Pelleas et Melisande



#このページは録音年順です。


Louis Hasseimans, Chorus and Orchestra of the Metropolitan Opera
L.Bori, E.Johnson, E.Pinza, L.Rothier, I.Bourskaja, E.Dalossy, P.Ananian
New York, 1934
GAO ESJ-487~489(LP)

つ、ついに入手した・・・これぞ「ペレアスとメリザンド」世界初の全曲録音。GAOというレーベルは“The Golden Age of Opera”の頭文字で、“PRIVATE RECORD/NOT FOR SALE”と表記されています。つまりprivate盤。箱はただの真っ黒い箱。Hoffmannの入手したものに解説書はなく、指揮者と歌手名はレーベルに表記されているもの。Metropolitan Operaの名はどこにも記載されていませんが、これは手許の資料から分かっていたことです。なお、この盤を入手した時点で「ペレアスとメリザンド」の全曲録音のコレクションはcompleteです。


Roger Desormiere, Choroeurs Yvonne Gouverne, Orchestre Symphonique
J.Jansen, I.Joachim, H.Etcheverry, G.Cernay, P.Cabanel, L.B.Sedira
Salle du Conservatoire,Paris, 24-26 mai,1941
Pathe Marconi 1125133(LP), EMI 0946 3 45782 2 6(CD)

デゾルミエール盤。これは1941年パリ、すなわちナチス占領下での録音ですね。この指揮者はプーランクのバレエ音楽「牝鹿」やチャイコフスキーの「白鳥の湖」(抜粋)ではかなり辛口の演奏を聴かせてくれましたが・・・。

辛口と言うよりも気品ある演奏じゃないですか? ほとんどの指揮者がスポイルしてしまった要素を存分に活かしていて、古さを感じさせませんね〜

このデゾルミエール盤やアンゲルブレシュト盤(二種)を聴くと、フランス音楽のフランス人による演奏というものが、じっさいには、カラヤンのような演奏とは対極にあるものと思えます。具体的に言えば、デゾルミエールやアンゲルブレシュトの方がドラマティックに聴こえるんですね。


Emil Cooper, Chorus and Orchestra of the Metropolitan Opera
M.Singher, B.Sayao, A.Kipnis, L.Tibbett, M.Harshaw, L.Raymondi, L.Alvary
New York, 13th January, 1945
Walhall WHL27(CD), NAXOS 8.110030-31(CD)



Bertil Wetzelsberger, Chor und Sinfonieorcheater des Suedfunk Stuttgart
W.Windgassen, L.Wissmann, A.Welitsch, W.Hagner
Stuttgart, 1948
Walhall WLCD0125(CD)


ドイツ語歌唱。ななななんと、ヴィントガッセンによるペレアスです。




Ernest Ansermet, L'Orchestre de la Suiise Romande
S.Danco, P.Mollet, H.Refuss, A.Vessieres, H.Bouvier, F.Wend, D.Olsen
Victoria Hall, Geneva, April 1952
Decca 425 965-2(CD)


スイス出身の指揮者エルネスト・アンセルメは、「ペレアスとメリザンド」全曲録音を生涯に2度行っています。これは1952年録音で1回目。歌手はシュザンヌ・ダンコ、ピエール・モレ、ハインツ・レーフスほか。

アンセルメはもともと数学者で、そのためかひじょうに明晰な演奏を行い、20世紀音楽もさかんに取りあげていました。そのアンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団といえば、イギリスのレコード会社Deccaに多くの録音を行っており、かつては同社のドル箱的存在だったようです。もちろん日本でも人気が高かったみたいですね。

ところが、いま聴くとオーケストラの技術はかなりお寒いものなんですね。ストラヴィンスキーなんてまるっきり奏けていない、「春の祭典」など、奏きやすように(フレージングを変えて)奏いているといった演奏で、まるで暗闇を手探りで進んでいるみたいです。それはストラヴィンスキーに限らず・・・と言いたいところなんですが、とくにドビュッシーとラヴェルの管弦楽曲に関しては、Hoffmannがコドモのころそれぞれの作品に親しんだレコードでもあるためか、古拙と言いたい味わいがあると思っています(^^A;そのほかの作曲家では、個人的にはファリャのバレエ音楽「三角帽子」、やや異色ですがシベリウスの交響曲第2番のレコードが気に入っていて、ときどき聴いています。

アンセルメさんは1969年に亡くなっているんですね。その後このオーケストラは・・・?

パウル・クレツキ、ヴォルフガンク・サヴァリッシュ、ホルスト・シタイン、アルミン・ジョルダン・・・と、そうそうたる主席指揮者を迎えているけれど、ぱっとしないみたいだね。サヴァリッシュ、シュタインが振ったレコードを聴いたことがあるけど、やっぱり下手だった(^^;一説によると、本拠地であるジュネーヴのヴィクトリア・ホールがとても響きがいいので、ここで聴くとアラが目立たないんだとか・・・(ホントか?)

さて、「ペレアスとメリザンド」の演奏ですが、まずオーケストラについては1952年のmono録音の方がいいですね。音質はまったく問題なし、オーケストラが技術的に弱いのもさほど気になりません。ほかのいくつかの盤のように、いかにもフランス音楽でございますといった、作品の一面だけにとらわれた演奏ではなく、表情は多彩です。シュザンヌ・ダンコはややオーバーアクション気味ですが、歌そのものはたいへんすぐれたものです。モレも歌でかなり演技をしていて(表情豊か、ということとは別に)、これはこれで悪くありません。

うかがっていて気が付いたのですけれど、Hoffmannさんは、このオペラに限っては、あまり現代的でインターナショナルな響きや音色で演奏されるのは、お好きではないのではありませんか?(笑)


D.E.Inghelbrecht. Orcheatre National et Choeurs de la RTF
C.Maurane, S.Danco, M.de Groote, C.Gayraud, A.Vessieres, M.Westbury, M.Vigneron
Theatre des Champs-Elysees, 29 Avril 1952
ina FRFO19/22(CD)


