065 「妖婆 死棺の呪い」 ”Вий” (1967年 露) 






 「妖婆 死棺の呪い」”Вий”(1967年 露)です。

 じつはこれもマリオ・バーヴァの「血ぬられた墓標」”Black Sunday”(1960年 伊)と同じく、ニコライ・ゴーゴリの「ヴィイ」が原作。ただし、こちらはちょっとした台詞に至るまで、ゴーゴリの原作をきわめて忠実に映像化しています。1967年モスクワフィルム製作。この映画の存在は古くから知ってはいたのですが、このDVDに気付いたのはずっと後。だってDVDのパッケージに印刷された邦題は「妖婆 死棺の呪い」ですからねえ(笑)おまけに「珍品SFXオカルト」なんて表記してある。もしも”Вий”の文字が目に入らなかったら手にも取らず、知らぬまんまだったでしょう。

 

 神学校の学生が帰省の途上、宿を求めた家。羊小屋で豚の鼻面を蹴飛ばすような細部も原作どおりです。



 そのひとりホマ・ブルートの小屋に怪しげな老婆がしのんできて、彼にまたがると・・・

 

 魔女の騎行ですね。ちゃんと箒を持っているところが律儀(笑)魔女を背負って走るホマーの背景は、回り舞台が回っているだけという稚気あふれる特撮がこれまた楽しい(笑)魔除けの呪文で難を逃れ、老婆をさんざん痛めつけると・・・

 

 ・・・老婆は美少女の姿となって息絶えます。ホマーは仰天して逃げ出しますが、その後地方の富裕な地主(百人長)から、何者かによって暴行を受けて死んだ娘の遺言で、臨終の祈祷と三日間の回向をしてもらいたいとホマに名指しで依頼があり、嫌々出かけていくことになります。

 ちなみに、主役のレオニード・クラヴレフ(Леонид Вячеславович Куравлев)は有名な俳優です。一方、魔女役の女優さんはナターリヤ・ヴァルレイ(Наталья Владимировна Варлей)という人。きれいな人ですね、この、力尽きての激しい息遣いなど、ちょっとどきりとするほど。



 ユーモアもたっぷり・・・これは酔っぱらっているんですね。

 

 なんというか、他人事みたいに嘆いているのがトボけた味でいいですね(笑)



 コサックの踊りも・・・さすがになかなかの名優ぶりです。

 

 なんだか孫悟空の筋斗雲みたいでいいですね(笑)しかも、ホマーは身を守るためにチョークで結界を張っているんですが、その透明なバリヤー(?)にガッツンガッツンとぶつかってくるんですよ。

 

 魔女役の女優さん。右は怒りに燃えて主人公を呪っているところなんですが、あまりにきれいな方なので、ちっとも怖くありません。

 

 この娘さんとならひと晩じゅう追いかけっこてのも悪くはないですな(笑)

 
 

 こちら魔界の眷属。どことなくユーモラスです。右下画像の中央がヴィイ(土精)です。



 ホラー映画・・・だったはずなんですが、とにかく観ていて愉しい。



 ちゃーんとエピローグまで・・・このあたりの台詞も、とことん原作に忠実です。この映画が一部のマニアにのみ知られているだけだとしたら惜しいですね。

 なお、漫画家の水木しげるが、貸本漫画時代に翻案ものを書かれているのですが、いま調べてみたら、この映画よりも早い・・・ということは、この映画からではなくて、ゴーゴリの原作に基づいた翻案ということになります。





 特典に、貴重な撮影風景のスチールが収録されていました。

 なお、私が持っている(株)アイ・ヴィ・シーから出たDVDには特典がふんだんに盛り込まれていて、ソヴィエト最初期の無声映画も3篇収められています。しかも、ケースの裏にタイトルが記載されていないため、このDVDを購入した方でも結構見逃していることがありそうなので、以下に行き先を紹介しておきます。

メニュー --> タイトルメニュー --> English --> Bonus Materials --> Ruscico --> Museum Ruscico --> Russian Horror Movies

 ここで―

The Portrait
The Queen of Spades
Satan Exultaut

 ―の3篇が見られます。最初の2篇はそれぞれゴーゴリ、プーシュキンの短編が原作。

 また、ケースの裏に記載されていない予告編が2篇収録されています。場所は―

メニュー --> タイトルメニュー --> English --> Bonus Materials --> Ruscico --> Archive Ruscico --> Filmography Ruscico --> Script writer Ruscico --> 矢印で次の画面へ

 ここに―

Ilya Muromets
The Tale of Tsar Saltan

 ―の予告編が収められています。両作品とも、旧ソ連の子供向き娯楽映画として知られているものです。

 以上は全て英語吹き替えですが、「メニュー --> タイトルメニュー --> Русский」から辿って行けば原典版を見ることもできます。

 RuscicoのDVDは、とんでもなく深い階層に思いがけない映像が置いてあることが結構あるので、見つけたときには書き留めておかないと、後になってもう一度見たいと思っても、いっこうに探し当てられないことになりかねませんので、ご参考にどうぞ(笑)


(Hoffmann)



参考文献

 とくにありません。