066 モーツアルト レクイエム CD篇




 録音年順ですよ。

Bruno Walter, Vienna Philharmonic Orchestra, Vienna State Opera Chorus
Elisabeth Schumann, Kerstin Thorborg, Anton Dermota, Alexander Kipnis
Theatre des Champ-Elysees, 29,VI.1937
東芝 TOCE-7761~74(14CD)


 「ブルーノ・ワルターの芸術 I」14CDセットから。LPで持っているものと同じ。


Bruno Kittel, Berlin Philharmonic Orchestra, Bruno Kittel Choir
Tilla Briem, G.Freimuth, Walter Ludwig, F.Drissen
Bruno Kittel, organ
1941
PHILIPS SGR-6011~3(3CD)


 新星堂の企画・販売。1942年のバッハ「マタイ受難曲」とカップリングの3枚組CD。

 ブルーノ・キッテルが自らの合唱団を率いて、モーツァルト没後150年となる1941年に録音。録音された時代を考慮すれば、感傷を廃した、驚くほどモダンな感覚の演奏。さらにこの録音を特異なものにしているのは、ナチス政権下の録音であるため、歌詞の一部(ユダヤ由来の語)が変更されていること。はじめて聴いたときには、聴き慣れない発音の箇所に、あれ、これラテン語・・・だよね? なんて首かしげてしまったぞよ(笑)それでなくてもドイツ風の発音、つまりドイツ語訛りで、やや違和感あり。合唱指揮者とあって、オーケストラに対するコントロールはいまひとつ不徹底。とはいえ、1941年にしてこのモダンな感覚は見事。


Bruno Kittel


Bruno Walter, New York Philharmonic Orchestra, Westminster Choir
Irmgard Seefried, Jennie Tourel, Leopold Simoneau, Wiliam Warfield
Carnegie Hall, 11.3.1956 live
KING INTERNATINAL Epitagraph EPITA030/2(3CD)


 「ワルター不滅のライヴ」、6CDセットから。このlive録音の前後、3月10日と12日にセッション録音が行われている。

 同じワルターの1956年録音でも、次のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とはやはり違ったもの。やはりアメリカ時代のワルター。堂に入った演奏ながら、とくに合唱が荒い。


Bruno Walter, Wiener Philharmoniker, konzertvereinigung Wiener Staatsopernchor
Lisa della Casa, Ira Malaniuk, Anton Dermota, Cesare Siepi
26.Juli 1956 live
ORFEO C430 961 B(CD)


 Sinphonie g-moll KV183(25番)を併録。

 CBS Sonyから出たLPは1956年6月26日、こちらは同年7月23日となっている。これはモーツアルト生誕200年の、ザルツブルク旧祝祭劇場でのlive録音。これを聴くと、シューリヒトなどは結構モダンな感覚だと気が付く。最近の古楽器演奏とは別な次元で、緩急強弱のコントラストは最大限とばかりの古風なモーツァルト。それが板に付いているのはワルターなればこそであり、また時代でもあるということ。従って貴重な記録(record)。ソロ歌手もいかにも役者が揃ったという印象。


Bruno Walter, Chicago Symphony Orchestra and Chorus
Maria Stader, Maureen Forrester, David Lloyd, Otto Edelmann
Orchestra Hall, 13.3.1958 live
KING INTERNATINAL KKC-4119/24(6CD)


 3CDセットの「宗教曲集」から。Forresterが聴けるのがうれしい。

 シカゴ交響楽団ということで、情感よりも機能性重視の演奏かと先入観を持ってしまったが、意外と自然体で落ち着いた演奏。ダイナミクスの振幅が大きく、ワルターとしてもロマン的。合唱が時に絶叫気味で情感を損なう。録音は1956年のニューヨーク・フィルハーモニックとのliveよりも瑕が多い。


Carl Schuricht, Wiener phlharmoniker, Wiener Singakademie
Maria Stader, Marga Hoeffgen, Nicola Gedda, Otto Wiener
19.June 1962
archiphon ARC-4.1(CD)


