がドンシャリのバランスです。

小型の装置で音量絞り気味にするとちょうどいいんじゃないですか?(^^;

へえ〜、優美、最近分かってきたね〜(*^^)/
(^-^*)〜♪







バーンスタイン指揮メトロポリタン歌劇場によるDGG盤LP。歌手はマリリン・ホーン、ジェイムズ・マクラッケンほか。

これは1972年の録音で、この時期に、バーンスタインがメトロポリタン歌劇場でビゼーの歌劇「カルメン」を振って好評を博し、DGGがセッション録音を実現させたもの。たしか、バーンスタインは当時CBS(米Columbia?)の専属だったので、交換条件にDGGは自社専属のボストン交響楽団との録音を認めた・・・という経緯じゃなかったかな。そのCBS録音はバーンスタインがボストン交響楽団を振ってのストラヴィンスキー「エディプス王」でした。このDGGのオーケストラ貸しとCBSの指揮者貸しでは、いずれが得したんでしょうね(^^;作品のポピュラリティでは「カルメン」を発売したDGGが有利だったみたいな気がするけど、こちらは3枚組ですからね。バーンスタインって、晩年までそんなにホイホイとレコード(及びCD)の売れる指揮者ではなかったんですよ。

バーンスタインの指揮はもってまわったようで、妙にモノモノしく、ホーン、マクラッケンもカロリー過多気味。どうにもフランスオペラとは聴こえないのは大目に見るとしても、ビゼーの音楽とは異質です。







メトロポリタン歌劇場の「カルメン」といえば、まずはこれ―ローザ・ポンセルによるカルメン、ホセをルネ・メゾンが歌っているという夢のようなキャスト。Hoffmannの大好きなdiscです。

ポンセルは1935年にメトでカルメンをはじめて歌っており、評論家に酷評されながらも、興行的には大成功(だから評論屋の言うことなんてアテにならないんだよ)、1936年、1937年と歌い続けて1937年に40歳の若さで引退。録音は1935年、1936年のものも残されています。このCDは1937年クリーヴランドにおけるlive録音ですから、引退の年の貴重な記録です。高音域に難があると言われたものの、その豊かな表現力に力強さを兼ね備えた歌声は、マリア・カラスの師でもあった指揮者トゥリオ・セラフィンに「今世紀最高のソプラノ」、「奇跡」と讃えられたんですよ。







フリッツ・ライナー指揮メトロポリタン歌劇場1952年2月16日のlive録音。歌手はスティーヴンス、タッカー、アマーラ、シルヴェリほか。

幕が開くと拍手、歌手が登場すると拍手・・・楽しそうでいいですなあ(^^*ライナーが振るとメトのオーケストラも響きが引き締まります。スケール大きく、ちょっとした表情付けによってオペラ的な感興にも不足はありません。スティーヴンスのカルメンは妖艶ながらややリズムが粘る印象なんですが、指揮のおかげで重くならないのはさすが、ライナーの手腕。







ロリン・マゼール指揮ウィーン国立歌劇場によるビゼーの歌劇「カルメン」、1966年のlive録音です。歌手はクリスタ・ルートヴィヒのカルメン、ジェイムズ・キングのドン・ホセ、エバーハルト・ヴェヒターのエスカミーリォ、脇にエーリヒ・クンツやルチア・ポップの名前も並んでいます。鮮明な録音ながら、1966年でmonoは残念。

Hoffmannはベルリン放送交響楽団時代のマゼールが好きで、当時のPhilips録音のdiscをときどき聴きますが、同オーケストラへの音楽監督就任は1965年ですからちょうどそのころの公演の記録ということになりますね。

マゼールの「カルメン」にはほかに2種のスタジオ録音があります。ひとつはベルリン・ドイツ・オペラとの1970年の録音、もうひとつはフランス国立管弦楽団との1982年の録音で、こちらはジョセフ・ロージー監督による映画(収録は1984年)のサントラ盤としても使われていますね。Hoffmannは以前後者のLPを持っていましたが、どうも手際よくまとめた模範解答といった演奏で、おもしろくなかった。同じくロージー監督が映画化している1978年録音のモーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」もそうだったんですが、おしまいまで聴いてから前奏曲(序曲)を続けて聴いてもぜんぜん違和感がない、なーんか内的な燃焼というものが感じられず、泣くのも笑うのも冷静に、これはあくまで演じているものなんだよといった演奏でしたね(指揮とオーケストラの話、歌手はまた別)。

