083 ヘンデルのオラトリオ その1 「メサイア」




 今回は所有している「メサイア」のdisc、録音年順です―

レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック
ウェストミンスター合唱団
アデーレ・アディソン(ソプラノ)
ラッセル・オバーリン(カウンター・テナー)
デイヴィッド・ロイド(テノール)
ウィリアム・ウォーフィールド(バリトン)
1956.
米Columbia M2S603(2LP)


 1956年の12月27、28、30日にカーネギーホールにてコンサートが行われた後、大晦日の一日だけでセッション録音されたものらしい。バーンスタイン38歳。本来「誕生」「受難」「復活」の3部となる構成を「降誕(クリスマス)」「復活(イースター)」の2部に改め、曲順を入れ替え、カットを施している。壮大で時に雄渾なオーケストラと合唱団。楽曲ごとのコントラスト。


サー・トマス・ビーチャム指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
ロイヤル・フィルハーモニー合唱団(合唱指揮:ジョン・マッカーシー)
ジェニファー・ヴィヴィアン(ソプラノ)
モニカ・シンクレアー(メゾ・ソプラノ)
ジョン・ヴィッカーズ(テノール)
ジョルジョ・トゥッツイ(バス)
1959.
英RCA SER 4501/2/3/4(4LP)、日RCA RGC-1058~60(3LP)


 英RCA盤は〈SORIA SERIES〉、日RCA盤は〈RCA GRAND PRIX ”1000” CLASSICAL〉シリーズ。

 以前にも取り上げた、サー・ユージン・グーセンス編曲版。古楽の様式がどうとかこうとか言う人には勧めないが、そうでない人は一度聴いてみてはいかがか。編曲自体は、少なくともストコフスキーのバッハ編曲ものよりはきちんとしている。


オットー・クレンペラー指揮 フィルハーモニア管弦楽団
フィルハーモニア合唱団 ヴィルヘルム・ピッツ(合唱指揮)
エリーザベト・シュヴァルツコップ(ソプラノ)
グレース・ホフマン(アルト)
ニコライ・ゲッダ(テノール)
ジェローム・ハインズ(バス)
1964.
仏EMI 2C167-00037-9 (3LP)


 遅いテンポとずっしりとした重量感はクレンペラーならでは。スケールが大きいわりにドラマティックというよりは叙事詩的。極端な言い方をすればロマン主義的ではなくて即物的なので、あまり古くさいとは感じさせない。人数が多いわりに合唱の精度が高いのは合唱指揮のヴィルヘルム・ピッツによる訓練(リハーサル)のたまものか。いまでも価値を失わないレコード。


カール・リヒター指揮 ミュンヘン・バッハ管弦楽団 ミュンヘン・バッハ合唱団
グンドゥラ・ヤノヴィッツ(ソプラノ)
マルガ・ヘフゲン(アルト)
エルンスト・ヘフリガー(テノール)
フランツ・クラス(バス)
モーリス・アンドレ(トランペット)
ヘドヴィヒ・ビルグラム(チェンバロ)
エルマー・シュローター(オルガン)
ミュンヘン、ヘルクレスザール、1964.6.12-18.
ポリドール MG9716/8 (3LP)


 ドイツ語版。

 リヒター盤ならこちらを採りたい。


カール・リヒター指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
ジョン・オールディス合唱団
ヘレン・ドナート(ソプラノ)
アンナ・レイノルズ(アルト)
スチュアート・バロウズ(テノール)
ドナルド・マッキンタイアー(バス)
ロンドン、ウェンブレイ、ブレンド・タウンホール、1972.11.7-15. 1973.6.1-2.
ポリドール MG8657/9 (3LP)


 英語版。リヒターの再録音。

 英語版で録音しておきたかったのだろう。


サー・チャールズ・マッケラス指揮 イギリス室内管弦楽団 アンブロジアン・シンガーズ
エリザベス・ハーウッド(ソプラノ)
ジャネット・ベイカー(アルト)
ポール・エスウッド(カウンター・テナー)
ロバート・ティアー(テノール)
レイモンド・ヘンリックス(バス)
ロンドン、キングズウェイホール、1966.6.29、30. 7.13,15,26.
仏Pathe marconi 1006353 (3LP)


 演奏もいいが録音がまた抜群に良い。このあとの2回の録音は私の好きなモーツアルト編曲版だが、マッケラス盤ではこれを取り出すことが多い。


サー・チャールズ・マッケラス指揮 オーストリア放送交響楽団 同合唱団
エディット・マティス(ソプラノ)
ビルギット・フィンニレ(コントラルト)
ペーター・シュライアー(テノール)
テオ・アダム(バス・バリトン)
ウィーン、ムジークフェラインザール、1974.1.31-2.4.
Archive 2710 016 (3LP)

