064 10inch盤を聴く その4




 10inch盤、管弦楽曲でもう1回―

スメタナ 「我が祖国」から「モルダウ」、「ボヘミアの森と草原から」
ジョージ・セル指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック
英Culumbia 33C1019


 英プレス盤。mono録音。「モルダウ」は1951年1月7-8日、「ボヘミアの森と草原から」は1951年1月18日、いずれもニューヨーク、コロンビア30番街スタジオでのセッション録音。

 セルによる「モルダウ」はクリーヴランド管弦楽団とのstereo録音も残されていますが、私はこちらの方に愛着を感じます。セルのニューヨーク・フィルハーモニックとの録音はほかにワーグナー、ベートーヴェンなどがありますが、どれもいいですね。
 EQカーヴはColumbia。


ベートーヴェン 「コリオラン」序曲、「エグモント」序曲
エドゥアルト・ヴァン・ベイヌム指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
DECCA LW5015



ブラームス 大学祝典序曲、悲劇的序曲
エドゥアルト・ヴァン・ベイヌム指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
DECCA LW5041


 私の好きなエドゥアルト・ヴァン・ベイヌムのベートーヴェンとブラームスです。じつに正攻法でまっとうな、高度な次元での完成度を誇る演奏です。ベートーヴェンもいいんですが、やはりコンセルトヘボウの響きが聴けるブラームスにより魅力を感じます。「大学祝典序曲」なんて、作品としてはブラームスの大傑作というわけにはいかないんですが、どうもそれだけにオーケストラの響きの魅力が重視されるようなところがあります。たとえばバルビローリのEMI録音などは、いかにもウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の魅力が全開といった演奏になっていますが、このベイヌム、コンセルトヘボウ盤もそれに劣らない演奏だと思います。
 EQカーヴはDECCAffrr。


ワーグナー 歌劇「タンホイザー」序曲
メンデルスゾーン 附随音楽「真夏の夜の夢」からスケルツォ
グリーグ 2つの悲しき旋律
ウィレム・メンゲルベルク指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
Columbia 33HS1003


 蘭プレス盤。

 そのベイヌムの前のコンセルトヘボウの首席指揮者、メンゲルベルクの、これはTelefunken録音ではなくてColumbia録音です。この収録曲は東芝のGR盤でも出ていました。一時期、メンゲルベルクのような個性派、恣意的かと思えるほど濃厚な表情付けを施す指揮者と、正統派ベイヌムが同じオーケストラを振っていたのは面白いですね。ただ、メンゲルベルクの指揮というのも中毒性があるものか、聴き始めるとしばらくメンゲルベルクばかり聴きたくなってしまうようなところがあります。また、誰のようにというわけではありませんが、オーケストラの機能性ばかりを重視しているわけでもなく、ドンガラドンガラと激しい音楽にばかり腐心していた指揮者とは違って、ここで聴けるグリーグの作品のような叙情味のある作品に、濃厚な表情を付けて甘美な演奏を展開するところが、メンゲルベルクらしい。この盤には収録されていませんが、マーラーの交響曲第5番のアダージェットなどにも同様の魅力があります。
 EQカーヴはColumbia。


バターワース 狂詩曲「シュロップシャーの若者」
バックス 交響詩「ファンドの園」
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団
PYE CCT31000


 何年頃の録音か調べていないんですが、mono時代にバターワースにバックスというのが、うれしい組み合わせです。
 バターワースの作品は、もちろんA・E・ハウスマンの詩集「シュロップシャーの若者」からとられた題名。バターワースはこの詩によってふたつの連作歌曲を作曲していますが、主要主題はその歌曲のなかからとられています。静かな弦楽が印象的な美しい作品ですが、内に秘めた熱情を感じさせます。
 バックスの交響詩は北欧伝説に基づいたケルトの伝説から着想されたもので、英雄「ベール族のアキレス」が大洋の支配者マナナンの娘ファンド姫に誘惑されてしまうという話。「ファンドの園」というのは海のことで、小さな船が魔法の島にうちあげられると、そこでは人間のものではない饗宴が繰り広げられており、乗組員たちはその踊りのなかに巻き込まれてしまう。やがて高波が押し寄せてきて、島全体がのみ込まれてしまう・・・。
 EQカーヴはRIAAで問題ありません。


リムスキー=コルサコフ スペイン奇想曲
ドビュッシー 牧神の午後への前奏曲
シャブリエ 狂詩曲「スペイン(エスパナ)」
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団
His Master's Voice BLP1058


 通俗名曲も10inch盤にはむしろふさわしい?(笑)スペイン奇想曲とシャブリエの間になぜ「牧神の午後への前奏曲」? と思うかもしれませんが、私も収録曲の時間合わせかなと思いました。でもね、この3曲を続けて聴くと、なかなか収まりがいいんですよ。ギリシアへの憧憬も案外とエキゾチックなもので、きらびやかなまでの陽光輝く時間の後に、気怠いときが訪れて、ちょっと午睡(シエスタ)したいような気分が味わえます(笑)
 EQカーヴはNABが合いました。


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 レコード(LP)を再生した装置について書いておきます。
 今回はすべて古いmono盤なので、カートリッジは、ortofon CG 25 Dを基本に、溝を目視で確認して、一部SHELTERのmonoカートリッジを使いました。スピーカーはSiemensのCoaxial、いわゆる「鉄仮面」をチャンネルあたり2基の後面開放型Sachsen 202。ただしバターワースとバックスはTANNOYのMonitor Gold10"入りCornettaで聴きました。なお、私はmono盤でもスピーカーは2本で聴きます。
 また、EQカーヴはRIAAで疑問を感じたものは適宜ほかのカーヴを試し、結果はなるべく記載しておきました。



(Hoffmann)