#57 どなたをお尋ね? ― あるいは被害者・探偵・目撃者


これもネタバレありません



ミステリといえば基本は“Whodunit?”(フーダニット)、つまり犯人探し、同時にトリックを解明するのがストーリーの流れだな
これが、いわゆる倒叙法なら、読者にはあらかじめ犯人がわかっていて、次第に追いつめられていく過程を描いてゆく心理小説になる

昔テレビで放送されていた「刑事コロンボ」のパターンですね

優美、なぜそんなものを知っているんだ?(・o・)

・・・ところが、長い歴史のなかで作家もいろいろ工夫を凝らしていて、“Whodunin?”つまり被害者探しのミステリがある


なんという小説ですか?

パット・マガーという女流作家の「被害者を捜せ!」という小説がそれだ。パット・マガーこのとき29歳の新人作家だったんだよ

どんなストーリーなんですか?

語り手は第二次大戦中、アリューシャン列島に駐屯している海兵隊員だ。活字に飢えて、活字でありさえすればみんなで回し読みをするという状況にあって、ある日隊員のひとりが故郷から受け取った小包の中に詰め物として使われていた新聞を読んでいたら、語り手がかつて4年間勤めていた「家事改善協会」内での殺人事件の記事が掲載されていた。ところが新聞紙が途中でちぎれているため、犯人はわかっても被害者が誰なのかわからない。
そこで語り手はかつて協会に勤務していた頃の話をして、みんなで被害者当ての賭をすることになる・・・安楽椅子探偵ものの一種だな


設定が自然で、上手いですね〜(^^)でも、それだと物語のなかで殺人事件が起こるわけではありませんから、小説として出来がよくないと、だめですね

話に出てくる容疑者(といっても被害者としての)はいずれもひと癖ある人物ばかりで、誰が殺されても不思議ではないんだけど、海兵隊員たちはそれぞれ頭をひねって被害者は誰なのかを推理するんだ

・・・と、おっしゃるということは・・・

なにしろ人物造形がすばらしいんだな



第二作「七人のおば」は、結婚してイギリスに渡った語り手の女性が、友人からの手紙を受け取るところからはじまる。手紙には「お家を遠く離れたところで、おばさまがご主人を毒殺したと告白されたのを耳にするなんて、さぞや恐ろしいことでしょう」とあるんだが、そのおばの名前が書いてない。ところが彼女には7人のおばがいるんだ。いったい、どのおばが・・・?
彼女は夫に促され、おばたちと暮らした7年間を回想する・・・


7人のおばには7人の夫がいるわけですよね。それだけのキャラクターを描き分けるのは並大抵ではありませんね(・o・;

これまた一筋縄ではいかない人間模様でね、やはりそれぞれのキャラクター描写が見事だよ



第三作は「探偵を捜せ!」(笑)

こんどは探偵捜しですか?(^o^;

この小説は、ある山荘での美貌の若妻と病弱な夫の会話ではじまる。
夫は妻が自分を亡き者にして遺産を手に入れようと狙っていることに気づいており、すでに探偵を呼んでいることを告げる。妻はその晩夫を殺害し、そして訪れた4人の客・・・夫が呼び寄せた探偵は4人のうち誰なのか、妻は必死の演技で自分の罪を隠し、探偵を捜し出そうとする・・・。

これなんかは倒叙法に近くて、前二作とくらべるとふつうに見えちゃうところが、つねに新しい試みをする作家のつらい宿命かな(^^;)

いわゆるサスペンスもののイメージですね。
この「探偵を捜せ!」の設定は、いかにも女流作家が書きそうな話ですね


なるほど、そういう見方もあるな(^^)



で、第四作が「目撃者を捜せ!」(笑)

よく思いつくものですね〜(^o^)

これは貨物船で殺人があって、状況からして存在したはずの目撃者が名乗り出てこない、という話だ。
う〜ん、内容については話さないけど、これなんかも優美の言うような、女流作家ならではのストーリーだな


女流作家って、女性の醜さに対して容赦がないんですよね。おせっかいで、嫉妬深くて、身近にいたらちょっとかなわないような・・・それでいて、善人っていうキャラクターを書くのが得意だったのがクリスティだと思うんですけど・・・

なるほどねぇ〜(-_- )さすがに優美の意見は女性ならではだね
女性といえば第五作、「四人の女」という小説も被害者捜しの構成なんだけど、この作家も第六作あたりからごくふつうのミステリを書くようになったらしい

斬新な作品で売り出す新人作家も、たいていふつうの作家になっちゃうんですね

ただ、若書きの魅力・威力は否定できないよ。パット・マガーについて言えば、最初の3作でこのひとの名はミステリ史に残るよね。日本人って、有名人や功成り名を遂げた大家に弱いところがあるけれど、作家にしても音楽家にしても「若いころの方がよかった」という評価のされ方があってもいいんじゃないかな





(笑)Hoffmannさんが誰のことを想定しておっしゃっているのか、なんとなくわかりますよ

(^^ )お、わかる?

それはもう・・・(^^ )もうすぐ1年ですものね・・・



参考文献
パット・マガー「探偵を捜せ!」井上一夫訳 創元推理文庫
パット・マガー「被害者を捜せ!」中野圭二訳 創元推理文庫
パット・マガー「四人の女」吉野美恵子訳 創元推理文庫
パット・マガー「七人のおば」木村美根子訳 創元推理文庫
パット・マガー「目撃者を捜せ!」延原泰子訳 創元推理文庫