INAレーベル、すなわちRadio Franceから出たカミーユ・モーラーヌ生誕100周年記念盤。アンゲルブレシュト指揮による1952年のシャンゼリゼ劇場における「ペレアスとメリザンド」のほか、ビゼーのオペレッタ「ミラクル博士」、2010年のモーラーヌ追悼ラジオ番組を収録。



Jean Fournet, Orchestre des Concert Lamoureux,Choerus Elisabeth Brasseur
X.Depraz, R.Gorr, C.Maurane, M.Roux, J.Micheau, A.Simon, M.Vigneron
Paris, 9/1953
Philips 434 783-2(CD)




Herbert von Karajan, Orchestra di Roma della RAI
E.Haefliger, E,Schwarzkopf, M.Roux, M.Petri, C.Gayraud, G.Schiutti, F.Calabrese
Roma, 19.12.1954
HUNT 2CDKAR218(CD)


RAI(イタリア放送協会)ローマ放送交響楽団をカラヤンが振った1954年のlive録音。

歌手は主役がエルンスト・ヘフリガーとエリザベート・シュワルツコップと、かなり異色。ヘフリガーはともかくとしても、シュヴァルツコップが・・・先頃亡くなったばかりのひとなのであまり悪口も言いたくないんですが、メリザンドとしてはあまりにも異質。第一幕の冒頭など、ミシェル・ルーのゴローがわりあい素直な歌い口なので、素朴なゴローが老練なメリザンドの手管に引っかかっているみたいです(^o^;もちろんシュヴァルツコップにとってもこの公演は例外で、その後メリザンド役は歌っていないのだろうと思いますが、この違和感は声の質の問題ではなく、役作りに起因するものだと思います。

よく、このシュヴァルツコップとか男声のフィッシャー=ディースカウについて、「うますぎる」と批判的に言うひとがいますよね

うん。でもね、じつは「うまい」のではなくて、「つねに(歌唱上の)演技を忘れないけれど、時にあまりにも陳腐で類型的かつ紋切り型の役作りをしている」・・・ということなんじゃないかと思うね

そういうときに、「うますぎる」と言われるということですか・・・(^o^;

ここでのメリザンドの役作りなんて、別なオペラ―たとえばR.シュトラウスのどれかの役でもそのまま通用しそうだよ(笑)

主役の二人以外は、あまり過剰な表情付けを避けた抑制気味の歌唱ですから、よけい目立っちゃうんですね

オーケストラは響きが微温的というか、どこか生ぬるい印象です。




Andre Cluytens, Chor und Sinfonieorchester des Bayerischen Rundfunks
P.Mollet, J.Micheau, H-B.Etcheverry, P.Froumenty, J.Roland, A.Dispey, M.Vigneron
Muenchen, 19.11.1955
ANDROMEDA ANDRD 9081


2007年、突如発売されたクリュイタンスのdisc、ミュンヘンにおける1955年のlive録音です。


Andre Cluytens, Orchestre National de la Radiodiffusion Francaise, Choeurs Raymond St,Paul
J.Jansen, V.de Los Angeles, G.Souzay, P.Froument, J.Collard, F.Ogeas, J.Vieuille
Palais de Chaillot, Paris, 4、6&15 June 1956
ALP15221524(LP), Testament SBT3015(CD)


ドビュッシーの歌劇「ペレアスとメリザンド」、演奏はアンドレ・クリュイタンス指揮フランス国立放送局管弦楽団、歌手はジャック・ジャンセン、ヴィクトリア・デ・ロス・アンヘルス、ジェラール・スゼーほか、1956年の録音。左は英HMV(EMI)盤LP、右はTestament社から出た復刻CD。

前にも書きましたが、ジェラール・スゼー38歳のときの録音です。ジャック・ジャンセンはデゾルミエール盤やアンゲルブレシュト盤(1962年録音)でもペレアスを歌っていて、これは当たり役だったのでしょう。ロス・アンヘルスはスペイン出身ですが、ヴェルディ、プッチーニなどのイタリア・オペラから、バイロイトではエリザベートも歌った、たいへん幅広いレパートリーの持ち主でしたね。

バイロイトといえばクリュイタンスも招かれており、「タンホイザー」(1955、1965)、「ローエングリン」(1958)、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」(1956、1957、1958)、「パルジファル」(1965)を振っていましたね。フランス系の指揮者ですがドイツ音楽も得意にしており、ベルリン・フィルのはじめてのベートーヴェン交響曲全集のレコード録音は、カラヤンでもフルトヴェングラーでもなく、クリュイタンスの指揮によるものでした。

ロス・アンヘレスは伝え聞く暖かい人柄が先入観としてあるためでしょうか、やさしさあふれる声と聴こえますね。バイロイトにおける「タンホイザー」のエリザベートもそうでしたが、どことなく母性的で、そのあたりが好みを分けそうです。ゴローのスゼーは若々しくて、これで髪に白いものが混じっているのかと思います(笑)。かなり折り目正しい几帳面な歌いぶりですね。ジャンセンはスタイルの古さ故か、やや癖のある歌唱と聴こえ、もう少し声に若々しさがあってもいいと思います。なんとなく、このひとだけ口がマイクに近いような気がするんですが・・・。

クリュイタンスはドビュッシーよりもどちらかというとラヴェルの方が得意だったと言われますね、これはHoffmannもそうかなと思います。ラヴェルだと、その上品な演奏から諧謔味やグロテスクな側面も感じとれ、作品のあらゆる要素がうまく消化されていると思えるんですが、ドビュッシーだと、とくにそのグロテスクな味わいが失われてしまっているようです。もちろんすぐれた演奏には違いないんですが、とりわけドビュッシーではスポイルして欲しくない部分が聴こえてこないんですね。オーケストラにはまだフランスのローカルな音色が継承されている時期ですが、夢幻的な美しさだけで押し通してしまったかのようです・・・と、ここまで言っては言い過ぎ(^^A;クリュイタンスはHoffmannも好きな指揮者で、なかなか優秀なオーケストラもいい響きを聴かせてくれているのは言うまでもありません・・・が、やっぱり惜しいですね。

