#80 恐怖の表情


gallery#76dialogue#44で「笑顔」について話したので、今回は「恐怖の表情」です。



Hoffmannさんは、モダン・ホラーと呼ばれる小説はほとんど読まれませんよね

うん、ゴースト・ストーリーも含めて、怪奇小説は古典の方が好きだね

それでは、「リング」なんてもちろん・・

読んでない・・・と言いたいところだけど、じつは読んでるんだな、これが(笑)

意外ですね、やっぱり映画化されて評判になりましたから・・・?

いや、評判になるとかえって読まなくなるね(^^;)映画にもなる前、まだあの小説が有名になる前に読んだんだよ。でも、正直なところつまらなかったな。その後ブームみたいになって、ちょっと驚いたくらいだ





原作そのものが評判になったというより、映画化でブレークしたんですね

いろいろと映像化されるのにふさわしい要素はあったよね。死者に見られる恐怖の表情なんかもそのひとつだな。でも、恐怖の表情を重要な謎としている映画なら40年も前に制作されていたんだよ

なんという映画ですか?

マイケル・パウエルの「血を吸うカメラ」(1960)だ。被害者のカメラ目線での絶叫、この視線の主は平凡なカメラマンなんだけど、幼児期のトラウマによって、女性を襲っては死に至らしめる殺人鬼だ。そしてその被害者の恐怖の表情をカメラで記録しているんだね

その被害者の女性が・・・

・・・死に際になにを見たものか、極度の恐怖の表情で硬直している・・・。
マイケル・パウエルはこの映画を制作したことによって、すっかり評判を落としてしまったそうだ。変質者の生態を描いた映画なんかを作ったというのでね(^^;


それでは知る人ぞ知る映画というわけですか?

いや、いまでは誰でも知っている古典といっていいけどね。でも、発表されたのは1960年だもの。ちなみに同じ年にはヒッチコックが「サイコ」を発表している。こちらがより知的に、あらゆる工夫を凝らした映像で、恐怖を盛り上げているのとは対象的だ

Hoffmannさんはやっぱり「サイコ」のほうがお好きですか?

そりゃあね(笑)でも、「サイコ」のおもしろさは恐怖を感じることそのものとは違うところにある。いっそ、もっと耽美的に、恐怖におぼれてしまいたいような気持ちもあるよね。

「血を吸うカメラ」は早すぎた映画であったために倒錯を描いたものとして非難されて、その後再評価された・・・それはそれでいいとしても、似たような映画(含サイコもの)が続々と作られたいまとなっては、もはや陳腐に感じられてしまうんだよね(^^;




Hoffmannさんは、ヴィジュアル的な面から、恐怖の表情というものは怖いと思いますか?

恐怖の対象を見せないで、恐怖に襲われている人間の表情を見せるということの効果には、見えないもの(たとえば幽霊)の醸し出すスリルや、もっと直截的な映像で訴えかけるスプラッターとも違うものがあるよね

観ているひとの想像力に訴えるものでしょうか・・・

う〜ん・・・だとすると、さっき、究極の恐怖の表情というのが映像化されるのにふさわしい要素だなんて言ったけど、やっぱり映像っていうのはかえって想像力の働く余地がなくなっちゃうよね。

文章で読んでいると想像もつかないようなものを想像して(笑)、読み手は自家中毒のように恐怖感にとらわれることがある・・・ところが、映像になっちゃうとナンダコンナモノカ、となっちゃう・・・美人だって、文章なら読み手がそれぞれ、想像もできないほどの究極の美人のイメージを思い浮かべるだろうけど、映画だとどんなに美人の女優さんでも、それは現実にある限界みたいなもので・・・

想像していたイメージは抽象的で、そこには限界がないわけですね

だから、女優さんの顔を見てがっかり・・・

わかりやすいたとえですね〜(^o^;



・・・そこで、恐怖の表情ならむしろこの小説から引用してみよう・・・ゴソゴソρ(・_・ )σ

少女はなにかひどく驚いている顔つきであった。そして、なにか目に見えないものにさわろうとするように、両手をグイとのばした。とたんに、驚きの表情が顔から消えて、こんどはものすごい恐怖の色がそれに代わった。顔の筋肉が恐ろしいくらいに引きつり、まるで魂が肉体の宿のなかで身をもがいて震えているように、からだじゅうが頭のてっぺんから足の先まで、ガタガタ震えだした。・・・

「なぜって、相手の顔をのぞいたとたんに、ゾーッと血が凍りついてしまったからさ。ぼくは人間の目から、あんなすごい激情の混乱した光が出るとは、想像したこともないね。ひょいと見たとき、ほとんどぼくは気を失いそうになったよ。あれはきみ、魂をなくした人間の目だよ。人間の殻だけが残っていて、中味は地獄がつまっている、というのはまさにあれだな。はげしい肉情、火のような憎念、あらゆる希望の喪失、歯をくいしばりながら夜にむかって絶叫するような恐怖感、お先まっくらな絶望。相手はぼくのことなんかきっと見えなかったにちがいないな。いや、あの男は、ぼくやきみがこうしてものを見るように、見ていやしなかったんだ。そのかわり、ぼくなら絶対に見たくないものを、かれは見ていたのだよ。・・・」

・・・まあ、この部分だけ読んだのではわかりにくいかもしれないけど(^^;



これは、どなたの小説ですか?(・・;)

引用は出典を明記するのが原則ではあるけれど・・・いずれ取りあげたい作家なので、しばらくは伏せておこう(笑)



※ 引用元が分かった方も、内緒にしておいてください(^^;