#28 月の光、夜の風 ― あるいは狼男の憂鬱




すると聖職者は否定的だったのですね

そうでもないひともいる。
「月の満ち欠けによって狼に変身する人々がいる」とは、13世紀のゲルウァシウスの証言だ。とくにイングランドではごく一般的な現象であるしている。この人が紹介している実話には、ある兵士が放浪の末狼に変身し、子供を喰い殺し大人をも切り裂いたが、ある樵に斧の一撃を見舞われ片足を失い、ようやく人間の姿に戻ったというものがある

もっとも、ゲルウァシウスはどれもひとから聞いた話だとして語っているんだけどね(^^;

ずるいですね(^^;;

この実話を例にとれば、ここでは狼憑きがある種の狂気による変身として扱われている。変身という事実は否定していないんだ

そこが近代以前ですね

でも、聖職者として変身を「幻覚」と決めつけないところが、新しいかもしれないよ。ひとから聞いた話だとことわっているのは、どっちつかずの曖昧な態度のようで、じつは変身を信じていたんじゃないかな





民間の伝説では、狼革のベルトを締めた男が狼に変身して馬を引き裂いて一頭たいらげてしまったとか、居酒屋の娘が午前0時になると狼に変身して恋仲の若者を襲ったなんていうものがある。こういった伝説ではなぜその人々が狼に変身したのか、その理由は語られていない。

ところが集められた伝説を子細に見てゆくと、狼に変身するのはどちらかというと、アウトサイダー的人物なんだね。つまり、村や町で評判のよくない、あるいは近隣の住民とうち解けない人間が、「あれは人狼ではないか」と噂された、そんな社会における人間関係の反映として人狼伝説(伝承)が成立しているようなふしがある。

現に16世紀から18世紀に至るまで、人狼として告発されて処刑されたという例は少なからず見られるようだ


魔女裁判ですね。当人にしてみればひどい話ですね

逆に、東プロイセンでは乞食たちが、自分たちは人狼だと言って施しを強要したという事件もあったんだよ(笑)

いま聞くと、ちょっと愉快な事件ですね(^^ )





狼男といえば満月と思いますけれど、そうした伝説では、狼に変身する人間はかならずしも月の影響を受けたとは説明されていないのですね

そのようだね。でも、ヨーロッパでは昔からあまり月光を浴びすぎると(または月を長く見ていると)狂気に至るという迷信があった

月はluna(ルナ)、lunaticは「狂気」でしたね

moonstruckには「月に照らされた」のほかに「気の変な」という意味もある

最近では月の引力が人体に及ぼす影響について指摘しているひともいますよね。放火や殺人事件、交通事故などは、満月と新月の日に多いとか・・・

潮の満ち引き、すなわち月の周期がその生態に関わっている生物はめずらしくないよね。海亀の産卵なんかがその代表だ

つまり昔のひとは知っていた、と・・・

ただ、狼男に関して言うならば、月(光)が不吉で不気味なものと考えられるようになったのは14世紀頃かららしい。だから狼男伝説の方が古いんだよ



それにしても、狼ってすっかり悪者ですね(-_-)

古代地中海世界では牧畜を脅かす存在だったからね。
北欧の伝承では、巨人の女が生んだ狼は月を飲み込み、血で大気と天を汚すことになっていて、世界の終末は「狼の時」と呼ばれているんだ。

そもそも狼は、神に仕える犬の敵として悪魔によってつくられたとされている。そこから強欲、偽善、不誠実というイメージを与えられ、さらには異端、無神論者といったものの代名詞となってしまったんだ


同じ食肉目イヌ科なのに、なんだか気の毒ですね(困)

さらに別称として「冬と夜の動物」ともいわれるし、「魔女は狼の姿で現れる」なんていうことばもある

そういえば、吸血鬼もこうもりばかりでなく、狼にも変身しますね

ああ、そうだったね(^^ )

でも、吸血鬼といえば、現代文学や映画などでは吸血鬼や狼男自身が「悩める存在」として描かれているものがあるよね。己の身体に流れる血に苦悩する、世間から見ればアウトサイダー的存在ってわけだ。その草分けは手塚治虫の「バンパイヤ」じゃないかと思っているんだけどね

それじゃますますかわいそうですよ〜(-_- )

・・・そうそう、一方では狼の皮や目玉、歯、尻尾などは厄除けの効能を持つとも信じられていたんだっけ( ・_・)♭


それはよかったですね!(/^^)/バンザーイ

(・_・ )?・・・優美、なんか狼に好意的だね(笑)・・・なんで?

だって(- -*)・・・Hoffmannさん、動物占いで狼だったじゃないですか・・・







なーに、男はみんな狼って言うしね(´-`)ノ・・・いっそねずみ男ってのも魅力あるキャラクターだぞ(笑)



今回は前回とりあげたフロイトの「狼男の症例」から連想。ただしアチラは今回の(ホントの)狼男とは関係ありません。