しかしこのウィーン盤はいいですね。時期もさることながら、やはりlive録音というのもよかったんでしょうね。入念な表情付けもあざとくならず、要所要所で自然に熱が入っていく様は純情とさえ感じられます(笑)とくにルートヴィヒがたいへんすぐれた歌を聴かせてくれます。このひと、役を歌い演じるのが上手い知性派でありながら、クールになりきらずに感情移入気味になるところがあって、そのあたりのバランスが見事です。ここではそのルートヴィヒをはじめ総じて女声が魅力的で、ジャネット・ピロウのミカエラもよく、またフラスキータのポップとメルセデスのマルガリータ・リローヴァに、ダンカイロ役のエーリヒ・クンツ(名人芸の域!)らが加わった密輸入業者のアンサンブルはじつに愉しい。そのあたりとくらべると男声陣、ホセのキングとエスカミーリォのヴェヒターはやや弱いかな。とくに後者はliveとはいえ、力が入りすぎて歌のフォルムが崩れてしまっています。







2002年Glyndebourne Opera festivalのlive収録DVD。カルメンはAnne Sofie von Otter、ホセにMarcus Haddock、エスカミーリョにLaurent Nauri、指揮はPhilippe Jordan。

von Otterは日本でも人気の歌手ですが、これまで興味を引くdiscもなく、Hoffmannは今回はじめて聴きました。かなり知的にコントロールされた歌唱ですね。

コケティッシュな悪女―ただし決して下品ではない―といったところでしょうか、演技もとても上手いですね。Marcus Haddockも、純情で意志薄弱なドン・ホセを好演しています

これは、誘惑されたらひとたまりもないのもよくわかる・・・(笑)

ここではカルメンも魅力的ですからね。ただ、エスカミーリォ役のLaurent Nauriはやや弱いですね

エスカミーリョって、レコードでもなかなかいい歌手がいないんだよね

演出もなかなかすぐれたもの。第三幕の前奏曲中のミカエラによるパントマイムもおもしろく、ミカエラがホセを訪ねてきて家に帰るように説得しているのを見守るカルメンの演技もなかなか。ジェイムズ・レヴァイン指揮メトロポリタン歌劇場の、1987年2月に収録されたポール・ミルズ演出によるLDでは、この場面で、ミカエラの涙ながらの訴えとホセのやりとりを聞いているカルメンが嘲るように笑っていました。そういった演技というのはリアリズムかもしれませんが、いかにも「お約束」の反応で陳腐の感を逃れず、ドラマを浅薄なものにしてしまいます。人物像をあたかも「登場人物紹介」の数行で語り尽くせるように単純化してしまうのはディケンズあたりまでのこと。いくらオペラでもイマドキ予定調和のドラマでは白けちゃいますね。

わざとらしい演技など抜きにしても、その表現は必要充分ですね。演出と演技は称賛に値すると思いますよ。最後の殺人のシーンはナイフで喉をかき切るというもので、カルメンは悲鳴をあげることもなく死んでしまいます。ここはほとんどの演出では刺殺なんですよね

そう、それでカルメンが「ぎゃーっ」なんて叫ぶのが嫌だったんだよね。へたくそな演技でこれ見よがしに「ギャーッ」なんてやられると、思わず吹き出しちゃうんだよ。それに、ここはカルメンも覚悟していた、という解釈も成り立つからね。ちなみに、ある劇場で本番中、ホセが小道具のナイフを忘れたんだって。で、しょうがないから絞殺した・・・カルメンを演じていた歌手はどうして首を絞められるのか理解できず、必死になって抵抗したんだとか・・・(^^;

なかなか死ななかったんじゃないですか(^o^;

Philippe Jordanの指揮は快活で歯切れのよいもの、表情付けに関してはやや大げさというか、振幅が激しいんですね。アクセントがかなり強くて、同じフレーズを繰り返すところでは「またか」という印象も。ただし生き生きとしたリズムとテンポ、響きがダンゴにならない見通しのよさには好感が持てます。

ひとつだけ気になったのは、この演出の時代設定。衣裳など意外とモダンなんですが・・・というのは、やたらとタバコ(シガレット)が出てくるんですね(ホセも喫ってます!)。もともとこのオペラの舞台である1820年頃には、シガレットは存在しません。タバコ工場といったって、シガー(葉巻)のはずです。カメラも出てくるし、いつの設定なんだろう?