 モーツァルト編曲版 K.572。

 モーツアルト編曲版をはじめて聴いたレコード。これもお気に入りの一組。


サー・チャールズ・マッケラス指揮 ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団
ハダースフィールド合唱協会
フェリシティ・ロット(ソプラノ)
フェリシティ・パルマー(アルト)
フィリップ・ラングリッジ(テノール)
ロバート・ロイド(バス)
ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール、1988.1-5.
RPO Recording RPD001R (2LP)


 DMM盤。

 これもモーツァルト編曲版 K.572。
 上記1974年録音は安定の大歌手、こちらは清新さで魅力的。とくにフェリシティ・ロットがいい。


クリストファー・ホグウッド指揮 アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック(エンシェント室内管弦楽団)
オックスフォード・クライスト・チャーチ聖歌隊 サイモン・プレストン(合唱指揮)
ジュディス・ネルソン(ソプラノ)
エマ・カークビー(ソプラノ)
キャロライン・ワトキンソン(コントラルト)
ポール・エリオット(テノール)
デイヴィッド・トーマス(バス)
ロンドン、セント・ジュード・オン・ザ・ヒル、1979.9.
L'OISEAU-LYRE D189D3 (3LP)


 蘭プレス盤。

 ホグウッドはモーツアルトの交響曲全集のレコードでかなり話題になったが、やや古楽器演奏であることを強調したような印象があり、それは同時期のガーディナーとも同じ。それからあまり時期は経過していないが、この「メサイア」あたりは肩の力が抜けてきたのかな、と思う。意外とひなびた響き。


サー・ジョン・エリオット・ガーディナー指揮 イングリッシュ・バロック・ソロイスツ
モンテヴェルディ合唱団
マーガレット・マーシャル(ソプラノ)
キャサリン・ロビン(アルト)
チャールズ・ブレット(カウンター・テノール)
アンソニー・ロルフ・ジョンソン(テノール)
ロバート・ヘイル(バス)
ソウル・カーク(ボーイ・ソプラノ)
ロンドン、セント・ジョーンズ・チャーチ、1982.11.11-20.
PHILIPS 6769 107 (3LP)


 ヘンデルの存命中にロンドンで上演された時の独自の版が使用されており、ボーイ・ソプラノを配するなど、発売当時かなり評判になったと記憶している。オリジナル楽器演奏が普及してゆく過程で、この録音が及ぼした影響は大きいのではないか。逆に言うと、未だ「古楽器演奏ですよー」ということさらな主張が感じ取れる。気負いがあって、自然体とは言い難い。響きは軽量級ながら、ガーディナーの思い入れ(主張)が重く感じられる。


トン・コープマン指揮 アムステルダム・バロック管弦楽団
ザ・シックスティーン(合唱指揮:ハリー・クリストファーズ)
マリヤンヌ・クヴェックジルバー(ソプラノ)
ジェームズ・ボウマン(カウンターテノール)
ポール・エリオット(テノール)
グレゴリー・ラインハルト(バス)
リミニ、1983.8.、ユトレヒト、1983.9.
ERATO NUM751303 (3LP)


 DMM盤。

 オーケストラは弦楽5部でわずか9人。合唱にはザ・シックスティーンを起用した小編成演奏。当然のことに明晰な響きになるが、あまりオーセンティックに傾かず、愉悦感を感じさせるのはコープマンならでは。とはいえ、これが好きかと問われると、微妙。


若杉 弘指揮 NHK交響楽団 日本プロ合唱連合
豊田喜代美(ソプラノ)
永井和子(メゾ・ソプラノ)
近藤伸政(テノール)
勝部 太(バリトン)
東京、サントリーホール、1992.1.27.
KING International KKC-2110/11 (2CD)


 モーツァルト編曲版K.572。

 この演奏ではないが、若杉弘が振った同曲(モーツアルト編曲版)はliveで聴いたことがある。やはり声楽との絡みは上手い。オーケストラはもったりして反応が鈍い。そう感じるのは、ここまでにさんざん古楽器演奏を聴いてきたためだけではなく、自発性が感じられず、作品の表情の変化に対して鈍感であるから。ここで演奏しているのは、オーケストラも合唱団も、「芸術家」ではなくて、悪い意味でのサラリーマンの集団。

  

 画像はこの日のもの。TV放送から―。


(Hoffmann)