#62 官能愛と精神愛




ワーグナーの歌劇「タンホイザー」は、もう何度もレコード聴いたよね

ええ、巡礼の合唱は感動的ですよね〜

あらすじは―

タンホイザーはヴェーヌスベルクで官能の愛の生活を送っていたが、これに飽きてふたたびヴァルトブルクの城へ戻る。ところが神聖な愛を讃えるべき歌合戦の場で、領主の姪エリーザベトを前に、快楽の女神ヴェーヌスを讃える歌を歌ってしまい、教皇から赦しを得るためにローマへ巡礼に赴くこととなる。ところが赦しは得られず、絶望して舞い戻ってきたそのとき、彼を愛するエリーザベトの犠牲の死によって罪は許され、救済される。エリーザベトの亡骸の前で彼もまたこと切れる・・・

―というものだ


教皇が「自分の杖に緑の葉が生えぬように、お前の罪もまた許されない」と言った、その杖に,
緑の若芽が吹き出したのですよね・・・こうして話していても、感動してしまいます(-_- )




この歌劇の題材は、もともと伝説なんですよね

そう。タンホイザーというのは実在した中世ドイツのミンネゼンガー(恋愛詩人)だ。13世紀ごろのひとだな。じっさいにはあまり詩才のあるひとでもなかったらしい。ところが15世紀頃に伝説の主人公として扱われるようになって、ヴァルトブルクの歌合戦の伝説とともに、ワーグナーが採用したわけだね。ドイツ・ロマン派の文学者ティークやハイネも、タンホイザーをテーマに作品を書いている

ミンネゼンガーって、12世紀半ばから14世紀に、フランスのトルバドゥールの影響下に発生した、ドイツの騎士階級・貴族階級の吟遊詩人のことですよね。中世ドイツの世俗音楽の代表と言われていますね

troubadour―南仏語のtrobadorは一般には「吟遊詩人」と訳されるけど、正確には「作詞・作曲をするひと」だね。領主、騎士、聖職者は必ずしも「吟遊」はしないからね。
で、ミンネゼンガーが歌ったのは、主に愛―肉体を越えた霊的・理想的な愛、騎士の誓いと優雅な諦めの複合したものだ。とくに、当時の教会が聖母マリアへの崇拝を強調する傾向にあったことも影響して、女性を理想化し、遠くから女性を賛美するといった内容の歌が多い。ほかに、道徳や政治に関したもの、十字軍や英雄の武勲をたたえたものなども歌ったそうだよ

ヴェーヌスというのはヴィーナスのことですね

ヴェーヌスベルクっていうのは、キリスト教世界から追放されたヴィーナスの隠れ棲む山だな。タンホイザー伝説では、チューリンゲンのヘルゼルベルク山の地底だということになっている。そのまま訳せば「ヴィーナスの山」または「ヴィーナスの丘」だ

・・・えっ(・・;)

そう(笑)俗語として女性の恥部をさすことばだな。これは作曲された当時から通用していたから、ワーグナーは最初標題を「ヴェーヌスベルク」にしようと思っていたんだけど、楽譜の出版元から忠告されて「タンホイザー」に変更したんだよ

そうでしたか・・・ドイツ語なので気が付きませんでした(^o^;)さすがに露骨ですよね〜





dialogue#34に続く