葉巻はカルメンが喫ってますね(・・;

ちなみに当時葉巻は下層階級のもの、貴族はもっぱら嗅ぎタバコだね

さすがHoffmannさん、Brenford大学でLeolinus Siluriensis教授のもと、Fumifical Philosophyを学んだだけのことはありますね!(^o^*

はあ?(・・?







アバド指揮ロンドン交響楽団によるLP、DGG盤です。歌手はベルガンサ、ドミンゴ、コトルバス、ミルンズほか。1977年8〜9月録音。エーザー版(アルコア版)。

この「カルメン」全曲盤は発売当時待望されていたものでしたね。というのは、その少し前にショルティが「カルメン」を録音するというニュースが流れたときに、カルメン役にテレサ・ベルガンサの名前がアナウンスされていたんですよ。それで結構前評判が高かったんですが、いざショルティ盤が出たらベルガンサがキャンセルしてタチアナ・トロヤノスに代わっていた。それでベルガンサのカルメンを楽しみにしていたひとたちはがっかり。そこにアバド盤が登場・・・と。いま思えば、ベルガンサは既にDGGと「カルメン」の録音を契約済みだったのか、あるいはひょっとしたら、DGGがベルガンサを脇から横取りしちゃったのか・・・。

歌手はベルガンサとドミンゴがまずまずの出来で、わりあいstandardな好演のdiscといいたいところなんですが、エスカミーリォのミルンズがもうひとつ気品に欠けて、優柔不断なホセに対して優位に立つには至っていない。まあ、相手がドミンゴだからね(笑)また、ミカエラのコトルバスはあまりにもカマトトぶっているようで、ほとんど嫌味です。指揮は過不足のない、中庸というより以上の充実。アバドはこのころがいちばん良かったんじゃないかな。







小澤征爾指揮フランス国立管弦楽団による全曲盤。1988年の録音。

これはぜんぜんダメ。ジェシー・ノーマンというひとはなんでもテンポを遅くすればそれでいいと思ってるんでしょうか。リズムが重くて聴くに耐えない。ドン・ホセのシコフもこれといって特徴のないホセで、なんとも存在感の薄いこと。エステスも冴えず、ひとりフレーニが健闘。小澤征爾の指揮には、それなりにドラマティックに盛りあげようという設計が垣間見えるものの、肝心なところでノーマンが妨害してしまい、これではどうにもなりません。駄盤。







ミシェル・プラッソン指揮トゥールーズ・カピトール国立管弦楽団、歌手はアンジェラ・ゲオルギュー、ロベルト・アラーニャ、トマス・ハンプソンほか。2002年の録音で、シューダンス版(ギロー版のレチタティーヴォ付きグランド・オペラ版にオリジナルにあった二つの場面を復活させたもの)による演奏。







(おまけ)



これは映画の「カルメン」“The Loves of Carmen”(1948米)です。ビゼーのオペラじゃありません。

カルメンを演じているのはRita Hayworthリタ・ヘイワース。1987年ブルックリン生まれ、ハリウッドのセックス・シンボルと呼ばれた大女優ですね。ちなみに本名がMargarita Carmen Cansino、ミドルネームがまさしくカルメン。まあ、カルメンて名前はスペインあたりじゃめずらしくもないそうですが。

このひと、顔立ちは意外と派手めでなく、結構日本人好みなんじゃないでしょうか。じつはこの「カルメン」も国内盤(しかも廉価盤)があるのに気が付かないで、海の向こうから取り寄せ(笑)

リタ・ヘイワースは父親がラテン・ダンサーで母親もダンサーだったんですよね

幼い頃から父親にダンスを仕込まれて、メキシコあたりのクラブで踊っていたそうだよ

storyはご存知メリメの「カルメン」をほぼ忠実に追ったもの。ただし観るべきはリタ・ヘイワース・・・のみ? その踊りを観ているだけでも愉しめます。なにしろドン・ホセ役のグレン・フォードの木偶の坊ぶりは・・・これ、演技なのか地が出たのか、よくわかりません(^^;

ビゼーの歌劇「カルメン」では、いかにもな悪女っぷりを前面に押し出すのはもはや時代遅れということで、いまでは演出面からカルメン役の歌手にはそれなりの役作りが求められるとはよく言われるところですね。ただ、それでは昔はことさらにドギツイ悪女としてのカルメンを演じてばかりだったのかというと、ちょっと疑問。ビゼーの古めの録音を聴いても、またこの1948年公開の映画を観ても、そんなに単純な演技と設定ではないと思うんですけどね。