018 「ジャンボ・墜落 ザ・サバイバー」 ”The Survivor” デヴィッド・ヘミングス (1981年 豪) 「ジャンボ・墜落/ザ・サバイバー」”The Survivor”(1981年 豪)です。監督は俳優でもあるデヴィッド・ヘミングス、出演はロバート・パウエル、ジェニー・アガター、ジョゼフ・コットンほか。日本では劇場未公開でしたが、TVで放送されたことがあり、その放送を観たひとの間で評判になった映画ですね。じつは私もその放送を観て、忘れかねていたんですよ。現在、国内盤DVDは「墜落大空港」という邦題で出ています。どうもTV放送の時の表題が「墜落大空港」だったようです。 原作はジェームズ・ハーバート。このホラー作家の本は何冊か読んでいますが、この映画の原作は読んだ記憶がありません。 あらすじは― 離陸直後、郊外に墜落し爆発炎上したジャンボ・ジェット。乗客乗員のほとんどが死亡する大惨事にも関わらず、ケラー機長ただひとりが奇跡的に無傷で生還。調査団の真相究明が続けられるなか、事故現場を撮影したカメラマンは不思議な少女の幻影に誘われて事故死。事故を目撃していた女性霊能者ホッブスが機長に近づき、協力して事件の真相を究明しようとする・・・。 事故原因を探るミステリ・タッチで物語が進行してゆくなか、怪異現象が発生してただならぬ雰囲気が醸し出されます。 冒頭の旅客機墜落シーンは迫力満点。これはキャプチャ画像じゃわかりません。ぜひ観ていただきたいところです。 唯一生き残ったケラー機長役はロバート・パウエル。事故の前後の記憶を失っています。 事故現場を撮影したカメラマンを誘う不思議な少女の幻影・・・。事故現場で死体の写真など、遠慮も会釈もなくパシャパシャやってはいけませんね。 ケラー機長がセスナで事故現場上空を飛ぶと、飛行機の残骸は見えず遊んでいる子供とホッブスの姿が見えるばかり・・・。これは原作どおりなんでしょうか、卓抜なアイデアですね。不思議なことが淡々と、自然に描かれていると、人はこれを「幻想的」と感じるものです。登場人物が大げさに驚いたり、音楽で盛り上げたりすると、そうした効果が薄れます。このあたりは、制作陣もよくわかっています。 ケラー機長は事故の原因も不明なまま、ただひとり生還したため世間の非難を浴び・・・って、しかしそんな描写はほとんどなく、帰宅して妻に会うも、妻の出番はそこだけ。カメラマンやその助手を見舞う怪奇な現象も、当人たち以外の第三者にはあずかり知らぬこと・・・このあたり、不自然といえば不自然なんですが、そこはテーマではないので、構造的な事情やむを得ないところ。さらに、機長の内面とか苦悩といったものもほとんど描かれていませんが、むしろ静かに訴え、迫ってくる、ある意思というか存在というものを感じさせるのにふさわしい展開ではないでしょうか。 そしてケラー機長は事故原因が人為的なものであることを突き止め、犯人を追いつめます。映像的なクライマックスは冒頭の事故とこのシーン、ここに至るまでのドラマの展開はとことん渋いものですね。そのあたりで評価が分かれるようですが、無理に見せ場を演出せずに、淡々と描かれているところが気に入っています。 それでは、以下でネタバレです― 翌朝、機体の処理が進み・・・コックピットには死後数日経過したケラー機長の死体が・・・。 つまり、これも「恐怖の足跡」”Carnival of Souls”(1961年 米)と同様なんですよ。事故に巻き込まれて死んだ人々が、事故原因の究明と復讐のためにケラー機長を現世に送り込んでいた、ということでしょう。今回、この映画をひさしぶりに観て、オチを知りつつも、地味ながらかなりの良作と感じました。大傑作とまでは言いませんが、大好きな映画です。「恐怖の足跡」では当の本人の悩める内面を描いていますが、こちらの映画はむしろ叙事的で、描かれているのは別なものです。ところどころで発生する怪異現象も点描的に挿入されているかのようで、かえって幻想的な雰囲気を漂わせています。あえて鑑賞する側をだまそうともしていない・・・そのあたりが地味なんですが、あざとさを感じさせず、好印象です。 無言で歩いているだけで意味深いものを感じさせる、ホッブス役のジェニー・アガター。知的です、絵になります。こういうシーンが活きていますね。 (おまけ) これは途中で事故死するカメラマンなんですが、時代設定は映画制作時の1981年頃なんでしょうか。それにしてはプロのカメラマンがPRACTICAを使っているというのも、なんだか時代遅れのような気がします。それと、縦位置での構え方が逆で、プロとしてはめずらしいのではないでしょうか。親指でシャッターを切る構えだとブレやすくなることは別にしても、film巻き上げが手動だった場合、巻き上げのたびに構え直さなければならず、素早い連射ができませんよね。 (Parsifal) 参考文献 とくにありません。 |