Hoffmannさんはお好きな演奏家に対しては、かえって点が辛くなりますね〜(^^;

前にも言ったけど、好きだからってなんでもいいというわけにはいかないし、やっぱり期待するものも大きいんだよね

それにしても、このLP盤で聴くと、歌手の表情がいっそう豊かになりますね〜(・・;

音質は、奥行き、響きの厚み、各楽器から歌手の表情の抑揚まで、あらゆる点でCDを上回っているね

おかげで演奏まで、よりすぐれたものと聴こえますね

Hoffmannさん、このれこーどの五郎さんって、ステキな声ですねっヾ(・∇・)

お、花ちゃん、わかる?(^o^*



Jean Morel, Chorus and Orchestra of the Metropolitan Opera
V.de los Angeles, T.Uppman, G.London, G.Tozzi, R.Resnik, M.Allen, C.Harvuot
New York, 16.1.1960
Walhall WLCD 0318(CD)




D.E.Inghelbrecht. Orcheatre National, Chorale Lyrique de la R.T.F.
J.Jansen, M.Grancher, S.Michel, F.Ogeas, M.Roux, A.Vessieres, M.Vigneron
Theatre des Champs-Elysees, 13.03.1962 Festival Claud Debussy
Disques Montaigne TCE8710(CD)


こちらはDisques Montaigneから出ていたCDで、1962年のlive録音です。歌手は翌年のBarclay盤とは一部異なり、主役3人はグランシェルが共通で、あとはジャック・ジャンセンとミシェル・ルーです。

演奏についてはBarclay盤の項でまとめて扱います。




Vittorio Gui, The Royal Philharmonic Orchestra, The Glyndebourne Chorus
M.Roux, D.Duval, A.Reynolds, G.Hoekman, H.Wilbrink, R.Bredy, J.Shirley-Quirk
Glyndebourne, Summer of 1963
mcps GFOCD 003-63(CD)


Glyndebourneにおける1963年のlive録音で、歌手はDenize DuvalとHans Wilbrinkのタイトルロール、Michel Roux、Anna Reynolds、Guus Hoekmann、Rosine Bredy、John Shirley-Quirkといった陣容、指揮は(なんと)Vittorio Gui。



D.E.Inghelbrecht. Orcheatre National et Choeurs de l'O.R.T.F.
C.Maurane, M.Grancher, J.Mars, F.Ogeas, A.Vessieres, M.L.Bellary, M.Vigneron
Theatre des Champs-Elysees, 12.03.1963
Barclay 995 014~016(LP)


デジレ・エミール・アンゲルブレシュト指揮フランス国立放送局管弦楽団による仏Barclay盤です。歌手はミシェリーヌ・グランシェル、カミーユ・モーラーヌ、ジャック・マーシュほか。1963年のlive録音。

Barcay盤の録音はCD化されたことがないんですね

仏Barcley盤はその後一度も再発されていないみたいだね。おそらく原tapeも失われてしまっているんじゃないかなあ・・・となると、今後CD化するとしたら、いわゆる「板おこし」(レコードからCD化)で行うほかないということになる


演奏は基本的に1962年と1963年は大きな差はありません。オーケストラが同じにもかかわらず、Disques Montaigne盤(以下DM盤)の方が木管のソロなどひなびた味わいがあると感じられ、1963年のBarclay盤の方が音色が洗練されていると聴こえるのは録音のせい? どちらかというとDM盤の方がホールの残響も聴き取れて鮮明なんですが、Barclay盤はオーケストラ全体の響きのバランスがよく、ソロもはみ出さないといった印象です。このあたりは好みで、DM盤の方がステージ感があっていいというひとが多いかもしれません。その意味ではDM盤の方が表情の振幅が大きく聴こえます。

私はソロが点描画のように浮き上がってくるDM盤が好きですね〜

リズムは前進するための推進力ではなく、ときどきその場で立ち止まるかのよう・・・なのは作品がそうだからなんですが、それでも流動性のロマンで一貫して聴かせる指揮者もいますからね。

「海」などの演奏にくらべると、緊張感がいま一歩と感じるのですが・・・

まあ、長丁場のオペラだし(笑)・・・高齢による衰えでないとも言い切れないけど(^^;ただ、凝集力というものではないね。ここでのアンゲルブレシュトの音楽造りは・・・というよりドビュッシーの音楽自体が、「展開」して中心に向かっていくと言うよりも、「解体」してうつろいゆくものじゃない?(^^*

なんだかワーグナーのライトモチーフへの抵抗みたいですね〜(^o^;

個人的には、たとえばベートーヴェンの「田園」交響曲みたいな書き割りの情景描写に対して、「海」のような時間軸での変化・うつろいを表現したのがドビュッシーならではだと思うんだけどね。その意味では印象派絵画のように、瞬間の描写はドビュッシーとはあまり縁がないんじゃないかな

時間軸ですか・・・そういえば小説の登場人物も、その性格・人格が時間とともに変化していくのはプルーストあたりからですね(話がそれまくりですよ〜(^o^;)

ちょっと聴くとかなり主情的な演奏のようですが、おそらくアンゲルブレシュトは、当時としては客観的な音楽造りの指揮者だったんじゃないでしょうか。

いま聴くとやはりロマン的な身振りも感じられますね。といっても没入型ではなく節度を保ったもので、どことなく硬質な響きはクリュイタンスや後のマルティノンにも通じるものだと思います。どうも、とくにクリュイタンスやアンゲルブレシュトといった指揮者は、響きをあたかもオブジェのように(旋律から)自立させてしまうようなところがありますね。

