047 10inch盤を聴く その2




 前回は協奏曲を中心に取り上げましたが、興味深いものの取りこぼしがあったので、今回も協奏曲の盤を―

モーツアルト 協奏交響曲 K.364
ジョゼフ・フックス(ヴァイオリン)
リリアン・フックス(ヴィオラ)
ジンブラー・シンフォニエッタ(Zimbler-Sinfonietta)
独DG LPE17124


 独プレス。mono録音。ジャケット、レーベルに”In Amerikan durch DECCA Records, Inc., New York, aufgenommen”との表記あり。DGが(アメリカでの販売窓口として)DECCAと提携していた時代のものでしょう。そのためか、EQカーヴもDGの盤でときどきあるDECCAffrrです。

 ジョセフ・フックスJoseph Fuchsは1899年に、ニューヨークでウィーンから移民してきた両親の間に生まれたヴァイオリニスト。ヴィオラのリリアン・フックスLillian Fuchsは妹。ほかに、弟のハリー・フックスHarry Fuchsがチェリストです。コンサート・ヴァイオリニストとして活躍したほか、クリーヴランド管弦楽団のコンサートマスターも務め、またジュリアード音楽院で教鞭をとって教育者としても有名な人です。


ブルッフ ヴァイオリン協奏曲
エリカ・モリーニ(ヴァイオリン)
フェレンツ・フリッチャイ指揮 ベルリン放送交響楽団
独DG J73112 HI-FI


 レコード番号に”HI-FI”の文字が入っているだけあって、mono録音ながら音質は良好、EQカーヴはRIAAのようです。
 モリーニのヴァイオリンはやや薄味というか、淡白。フリッチャイはいつになく端正です。なぜかこの作品、私はあまり堂々と大家然としたものよりも、スッキリ清楚系の演奏が好きです。演出や効果造りの必要な音楽ではありませんからね。

 もうひとつの愛聴盤を挙げておくと、12inch盤ですが、石川静のヴァイオリン、ビエロフラーヴェク指揮、ブルノ国立フィルハーモニー管弦楽団による、捷SUPRAPHON 1110 2289(LP)。カップリングはシベリウスのヴァイオリン協奏曲です。石川静のレコードは、某中古shopの新入荷カタログにときどき掲載されていますが、すぐに売れてしまうようです。熱心なファンがいるのであれば、私もうれしいですね。


モーツアルト オーボエ協奏曲 K.314、ファゴット協奏曲 K.191
ピエール・ピエルロ(オーボエ)、ポール・オンニュ(ファゴット)
カール・リステンパルト指揮 ザール室内管弦楽団
仏Les Discophiles Français EX.25.069


 おそらく1957年頃のmono録音。
 オーボエもファゴットもいいですね。ドイツの団体ですが、フランス風の明快かつ典雅なリズムでほんのり明るいモーツアルト。
 EQカーヴはNABでしょうか。


モーツアルト クラリネット協奏曲 K.622
フランソワ・エティエンヌ(クラリネット)
モーリス・エウィッツ指揮 モーリス・エウィッツ室内管弦楽団

仏Les Discophiles Français 25.018

 1953年パリでの、アンドレ・シャルランによるmono録音。これは2回目録音。DF2だと、じつは1941年の1回目録音と、この1953年の2回目録音は見分けがつきません。いずれもK.477を併録。さらに12inch盤で2回目録音とK.518のクラリネット五重奏曲がカップリングされたものがあります。つまり同じ番号で3種類あるわけで、フランス人のことだから、曲が間違ってないんだからいいだろうと考えていたんじゃないでしょうか。私の持っている上記の盤は、K.622のみ収録された廉価盤。一曲なのでA面が第1楽章、B面が第2、第3楽章という余裕のカッティング。しかも比較的安価。
 演奏については有名なので、いまさら言うまでもありませんね。
 EQカーヴはやはりRIAAではなく、NABと思われます。



 レコード(LP)を再生した装置について書いておきます。
 今回はすべて古いmono盤なので、カートリッジは、ortofon CG 25 Dを基本に、一部SHELTERのmonoカートリッジを使いました。スピーカーはSiemensのCoaxial、いわゆる「鉄仮面」をチャンネルあたり2基の後面開放型Sachsen 202で聴いています。なお、私はmono盤でもスピーカーは2本で聴きます。部分的に、TANNOYのMonitor Gold10"入りCornettaでも聴いています。
 また、EQカーヴはRIAAで疑問を感じたものは適宜ほかのカーヴを試し、結果はなるべく記載しておきました。



(Hoffmann)