#77 ストラディヴァリウス幻想




ヴァイオリンの名器といえばストラディヴァリウスが有名ですよね

ほかにグァルネリ、アマティ、ベルゴンツィ、グァダニーニなんていうのもあるよ

これ、ぜんぶひとの名前なんですよね

ヴァイオリンの産地、クレモナでヴァイオリンを製作して、クレモナの名工と呼ばれたひとたちだね。正確に言うと、アントニオ・ストラディヴァリが制作したヴァイオリンをストラディヴァリウスという。ちょっと気取って“Strad”(ストラッド)なんて呼ぶひともいるね

クレモナってイタリアですね?

クレモナはミラノの東南、電車で1時間くらいの地方都市だ。イタリアでもっとも高い鐘楼がある美しい街で、市立博物館やコムナーレ宮殿にはストラディヴァリウスやアマティ、グァルネリのヴァイオリンも展示されていて、街にはいまでもヴァイオリンの製造工房があるそうだよ。ストラディヴァリもひとりで作っていたわけじゃなくて、たしか3人の弦楽器工房だね、アマティとかグァルネリは5人だったかな

するとストラディヴァリ一門、というわけですね(^^ )

作ったのはヴァイオリンだけじゃなくて・・・ヴァイオリンが約600本、ヴィオラ約15本、チェロ約60本、コントラバス数本と言われているから・・・まあ、ほとんどヴァイオリンだな(^^*

その音色の美しさは、表面に塗られたオレンジ・レッドのニスによるところが大きいとも言われている。ところがその原料や調合法は不明で、多くの科学者が挑戦したけれど、いまだ解明されていないんだそうだ




18世紀半ば頃までのヴァイオリンがいわゆる“old”もので、とんでもない値段が付いている。まあ、ストラディヴァリウスの状態のいいものなら億単位だね

億ですか〜(・_・;

だから偽物もたくさんある。いまでは真正の鑑定書付きでない限り、いくらもっともらしいラベルが貼られていても、限りなく偽物の可能性が高い・・・というか、偽物に間違いない(笑)

鑑定に際しては、楽器のなかに貼られているラベルよりも、外見で判断するそうだ。音は奏き手によって違うからあてにならない(^o^;

よくプロの演奏家が使っていると話題になったりしますよね

なかにはかつての名奏者が使っていたものを、その子孫から貸与されているひともいるみたいだね。まあ、それぞれの楽器にふさわしい奏者の手にわたって、どんどん奏いてもらいたいものだね



今日はJohn Meade Falknerというひとの“The Lost Stradivarius”という小説を読んでいたんですよ

ああ、「失われたストラディヴァリウス」だね。ジョン・ミード・フォークナーは1858年生まれで1932年に没した・・・古文書学者で、専業作家ではなかったみたいだね。もう一冊、“The Nebuly Coat”という長編小説を持っているけど、作品数は少ないようだ

物語は、19世紀半ばのオックスフォード大学の学生寮、John Maltraversと友人のGaskellがヴァイオリン演奏を楽しんでいたのですが、Gaskellがイタリアから持ち帰った古い楽譜を演奏してみると・・・

・・・なにものかが部屋のなかで演奏を聴いている気配がするんだね

この現象はその曲を奏くたび繰り返されて、ついに亡霊らしきものが姿を現し、その亡霊が消えた壁の隠し戸棚にストラディヴァリウスが見つかるのですね

このストラディヴァリウスには“Porohyrius philosophus”の銘が入っている・・・すなわちPorphyrios、「哲学者ポルピュリオス」だね

名前しか知らなかったんですが、新プラトン主義の哲学者ですよね

うん。新プラトン主義(ネオプラトニズム)といえば代表的なのがプロティノスだね。プロティノスはエジプトに生れ、アレキサンドリアでアンモニオス・サッカスに10年にわたって師事したんひとだ。このアンモニオス・サッカスこそ新プラトン主義の開祖とされている。ところが、秘教的で、著作も残さなかったため、その教義は不明、それで弟子のプロティノスが新プラトン主義の実質的な代表者とされているわけだね。ポルピュリオスはこのプロティノスの弟子だったひとだよ。
ポルピュリオスといえば「ポルピュリオスの樹」が有名だね

「ポルピュリオスの樹」って、なんですか?

「ポルフィリオスの樹(arbor Porphyriana)」とは、ラメーというスコラ学者が、ポルピュリオスの著作『イーサゴゲー』に書かれた類・種・個体の相互関係を図示したものだ。

まず頂点に実体(substantia)という最高類がある。これは物体的(corporea)と非物体的(incorporea)の二種の種概念(下位概念)に種差によって分類される。さらに、物体的実体は、有生(animatum)と無生(inanimatum)に下位区分される。さらに、物体的有生的実体は、感覚的(sensitivum)と非感覚的(insensitivum)に、物体的有生的感覚的実体は、理性的(rationale)非理性的(irrationale)の二種の最下位の種概念(最低種)に分類される。そして最後に、この物体的有生的感覚的理性的実体という最低種概念に、ソクラテスやプラトンといった個物(個体)が包摂される・・・というものだよ


(・・;)?・・・あ、あの・・・ぜんぜん理解できないんですが、Hoffmannさんは・・・

じつは、あんまりわかってないの(^o^;

(o_ _)oドテ



まあ、ネオプラトニズムは神秘主義哲学として知られているよね。神秘主義とは、人間の知性の限界を自ら抜け出る(エクスタシス)ことによって超越し、神と一体になることをめざすものだ。プロティノスは現実に存在するものの背後にある原理(魂/プシュケーや知性/ヌース)に「一者」を加えて、その間に順位を定めた、つまり「知性」の上に第一原理を作っちゃったといっていいだろう。このあたりがプラトンやアリストテレスとの違いだな。この「一者」から叡智界・心魂界・物質界が流出したというのが、キリスト教に影響を与えたといわれる「流出説」だ

(^o^;よく分かったというわけではないんですけれど・・・「失われたストラディヴァリウス」では、主人公が婚約者の屋敷に行くと、その悪名高い先祖の肖像が、幽霊と瓜二つなのですね。結局、主人公は原因不明の死を遂げるのですが・・・

・・・その後―小説の末尾に友人Gaskelの手記があるだろう。そこからが、ネオプラトニズムが意味を持ってくるところだね。じつはこの小説は、ゴースト・ストーリーではないんだよ(-_-*)さっきの話は分からなくっても大丈夫♪

まだ、そこまで読んでいないんですよ(・・;

じゃあ、ここまでにしておこうか(笑)



参考文献
John Meade Falkner “The Lost Stradivarius” Tartarus Press
※ アメリカのDover Publications,incからも出ていたようです。こちらならたぶん1,000円もしないで買えます。