#69 黒死病の仮面




以前、サバトのお話をしたときですけれども、ヨーロッパでペストが流行したときに、この疫病の原因としてユダヤ人が毒薬散布したとして告発されたというお話がありましたよね

うん。ヨーロッパ各地で暴動が起こり、多くの罪もないユダヤ人が虐殺されたそうだ。14世紀半ばの大流行は黒死病と呼ばれて有名だね。それまでも西欧には、ことあるごとに災厄の原因としてユダヤ人やハンセン病の患者などが告発されてきた歴史がある・・・ってそのとき話したよね


じっさいにはペスト菌って、ネズミによって媒介されるんですよね

ペスト菌をヒトに感染させるのは、正確には蚤だな。でも、ペストというとネズミを連想しちゃうね


吸血鬼のお話のときにも、歴史上の黒死病(ペスト)の流行と吸血鬼騒動の時期の不思議な一致を指摘しているものがあるということでしたね。つまり、吸血鬼はペストという流行病の擬人化ではないか、と・・・ヴェルナー・ヘルツォーク監督の映画「ノスフェラトゥ」(1978年)でも、吸血鬼はペストとともにブレーメンの町を襲っています



ネズミからヒトへの感染経路となっている蚤は、齧歯類(ネズミ)も宿主とするんだね。そしてペスト菌を保菌している蚤はヒトに移って、その咬傷によって健常者が感染するんだ。
ペスト菌を保菌しているネズミはアジア原産のアレチネズミというやつで、これから人家に棲息するクマネズミに感染、そしてヒトへと至るんだよ。

クマネズミは中世まではヨーロッパ内陸部には棲息してなかったといわれている。ところが、戦乱や十字軍といった社会現象、商業の発達や相次ぐ飢饉などによって、ヨーロッパ全土に拡散したらしい


14世紀といえば、ヨーロッパは12世紀頃からたびたび極度の飢饉に見舞われていますよね。多くの人々は体力的にはかなり弱っていたのでしょうね

なにしろ木の皮や泥、さらには人肉食の記録もあるくらいだからね。
まあ、ペストって疫病の発生ごとにそう呼ばれていたようなふしもあって、記録に「ペスト」とあるからといって、必ずしもペストが流行したものとは限らないんだ。でも、14世紀の黒死病はまずペストに間違いない


ヨーロッパの被害は相当甚大だったらしいですね

キプロス島はほとんど生存者はなく、フィレンツェの死亡率は60%、結局イタリア全土では全人口の半分が死亡したとされている。当時の報告は多少大げさらしいんだけどね。埋葬が追いつかなくなって、なにしろ身よりも召使いもみんな死んじゃうから、放置されたままということもめずらしくなかったそうだ。

まあ、研究者によって推定数は異なるけど、このときの死者数は全ヨーロッパで2千5百万人とも3千万人ともいわれている。じっさい、中世の文献に記されている郡部の地名で、14世紀以降消えてしまっているものがたくさんあるんだよ


・・・ペストで全滅してしまったのですね(・_・;;





dialogue#39に続く