058 ルイ・ヴィエルヌの作品とdisc




 ルイ・ヴィクトル・ジュール・ヴィエルヌ Louis Victor Jules Vierne (1870.10.8.-1937.6.2.)フランスのオルガニスト・作曲家・音楽教師です。

 先天性の白内障のため生まれつき盲目に近く、6歳で眼の手術を受けたのですが、普通の状態で勉強を続けるに充分なほどには視力が恢復しませんでした。それでも7歳になるまでは、日常生活でに支障をきたさないようになりました。早熟な楽才を発揮していて、2歳の時に初めてピアノを聴き、シューベルトの子守唄を演奏してもらったところ、聴いたばかりの子守唄を、即座にそらで弾いてみせたとか。

 1880年からパリでピアノを学び、1887年からはオルガンの指導を受け、1889年にセザール・フランクにフーガを師事しました。フランクは、既に1884年に盲学校のピアノの試験でヴィエルヌ少年の才能を見抜いており、パリ音楽院で学習するようにと激励したので、やがてヴィエルヌは音楽院の聴講生としてフランクのオルガン科を履修。正式に入学したのは1890年からでしたが、間もなくフランクが急死したため、1894年に修了するまでシャルル=マリー・ヴィドールを指導教授に仰いでいます。ヴィドールは、1892年にヴィエルヌをパリのサン・シュルピス教会の演奏家代理に指名しており、1894年にヴィエルヌがオルガン演奏と即興演奏で首席に選ばれると、オルガン科の講義の助手にヴィエルヌを迎えます。

 1899年に最初のオルガン交響曲(作品14)を作曲して、1900年に、パリ・ノートルダム寺院のパイプオルガン奏者の指名をめぐって選考会が開かれると、他の50名の志願者を下してその地位を手に入れて、以後、歿年まで首席オルガニストの職務にありました。

 ヴィエルヌの私生活において、もっとも不幸だったのは、二人の息子に先立たれたこと。1913年にアンドレが10歳で結核で命を落としており、1917年にはジャックが戦死。さらに1918年には、ヴィエルヌの作曲作業を手伝ってくれていた弟ルネも戦死。戦死した息子の思い出に捧げるために作曲したのがピアノ五重奏曲です。

「あらゆる種類の苦しみを体験した者は、同じような苦悩を抱えた人を癒す術を心得ているはずであって、それこそが芸術家の役割なのだ」

 ―これはヴィエルヌ自身のことばです。

 亡くなったのは1937年6月2日。ノートルダム寺院で通算1750回目の演奏会の最中、即興演奏中に意識を失い、椅子から崩れ落ちたということです。67歳でした。苦難の多い人生でしたが、学生たちからは、親切で忍耐強く、励ましてくれる先生として慕われていたそうです。

 作風は、ロマン派音楽らしい豊かな和声ながら、決して「過剰」ということのない、穏健で節度ある音楽です。


Louis Vierne

 私が所有しているヴィエルヌのdiscからいくつか―

Frank:Quintettes pour Piano et cordes
Pierne:Quintettes pour Piano et cordes op.41
Vierne:Quintettes pour Piano et cordes op.42
Jean Hubeau, Quatuor Viotti
1983.10.
Erato STU715502(2LP)


 これはフランク、ピアルネのピアノ五重奏曲とのカップリングでLP2枚組。その後CDでも出ていて、ピアノ五重奏曲とオリヴィエ・シャリエのヴァイオリンによるヴァイオリン・ソナタと組み合わされています。いい組み合わせです。Vierne入門にも最適の盤じゃないでしょうか。

Vierne:Quintettes pour Piano et cordes op.42
Vierne:Sonate pour violon et piano op.23
Jean Hubeau, Olivier Charlier, Quatuor Viotti
1983.10., 1990.
Erato 2292-45524-2(CD)


 ヴァイオリン・ソナタが聴けるのはうれしいですね。

 CDでは仏timpaniから注目すべき作品集がいくつか出ています。室内楽作品なら―

”Louis Vierne la musique de chambre”
Sonate pour violon et piano, Sonate pour violoncelle et piano, Quintette pour piano et cordes,
Quartuor a cordes, Soirs etrangers pour violoncelle et piano,
Deux Pieces pour alto et piano, Largo et canzonetta pour hautbois et piano, Phapsodie pour harpe
Quatuor Phillipsほか
1990,1991,1993.
timpani 2C2098(2CD)


