093 「プラーグの大学生」 "Der Student von Prag" (1926年 独) ヘンリック・ガレーン




 前回に引き続き「プラーグの大学生」"Der Student von Prag"(1926年 独)、本日はヘンリック・ガレーン監督によるコンラート・ファイト主演版です。こちらももちろんサイレント。



 脚本はヘンリック・ガレーンとハンス・ハインツ・エーヴェルス、前回取り上げた1913年版のリメイクですから、あらすじは省略しますよ。スカピネリ役がヴェルナー・クラウスであることは特筆しておきましょう。

 さて、第二作です。リメイクはたいがい出来が悪いもの・・・とよく言われますが、この頃はどうだったのでしょうか。結論から言えば、なかなか出来のいい作品となっていると思います。



 スカピネッリの扱いは手を加えられていて、伯爵令嬢マルギットとバルドウィンの出会いが決して偶然ではないことが示されている。鏡像(がないこと)に関しても、わかりやすく演出されています。ことに鏡の中から鏡像が歩み出てくるシーンは当時の観客に驚きと強烈な印象をもたらしたと思われ、この一人二役のトリックは、以後の怪奇映画でさんざん模倣されることとなりました。効果的な影の使い方もうまく、墓石や樹木などの映像で登場人物の内面を象徴させているのもうまい。




 強いて言うならば、コンラート・ファイトはいかにもサイレント時代の俳優らしく、アクションや表情はやや大げさ。とはいえ、少々トウの立ったパウル・ヴェゲナーよりも大学生らしく見えるし、その動きもダイナミックととらえれば、意図的なものではないかもしれませんが、「プラーグ随一の剣士」らしくもあります。



 同時に、パウル・ヴェゲナー主演の第一作も、やや荒削りながら、この物語が語るところの「元型」と見えて、解釈の広がりにおいては第二作をも上回る作品であることも認めたいと思います。単純な方が解釈の幅が広がるということは、たしかにありますね。


(Parsifal)



参考文献

「プラークの大学生」 H・H・エーヴェルス 前川道介訳 創元推理文庫


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