横に流れるよりも、響きの集積が音楽になっているといった印象だね

そうした印象であるというのは、「硬質な響き」という感じ方とパラレルですね

ボドやジョルダンが中間色で微妙な色彩変化を表現していたのに対して、アンゲルブレシュトは原色を用いる、と感じさせるのは、やはり―とりわけ管楽器の―ソロだね

そんなところもクリュイタンスに似ているんですが(クリュイタンスが似ているのか)、それが華麗な極彩色となるのがラヴェルを得意としたクリュイタンス。華麗になりすぎず、点描画のように原色が浮かびあがるアンゲルブレシュトは、やはりドビュッシーがすばらしいんですね。

歌手はどちらの録音も、いずれ劣らぬ優秀なものですね。歌手のアンサンブルという点ではこの2種はほかの盤にくらべてもとくにすぐれたものです。DM盤のジャンセンも、クリュイタンス盤ではあまり良くは言いませんでしたが、こちらの方がいい出来です。

クリュイタンス盤の方が1956年の録音なのに、この1963年の方が声が若く聴こえますね

ただHoffmannはモーラーヌが好きですね。グランシェルはこれといって強烈なインパクトのある歌を聴かせるわけではないのですが、メリザンド役にはぴったりですね。ほかの歌手ともども、アンゲルブレシュトのスタイルによく合っていて、アンサンブルからはみ出るひとがいないのは、このふたつの録音の大きな長所です。

Barclay盤で残念なのは第3幕や第4幕の終結部、拍手をカットするためでしょう、最後の音が完全に消えないうちに(カッティングされている録音が)フッと切れてしまいます。

第1幕と第2幕の後は続けて演奏されたためでしょうか、会場のざわめきが入っていて、第5幕の最後には拍手も入っていますね。なにも無理に拍手をカットしなくてもよかったと思うのですが・・・

まあ、このレコードに限ったことじゃないので仕方がないね(いや、いまどきならその部分だけゲネプロの録音でも使って編集しちゃうかな)。ただ、原tapeが残っていなかったとしたら、この部分はもう元には戻せないわけだね


Ernest Ansermet, L'Orchestre de la Suiise Romande
E.Spoorenberg, C.Maurane, G.London, G.Hoekman, J.Veasey, R.Bredy, J.Shirley-Quirk, G.Kubrack
Geneva(?), 06.1964
Decca SET277~9(LP), DECCA 473 351-2(CD)


エルネスト・アンセルメによる2回目、1964年のstereo録音で、歌手はエルナ・スポーレンベルク、カミーユ・モーラーヌ、ジョージ・ロンドンほか。オーケストラはいずれもアンセルメ自身が創設したスイス・ロマンド管弦楽団です。

この1964年のstereo録音―こちらもメリザンドはすすり泣きとともに登場。さすがに1960年代も半ばのstereo録音とあって、音がいい分響きも美しく聴こえるんですが、細かい表情を付けた部分で技術が追いついていないところもよく分かってしまいます。どちらかというと1952年盤にくらべると、こちらは全体にやや弛緩気味。といっても、それはあくまで比較してのこと。極端に悪いというわけではなく、ただアンセルメにしては集中力に欠けるかなと思います。もったりした金管など、どことなく曲想に合っているような気もしますけどね(笑)

歌手はゴローのジョージ・ロンドンが例によってクセのある歌で、ちょっとサディスティック? スポーレンベルクは硬質な声で、可憐なメリザンドを演じていますが、いま一歩純粋さとか無邪気さに通じるような表情が欲しいところ。あまりほめているのを聞いた(読んだ)こともなく、おそらく一般的な人気は得られていなのかもしれませんが、この声質はクリュイタンスの指揮で歌っていたら、結構いい組み合わせになったんじゃないでしょうか。ペレアスを歌うカミーユ・モーラーヌはすばらしいですね。速いパッセージでも均質を保つ美声はまったく見事なものです。

なんともなめらかな歌い口ですね(^^*ペレアスで1962年盤、メリザンドでは圧倒的に1952年盤がいいと思うのですが・・・スポーレンベルクよりは・・・

個人的に、ああいったやや芯のある声が結構好きなんだよね(^^;

全体としてはいずれの録音が上、というよりも一長一短ですね



Lorin Maazel, Orchestra e coro della R.A.I. di Roma
H.Guy, J.Pilou, G.Bacquier, N.Zaccaria, A.Reynolds, A.Martino, T.Rovetta
Roma, 20-2-1969
G.O.P. G.O.P.711(CD)


RAIローマ交響楽団のlive、こちらはロリン・マゼールの指揮で1969年の録音。

録音時期が異なるので同列に比較はできませんが、、カラヤンとくらべると、表情の彫りが深いんですね。かなりていねいな表情付けを施していて、やや神経質なくらい―というのは、聴いていると「あ、テンポを揺らした」、「伸縮して・・・ふくらませる、と」・・・なんて具合に、やっていることがじつによく分かるんですね。もう少し自然な処理でもいいんじゃないかと思いますが、いかにもなフランス風に、単一色に塗られてその他の要素が払い落とされてしまった演奏よりは聴いていておもしろいですね。

万人がフランス的と思うような演奏ではありませんが、ブーレーズとはまた違った明晰への意志が感じられますね

ブーレーズだと「知的」という表現をしたいけど、マゼールの場合はもっと感覚的だね。それがややおおげさに感じられるのは、聴き手に対するサービスというか、旋律に身をまかせやすくしてくれているみたいだなあ

ちょっとサービス過剰かも・・・(^^;音楽がモノモノしくなる一歩手前ですよ。徹底的にオーケストラをコントロールしようという意思が強く感じられるのですが、作品への共感とは別次元の話ですね

マゼールの指揮を映像で見たひとなら分かると思いますが、ああいった明快な棒だと、オーケストラも実力以上に奏けちゃうんじゃないでしょうか。ここではRAIローマ交響楽団も、なかなかいい響きを聴かせてくれます。

この録音、低域の響きがかなり豊かですね(・・;