 2枚組CDで表題が ”Louis Vierne la musique de chambre”。収録曲は上記のとおり、主要な作品はこれで聴けます。

 ここで仏timpaniから出たVierne作品のCDで私が持っているものを挙げておくと―

Vierne:Symphonie en la mineur
Vierne:Poeme pour piano et orchestre
Francois Kerdoncuff (piano)
Pierre Bartholomee, Orchestre Philharmonique de Liege
1996
timpani 1C1127(CD)


 交響曲イ短調はフォーレに献呈された作品です。

”Louis Vierne l'oeuvre pour piano”
12 Preludes op.36, Silhouettes d'enfants op.43, Le Glas op39noII,
3 Nocturnes op.35, Suite bourguignonne op.17, Solitude op44
Olivier Gardon (piano)
1994
timpani 2C2023(2CD)


 これはCD2枚組のピアノ作品集。

Vierne:Melodies
Spleens et detresses, Quatre Poemes grecs, Cinq Poemes de Baudelaire
Mireille Delunsch (soprano), Christine Icart (harpe)
Francois Kerdoncuff (piano)
1997.
timpani 1C1145(CD)

Vierne:Melodies (vol.2)
Poemes de l'amour, Les Roses Blanches de la Line, Stances d'amour et Reve, L'heure du Berger
Mireille Delunsch (soprano)
Francois Kerdoncuff (piano)
2004.
timpani 1C1091(CD)


 歌曲集はvol.2の方が番号が若いのは、1枚目が2008年頃の再発盤だから。

 timpani以外から出たCDでは―

Vierne:Quintette op.42
Vierne:Quatuor op.12
Levente Kende (piano), Spiegel String Quartet
2007.
MDG MDG644 1505-2(CD)


 ピアノ五重奏曲と弦楽四重奏曲のカップリング、これもいい組み合わせです。

Lalo:Sonate pour violoncelle et piano
Magnard:Sonate pour violoncelle et piano op.20
Vierne:Sonate en si mineur pour violoncelle et piano op.27
Alain Meunier (violoncelle), Jean Hubeau (piano)
1986,1987
harmoniamundi France LDC278 846(CD)


 ラロ、マニャールのチェロソナタとのカップリング。

 後はオルガン作品。LPで2セットをわりあい古くから持っていて、ときどき聴いていました。

Vierne:Les Six Symphonies poue Orgue
Pierre Cochereau (aux grandes orgues de Notre-Dame de Paris)
1975.12., 1976.5.
fy FY028/032(5LP)


 ピエール・コシュローは1924年生まれのフランスのオルガニスト、作曲家。1955年から、このレコードでも演奏しているパリのノートルダム聖堂のオルガニストに就任。ちなみにヘルベルト・フォン・カラヤン晩年の録音、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」では、コシュローのオルガン演奏が(もちろん別収録で)重ねられています。なお、コシュローは1984年に死去。


Pierre Cochereau

Vierne:24 pieces de fantasie
Gaston Litaize (aux grandes orgues de L'eglise Saint-Francois-Xavier)
1972頃
Pathe Marconi(EMI) 2C 165-12117/8(2LP)


 「24の幻想的小品集」の組曲第3番op.54の終曲が有名な「ウェストミンスターの鐘」です。
 ガストン・リテーズは、1909年11日生まれのオルガン奏者、作曲家。生後まもなく失明して、盲学校を経てパリ音楽院へ進学し、ルイ・ヴィエルヌの個人教授も受けたという人。作曲家としては1938年にローマ大賞第2位。1946年にはパリの聖フランソワ=ザビエル修道院のオルガニストの地位についています。このレコードで使用されているオルガンですね。1991年に死去。


Gaston Litaize

 CDで入手したのはひと組だけ―

”Vierne Complete organ Works”
Ben van Oosten (organ)
1996-2000?
MDG MDG316 1580-2(9CD)


 ベン・ヴァン・オーステンは、1955年ハーグ生まれのオルガン奏者。録音年は明示されていませんが、おそらく1996年から2000年。


Ben van Oosten


(Hoffmann)