 シューリヒト1962年6月19日のlive録音、古くはDisques Refrainからも出ていたが、音質は別もののように良質なarchiphon盤。交響曲などでは性急ともとれるテンポのシューリヒトが、ここではやや速め程度でしみじみ開始、冒頭は合唱もソフトに、やや流し気味・・・と思いきや、ソロ歌手のハイテンションぶりに驚かされる。とくに女声。マイクが近いのか? その後、速くなりそうなところはむしろ抑えめにじっくり進めて、要所要所のアクセントは強めなのが終始軟調の合唱とややかみ合わないような気がするものの、不思議なコントラストを形成していて、ユニーク。総合的にはすぐれた演奏。


若杉弘指揮 読売日本交響楽団、 モーツアルト祭混声合唱団
加藤綾子、木村宏子、金谷良三、大橋国一
司式司祭 東京カテドラル聖マリア大聖堂主任司祭 ルカ荒井金藏神父
助祭 イグナチオ関戸順一神父
グレゴリオ聖歌 聖アントニオ神学院聖歌隊
指揮 ジェルマノ・ヴォルカン神父
オルガン 坪川裕子
東京カテドラル聖マリア大聖堂、1965年12月4日
キングレコード NKCD6568(CD)


 LPで持っているものと同じ。タワーレコードの企画・販売。


Sergiu Celibidache, Orchestre National de l'ORTF, Choerus de l'ORTF
Arleen Auger, Gurli Plesner, Adalbert Kraus, Roge Soyer
Champ-Elysees, 22.2.1974 live
Altus ALT441(14CD)


 チェリビダッケがフランス国立放送管弦楽団を振った、INAのlive録音集成のセットから。

 終始軟調の合唱団。チェリビダッケとあって、濁るようなことはないが、アタックが柔らかいので、穏やかで優しいレクイエムになっている。それはそれでいいとしても、終始ふわふわでやや単調に聴こえる。


Riccard Muti, Berliner Philharmoniker, Stockholmer Kammerchor, Schwedischer Rundfunkchor
Patrizia Pace, Waltraud Meier, Frank Lopardo, James Morris
14-15.2.1987
EMI CDC 7 49640 2(CD)


 LPで持っているものと同じ。


Leonard Bernstein, Chor und Symphonie-Orchester des Bayerischen Rundfunks
Marie McLaughlin, Maria Ewing, Jerry Hadley, Cornelius Hauptmann
Diesen(Ammersee),Klosterpfarrkirche, 3-6.7.1988
DG 427 353-2(CD), ユニバーサル UCBG-1067(DVD)


 LPで持っているものと同じ。映像付きもまたよし。

  


Jordi Savall, Le Concert des Nations, La Capella Real de Catalunya
Montserrat Figueras, Vlaudia Schubert, Gerd Tuerk, Stephan Schreckenberger
8.1991
ASTREE E8759(CD)


 教会録音。ジュスマイヤー版。"Maurerische Trauermusik k.477"を冒頭に併録。

 基本的に速めのテンポながら、速すぎず、厳しすぎず、しかし小回りが利いて自主的な表現意欲を感じさせるオーケストラの音色がたいへん美しい。合唱も少人数で上手い。陰影感・繊細感では随一。オリジナル楽器であることをことさらに誇示しないからこそ、オリジナル楽器演奏としては筆頭格の演奏ではないか。冒頭の「フリーメイソンのための葬送音楽」もすばらしい。


Gary Bertini, Koelner Rundfunk-Sinfonie-Orchester, Koelner Rundfunkchor
Krisztina Laki, Doris Soffel, Robert Swensen, Thomas Quasthoff
18.5.1991
CAPRICCIO 71067(Hybrid SACD)


 マーラーの交響曲などでは緊張感が最後まで持続する指揮者なので、全篇に渡って辛口の厳しい演奏が展開するのかと思いきや、辛口というほどではなし。ただし響きは引き締まっており、曖昧さはない。


Sergiu Celibidache, MuenchnerPhilharmoniker、Philharmonischer Chor Muenchen
Caroline Petrig, Christel Borchers, Peter Starake, Mathias Hoelle
Gasteig, 12,13,15&17.II.1995 live
EMI 50999 0 85617 2 5(11CD)


 チェリビダッケとミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団のセット、"Sacred music and opera"から。

 さすがに1974年のORTFとの演奏よりも、チェリビダッケの意思が徹底しているという印象。相変わらずテンポは遅いながらも、こちらの方が多少メリハリがはっきりしていて聴き応えがある。とはいえ、厳しさとかドラマティックな要素ではなくて、穏やかさと美しさで聴かせる演奏。


Philippe Herreweghe, Orchestre des Champ Elysees, La Chapelle Royale, Collegium Vocale
Sibylla Rubens, Annette Markert, Ian Bostridge, Hanno Mueller-Brachmann
9 et 10 October 1996
HMF HMC901620(CD)


 オリジナル楽器のオーケストラ、合唱団ともに意外とaggressiveで充実した演奏、ジュスマイヤー版で十分じゃないか、と思える。


Sir Charles Mackerras, Scottush Chamber Orchestra and Chorus
Susan Gritton, Catherine Wyn-Rogers, Timothy Robinson, Peter Rose
14-16.Dec.2002
LINN CKD211(Hybrid SACD)


 ロバート・レヴィンRobert Levin版。"Lacrimosa"の後に"Amen"フーガが続くほか、細部にかなりの加筆がある。





Enoch zu Guttenberg, Orchester der KlangVerwaltung, Chorgemeinschaft Neubeuern
Anna Korondi, Gerhild Romberger, Joerg Duermueller, Jochen Kupfer
October 2005
FARAO S108048(Hybrid SACD)


 これもまたaggressiveな演奏。で、ありながらアーノンクールのような作為を感じさせないところが好ましい。頭で考えていると感じさせないのは迷いがなくて、その音楽が内面から湧き出ているから。オーケストラも合唱団も優秀。我が家にあるCD(SACD)では、サヴァール盤とともに並び立つ存在。グッテンベルクは2018年に亡くなっている。一度生で聴いてみたかった。残念。


Jean-Claude Malgoire, La Grande Ecurie et la Chambre du Roy, Kantorei Saarlouis
Hjordis Thebault, Gemma Coma-Alabert, Simon Edwards, Alain Buet
13 novembre 2005 live
K617(Telerama) K617180(CD)


 「リオ・デ・ジャネイロ版」。リオデジャネイロの大聖堂の書庫で発見された楽譜による演奏。ジギスムント・フォン・ノイコムSigiamund Neukommにより1819年にリオデジャネイロで作曲され、「リベラ・メ」が最後に補筆されている。






(おまけ)

 以前のメモを見ていたら、いまは手放してしまったレコードやCDに関するものがあったので、ここに記録しておきます。

 ホグウッド盤。アーメン・フーガのモーンダー版なのでほかのdiscと同列には比較しにくいが、録音はやや彫りが浅いものの、まずまず良好。ホグウッドはヘンデルだとひなびた響きとなるのに、モーツァルトだと意外と刺激的。

 ジュリーニ1989年の録音。オーケストラは新旧ともにフィルハーモニア管弦楽団。旧盤のような過剰な「ふくらみ」は一歩後退しているものの、やはり「ゆったり」系。合唱など、やや歌いにくそう? どことなくモノトーンで、響きが痩せて聴こえるのはおそらくジュリーニ晩年の衰えか(DGG録音後期でも聴かれる傾向)。

 ガーディナー盤。古楽器演奏であることをことさらに主張しすぎているようで、録音が1986年であることを考慮に入れても、もはや時代に取り残されつつあるのでは?

 コープマン盤。ガーディナー盤と比較するとよほど自然体ながら、やや日常的すぎて、もう少し厳しさも欲しい。

 カラヤン、ベルリン・フィルの1970年代の録音。これもまたDGGらしい低音のない、平面的で薄っぺらな録音。汚く濁った音響の垂れ流し。レガートの多用でフレーズの始まりも終わりも曖昧。滑舌が悪くて「アウアウ、ァワワ、ゥアゥアアァ・・・」と、なにを言っているのかわからないようなもの。こんなのでも「美しい」と言われるのはカラヤンだけでは?(笑)


(Hoffmann)