低域過剰と思うひとがいるかもしれないけれど、それはフツーのレコード(disc)の音に毒されているんだな(笑)あれはレコード会社の正規録音が、マイクをたくさん立ててさんざんいじりまわした結果だよ。聴き栄えのいいように、ヌケをよくしようとすると低域が薄くなる。あまり小細工しないで録音すると、低域が痩せないでこういったバランスになるんだよ(^^*



Jean-Marie Auberson, Orchestre de la Suisse Romande
E.Tappy, G.Souzay, E.Spoorenberg
Grand Theatre de Geneve, 1969
Claves 50-2415/16(CD)


これはClavesから出た1969年ジュネーヴにおけるlive録音、演奏はジャン=マリ・オーベルソン指揮スイス・ロマンド管弦楽団。ペレアスはジョルダン盤でも歌っているエリク・タピー、メリザンドはエルナ・スポーレンベルク、ゴローがジェラール・スゼー。

タピーはジョルダン盤よりずいぶん若くて・・・と言いたいところですが、若々しさはいずれの盤でもあまり変わらず。一方スゼーはクリュイタンス盤でも歌っていて、そちらは38歳のとき、この盤では50歳の円熟の歌唱です。

このdiscを購入したとき、オーケストラはきっと下手なんだろうなあ・・・と思っていたんですが、なかなかの好演。



Pierre Boulez, The Orchestra of the Royal Opera House, Covent Garden
G.Shirley, E.Soederstroem, D.McIntyre, D.Ward
London, 1970
CBS Sony SOCZ452~454(LP), CBS 77324(LP)


ブーレーズ、コヴェントガーデン王立歌劇場による1970年の録音です。これはHoffmannがこのオペラを聴いたはじめてのレコードです。ブーレーズも近頃はすっかり物わかりのいいオトナになっちゃったみたいですが、このころはマダマダ・・・(笑)

曖昧さのない、分析的な音楽造りですね。オーケストラの精妙な響きがとても印象的ですね

ブーレーズならではと思うけど、その「曖昧さのない」ってところ、それがこの指揮者だけのものだというのなら、異論あり・・・だな(笑)過去の演奏がそんなにふわふわぼけぼけの曖昧な演奏だったのかな? そもそもこんなに「ことば(フランス語・語り)」の重視された作品なのに・・・。たいがい、ドビュッシーといえば「印象派」っていう先入観があって、その「印象派」絵画あたりのイメージにとらわれすぎているんじゃないか?

ドビュッシーが印象派・・・というのももはや古いですね(^^*

おそらくこのdiscで(ということはコヴェントガーデンにおける公演で)起用された歌手は、「あえて」選ばれたひとたちなのだと思いますが、ジョージ・シャーリーのペレアスは、黒人だからではなくて、声だけ聴いても、これはミスキャストじゃないでしょうか。

それにしてもこのメリザンドは・・・


「うまいんだかへたなんだかわからない」・・・ですよね(笑)Hoffmannさんはこの歌手(もうひとりいますけど)を聴くと、必ずそうおっしゃるんですよね(*^o^)(^o^;そだっけ?



Rafael kubelik, Chor und Symphonieorchester des bayerischen Rundfunkus
N.Gedda, D.Fischer-Dieskau, P.Meven, W.Gampert, R.Grumbach, H.Donath, M.Schiml, J.Weber
Herkulessaal der Muenchen Residenz, 16./17. November 1971
Orfeo C 367 942 I(CD)


ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団による1971年11月のlive録音。歌手はゲッダ、ドナート、フィッシャー=ディースカウ。クーベリックというと、いかにも中庸を行く指揮者のようにイメージされていることがあるようなんですが、意外と濃厚な表情付けをする指揮者でもあり、作品によっては野性味さえ感じさせることがある指揮者ですね。

liveといってもおそらく演奏会形式による録音だと思いますが、音だけ聴いていても舞台をイメージさせるのは、歌手の演技のせいばかりではないでしょう。テンポもリズムも揺れて、聴いていると結構忙しい(笑)それも、ややあざといかな、と感じさせるマゼールあたりとはまた違って聴こえるのは、なんとなくこちらの先入観もありそう(^o^;ですが、オーケストラの音色(必ずしも上手くはないが、やや渋)のためか? ドラマ性を志向しているようでありながら、あまり外面的にならないのもその辺の影響かもしれません。

「ペレアスとメリザンド」の音楽を、緊張は常に抑制されていて、全曲にわたって鎮静剤みたいだと言った歌手がいるんだけど・・・個人的には、こんなに緊張感に満ちた音楽はめずらしいと思うよ


この演奏、緊張感が途切れないのがすばらしいですね

歌手は1970年代の有名どころ(ゲッダは’60年代が最盛期か)。男声はあまりHoffmannの好みじゃありませんが、メリザンドのドナートはいいですね。ありがちなメリザンドを意識しすぎることのない、このひとなりのメリザンドになっているところ、好感が持てます。



Serge Baudo, Orchestre de Lyon, Ensemble vocal de Bourgogne
M.Command, C.Dormoy, G.Bacquier, J.Taillon, R.Soyer, M.P.Duteil, X.Tamalet
Auditorium Maurice Ravel de Lyon, 14-19 septembre 1978
Eurodisc 300 096-445(LP), Victor VIC2223~5(LP)


セルジュ・ボド指揮、リヨン管弦楽団による演奏。1978年録音で、正規録音としては1970年のブーレーズ盤以来なんですが、この年にはカラヤン、ベルリン・フィルも録音しているんですね。当時日本で出た国内盤は限定発売で、その後再発売はされなかったようです。何組プレスしたのか知りませんが、探すとなかなか見つからないんですな、これが(^^;

歌手はミシェル・コマン、クロード・ドルモア、ガブリエル・バキエ、ジョスリーヌ・タイヨン、ロジェ・ソワイエと、フランス人が並んで、変な言い方ですが、歌詞は発音が安定しています。


・・・というのは、8年前のブーレーズ盤や同年のカラヤン盤とくらべてのことですね(^^*

ただ、個性は稀薄で今ひとつ魅力に乏しい・・・どことなく、万人受けしやすい、上品でやさしくおだやかなフランス音楽に予定調和してしまったようですね。「ペレアスとメリザンド」は、これで相当緊張感のある音楽だと思うんですが、どこまで聴いてもなかなかその緊張感に至らない。ボドって、ときどき火事場の馬鹿力(失礼)のような名演をものすることもあるんですが、ここではオーケストラが機能的に弱く、意あって力足りずの印象です。

ちょっとムードに流れてしまっているようですね

とはいうものの、Hoffmannはこのレコードが結構好きで、ときどき聴くんですね。ボドは某国営放送のオーケストラを振りに来日したこともあり、リヨン管弦楽団とも来日したことがあるはずなんですが、人気が出ないのは、やはり日本ではドイツ音楽偏重の傾向が強いからじゃないでしょうか。日本で人気のある二流、三流ドイツ人指揮者よりも余程実力のあるひとだと思うんですけどね。


左が国内盤で、右は独プレスで・・・デザインは 国内盤がクリムトで、独盤はベックリンですね

Eurodisc盤で聴くとオーケストラも歌手の声も響きが深くなって、演奏もより魅力的に聴こえるね



Herbert von Karajan, Choeurs de l'Opera de Berlin, Orchestre Philharmonique de Berlin
F. von Stade, R.Stilwell, N.Denize, J.van Dam, R.Raimondi
Berlin, Decembre 1978
Pathe marconi 2C167-03650/2(LP)


ご存知カラヤン、ベルリン・フィルによる1978年の録音。おそらく多くのひとは、フランス音楽、それもドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」とくれば、とにかくしなやかで柔らかい響き、決して激することのないややフラットな抑揚の音楽をイメージするんじゃないでしょうか。カラヤンの音楽がまさにそれ(^^;

モーツァルトのオペラで女声の伴奏を振っているショルティみたい・・・と言ったら分かりますかね(^^;ふわふわ〜

ちょっと陳腐な表現ということですか?(^o^;

それはそれとしても、このカラヤン盤ではそうした(演奏上の)演出が厚化粧と聴こえるのは困ったもんです。




Armin Jordan, Orchestre National del'Opera de Monte-Carlo
E.Tappy, R.Yakar, P.Huttenlocher, J.Taillon, C.Alliot-Lugaz, F.Loup, M.Brodard
Palais des Congres(nouvelle salle)Monte-Carlo, 07/1979
Erato 2292-45684-2(CD)


アルミン・ジョルダン指揮モンテ・カルロ国立歌劇場管弦楽団による演奏。ボド盤の翌年1979年の録音で、同傾向の演奏だったかな・・・と思ってひさしぶりに聴いてみたんですが、こちらの方がダイナミクスの幅があって動的な印象ですね。ややおおげさに言うと、なんとなく、一瞬セザール・フランクのオーケストラのように聴こえてしまうような響きです。これもドビュッシーの一面といっていいでしょう(そうか?)。オーケストラのアンサンブルもリヨン管弦楽団より上、音色も美しい。ただ、その抑揚が音楽のうねりには至らず、内面から練り上げたのではなく、外面から造り整えたように感じられます。作為的な小賢しさのない、言ってみれば純情な演奏ながら、そのためかちょっと素っ気ないんですね。

歌手はゴローのフッテンロッハーが印象的で、主役のタピー、ヤカールも(好みは別にして)悪くない出来です。ジュヌヴィエーヴはボド盤と同じタイヨン。「ペレアスとメリザンド」のdiscを並べると、同じ歌手の名前が何度も出てくるんですね。

フランスオペラとなると、やっぱり歌手の層が厚いとは言えないんでしょうか・・・



Mark Elder, English National opera Chrus and Orchestra
Tomlinson, Walker, Dean, Howlett, Hannan, Brackenridge
london, 28 November 1981
CHANDOS CHAN 3177


ドビュッシーの歌劇「ペレアスとメリザンド」は英Chandosから出た、English National Operaによる英語歌唱版。まあ、「ペレアスとメリザンド」はコンプリートすることと決めているので入手しました(もっとも韓国語版だったらさすがに買わないゾ・笑)。やはり英語訳詞は違和感があります。ヴェルディだってWagnerだって英語ではちょいと困るのは当然、いわんやドビュッシーにおいておや。オーケストラは明晰系で、曖昧さを排してやや太めの線で描いた印象、ニュアンスは豊か。指揮はマーク・エルダー。歌手の名前なんてろくすっぽ確かめもせず聴きはじめたんですが、ジュヌヴィエーヴの声に「おや」と思ったら、セイラ・ウォーカーでした。うまいなー。最近の録音ではなくて、1981年11月28日のlive収録。



Claudio Abbado, La Scala Orchestra & Chorus
F.von Stade, K.Ollman, N.Ghiaurov, J.Brocheler, P.Oace, G.Linos, A.Giacomotti, S.Sammaritano
Milan, May 28, 1986

OPERA D'ORO OPD-1195(CD)




John Eliot Gardiner, Orchestra of the Opera National de Lyon, Chorus of the Opera National de Lyon
Stage Director Pierre Strosser
C.Alliot-Lugaz, F.Le Roux, J.van Dam, R.Soyer, J.Taillon, F.Golfoer, R.Schirrer
Lyon, 1987?
IMAGE ID9311RADVD(DVD)


室内劇。なかなか美しい舞台です。Blu-rayで出して欲しい。ガーディナーの指揮はやや蒸留水的で、旨味もうひとつといった印象ですが、歌手は総じて優秀。



John Carewe, Orchestre Philharmonique de Nice, Choreurs de L'Opera de Nice
M.Walker, E.Manchet, C.Yahr, V.le Texier, P.Meven, P.le Hemonet
Nice, Juin 1988
Pierre Verany PV.788093/94(CD)


このdiscはめずらしいかもしれません。いつ購入したのかもおぼえていないんですが、その後shopで見たことがないんですね。John Carewe指揮ニース・フィルハーモニー管弦楽団(ニース歌劇場)による1988年6月の録音。CDケースにはニース歌劇場との共同製作とあります。指揮者も歌手もあまり馴染みのない名前が並んでいますが、じつはこれがHoffmannのお気に入り(^^*

アンサンブルは超一流とはいきませんが、オーケストラは表情豊かで深い内容を感じさせ、響きもなかなか美しい。歌手はメリザンド役のEliane Manchet、おそらく聴くひとによって好みの分かれるところだと思いますが、影が薄くて儚いばかりのメリザンドではなく、無邪気な子供のようでいて、気品さえ漂わせる透明な声がすばらしいですね。


いま風に言うと、ちょっと「ツンデレ」ですかね〜(^o^*




Charles Dutoit, Orchestre symphonique de Montreal, Choeurs de l'OSM
C.Alliot-Lugaz, D.Henry, G.Cachemaille, P.Thau, C.Carlson, F.Golfier, P.Ens
St Eustache, Montreal, May 1990
Decca 430 502-2(CD)


シャルル・デュトア指揮モントリオール交響楽団による1990年の録音。ジョルダン盤でイニョルドを歌っていたアリオ=リュガスがここではメリザンドを歌っています。

ジョルダン盤で「内面から練り上げたのではなく、外面から造り整えたよう」と言いましたが、この表現はデュトア盤にとっておくべきでした。オーケストラを鳴らすのは得意な指揮者で、これは録音のせいもあるかと思いますが、とにかく混濁感の皆無な透明度の高いオーケストラはなかなか美しい。ところがその音色は魅力に乏しく、奏いているというよりまさに鳴っているといった印象で、内容を感じさせない表面的な響きと聴こえます。

演奏のコンセプトもこれまでにとりあげたdiscにあったような、聴き手の期待どおりのフランス音楽演奏に予定調和してますね(だからこそ表面的という印象を持つとも言えるでしょう)。そのあおりを受けてか、歌手も総じてあっさりと歌っている印象です。

そのわりにニュアンス不足となると・・・(^^;

Hoffmannさんがボド盤を、その欠点にもかかわらず「結構好き」とおっしゃった理由は、このdiscあたりとくらべればその点でまだしも・・・ということですね(笑)



Claudio Abbado, Wiener Philharmoniker, Konzertvereinigung Wiener Staatsoperchor
M.Ewing, F.Le Roux, J.van Dam, J-P.Courtis, C.Ludwig, P.Pace, R.Mazzola
Wien, 1 1991

DGG 435 344-2(CD)

このdiscについては、Die Toteninselさんから「寸感」をいただいております。ありがとうございました!

---ここから---
 実はアバド盤は私も苦手でして、1枚目の1/4ぐらいで聴くのを止めていました。しかし全部聴かずに批判も出来ないので、時間を見つけて全曲を聴いてみました。
 第一に気付くのは、響きの特質です。アンゲルブレシュトの演奏が、ドビュッシーの音の精妙な彫琢のなかに厳しい凝集を志向するものだとすれば、アバドのそれは、その音をオペラ的な躍動感へと解き放とうとしている、と言えるでしょう。ヴィーン・フィルの響きは、音彩の豊麗さと甘美さを際立たせながらも、デュトワ/モントリオール響の甘美さとはまた違い、アバドの志向する外向的な色彩感を鮮やかに生き生きと描き出しています。しかし、この、明るい陽光を連想させる響きが、ドビュッシーの音楽に相応しいかどうかは、私には疑問です。
 次に気付いたのは、従来の盤とは微妙に異なった楽譜が使われているらしいということです。リブレットを読み返しますと、ドビュシー自身によるさまざまな改訂や補筆を反映させた独自のスコアを用いているということですが、「おや?」と思わせる箇所がいくつかありました。
 第三に気付いたのは、盛り上がりの箇所の設定です。アンゲルブレシュト盤では、第4幕・第4場を比較的抑えめに指揮し、第5幕で比類のない盛り上がりを見せた後、急激に劇上昇線を下降させて終わっていましたが、アバドの劇上昇線は、第3幕・第4場で一度大きく盛り上がり、、第4幕・第4場の終わりで頂点に達したのち、第5幕では静かな上下運動を繰り返しながら徐々に下降線を辿っていきます。ドラマを雄弁に表現しようとするアバドの志向が感じられますが、私には、アンゲルブレシュト盤のような大きな感銘を得ることが出来ませんでした。
 第四に指摘したいのは、歌手についてです。フランス語に関しては、リヨンでグシュルバウアーのアシスタントをしていたクレール・ジボーが指導した甲斐もあって、まず問題になることはありません。ゴローの揺れ動く心理を、ダムは見事に表現しています。若々しく、情熱的なル・ルーのペレアスも素晴らしい(彼はドビュシーの「アッシャー家の崩壊」(アジェンデ・ブリン編)でも好演していました。)。クルティスのアルケス、ルートヴィヒのジュヌヴィエーヴ等の脇役も好演しています。
 問題はユーイングのメリザンドでしょう。私がこの演奏を聴くのをすぐにやめた理由は彼女にあります。その濃厚で官能的で肉太な声は、うっかり触れると壊れてしまいそうな妖精のイメージにはほど遠く、きつい香水のにおいをぷんぷんさせて道端に座り込んでいるおねえさんみたいであり、彼女の「Ne me touchez pas, ne me touchez pas!」は翻訳すると「触んないでよ!!」となりそう
です。第4幕の逢い引きの場などは、ドラマティックではあるけれども、「ペレアスとメリザンド」から得られる真の感銘からはほど遠い表現でしょう。
---ここまで---

ほとんど同じことを言うようですが、やはりペレアス役のル・ルーはいいとして、メリザンド役のユーイングが異質ですね。本人としてはずいぶんアクセントを抑えるなどして「それらしく」歌い演じているつもりらしいんですが、あまりにも俗っぽい(-_-;アバドの指揮については、うまいことはうまいのですが、内的な劇的緊張よりも外へと向かう劇的効果をめざしたものと感じられます。オーケストラの響きは、ウィーン・フィルが演奏するとこうなりますよ、といった印象で、音色そのものには違和感がなく、これはこれで美しいですね。



Pierre Boulez,
Orchstra and Chorus of Welsh National Opera
Stage and Directed by Petere Stein
A.Hagley, N.Archer, D.Maxwell, K.Cox, P.Walker, S.Burkey, P.Massocchi
Cardiff, 3.1992
DGG 440 073 030-9(DVD)



Jean-Claude Casadesus, Orchestre National de Lille-Region Nord/Pas-de-Calais, Choeur Regional Nord/Pas-de-Calais
M.Delunsch, G.Theruel, A.Arapiab, G.Bacquier, H.Jossoud, F.Golfier,J-J.Doumene
Lille, 15th to 23rd March,1996
NAXOS 8.660047-9(CD)


ジャン=クロード・カサドシュ指揮リール国立管弦楽団による録音。収録は1996年3月、評判になった上演の記録とのこと。

この指揮者のdiscはいくつか聴いたことがあって、どれも悠揚迫らぬテンポで、激することなくオーケストラをゆったり鳴らしたものでした。このdiscでも同じ調子かなと思ったら、その後の変化か、あるいはやはりオペラとなると違ったものか、そんなに淡々とした演奏ではなく、テンポの伸縮もあって、ていねいに表情を付けています(先頃発売になったベルリオーズの「ファウストの劫罰」でも同様の印象を持ちました)。とはいえ、全体としてはおっとり。キャストが全員フランス人ということもあって、歌詞の発音などは安心して聴いていられます。これ見よがしにひとの目(耳)を惹きつけるような特徴には乏しいかもしれませんが、なかなか魅力的な演奏ですね。

このdiscを聴くと、なんだかんだ言っても、ハイティンク盤あたりはメジャーな指揮者の演奏だったんだなあ・・・と思うね。失礼な言い方かもしれないけれど、これはいい意味でのマイナーだね

ローカルと言った方がいいかも・・・たしかに、クーベリック盤に続けて聴くと、やはりこちらの方が「それらしく」聴こえちゃいますね〜




Andrew Davis, London Philharmonic Orchestra,The Glyndebourne Chorus
Director Graham Vick
C.Oelze, R.Croft, J.Tomlinson, G.Howell, J.Rigby, J.Arditti, D.Gwynne, M.Beesley
Glyndebourne, 1999
KULTUR D3117(DVD)


これまた室内劇で美しい舞台ですね。



Bernard Haitink, Choeur de Radio France, Orchestre national de France
A.S.von Otter, W.Holzmair, L.Naouri, H.Schaer, A.Vernhes. F.Couderc, J.Varnier
Theatre des Champs Elysees,Paris, March 14th &16th,2000(2001?)
NAIVE V4923(CD)


ベルナルド・ハイティンク指揮フランス国立放送管弦楽団による演奏。録音は、外箱には2000年とあり、解説書には2001年とある。いずれが正しきや不明。live録音。同じ組み合わせの演奏による録音は、NAIVEからはやはりラジオ・フランスの録音になるマーラーの交響曲第6番、第5番が出ていて、とくに6番がたいへんみごとな演奏だったので期待して聴いたんですが・・・。

録音はまずまず、主役のふたり―フォン・オッターとホルツマイアーをはじめとして歌手も好演なんですが、どうもオーケストラが物足りないんですね。どこが悪いと積極的に指摘しづらいんですが、とにかく柔らくしなやかな響き。ハイティンクというひとは過剰な自己主張をすることなく、自然体でいい音楽をつくるひとですね。ところが、オペラになるとそうした姿勢がドラマティックな演出をあえて避けているようで、ドラマに出しゃばらないと言えば言えるし、でも言い換えればあくまでシンフォニックな音楽造りに徹底していて、そのあたりが物足りない。表情の微妙なうつろいをこちらから聴きにいって・・・も(^o^;どうも凝集力というか、緊張感に至らないのが残念です。




Franz Welser-Moest, Orchester der Opera Zuerich, Zuzatzchor Opernhaus Zuerich
Directed foe stage by Sven-Eric Bechtolf
R.Gilfry, I.Rey, M.Volle, L.Poigar, C.Kallisch, E.Liebau, G.Goetzen
Opernhaus Zuerich, 18,20 11.2004
TDK TDBA0108(DVD)

個人的には演奏も演出もちょっとなあ・・・というDVDです。monologue 2006.10.04 wedを参照



Bertrand de Billy, ORF Radio-Symphonieorchester Wien, Arnold Schoenberg Chor
N.Dessay, S.Degout, L.Naouri, P.Ens, M-N.Lemieux, T.Mirfin, B.Ritter
Wien, January 2009
Virgin Classics 50999 6961379 1(DVD)


このメリザンドはミスキャストでは?







(全曲盤ではないけれど・・・)


Pierre Coppola, Orchestra
Y,Brothier, C.Panzera, W.Tubiana, Vanni-Marcoux
March/April 1927 and October 1927
Pearl GEMM CD 9300(CD)

SP盤からの復刻による抜粋盤、というより「さわり」。ほかにDebussy、Milhaud、Duparcの歌曲も収録されています。



JeanBeaudet, Orchestre de Radio-Canada
S.Danco, J-P.Jeannotte, R.Savoie
24 mars 1955
VAI 4380(DVD)


第二幕からの抜粋。なお、このDVDには同じRadio-CanadaによるCharles Gounodの“Mireille”も抄録されています。




Marc Minkowski, Oliver Py
Moscou, 2007
naive(DVD)

2007年6月にマルク・ミンコフスキ指揮オリヴィエ・ピーの演出でモスクワで「ペレアスとメリザンド」を上演した際の、制作ドキュメンタリー。リハーサル風景、インタヴューなど。特典映像にマニュエル・ロザンタールの「ペレアス」リハーサル風景も収録されています。PAL盤。