025 ワーグナー 楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」 ※ 所有しているdiscを録音年順に記載します。




 ”Die Meistersinger von Nuernberg” ※ 新規入手discとコメントは随時追記します。



Artur Bodanzky, Orchestra and Chorus of the Metropolitan Opera
Rethberg, Maison, Schorr, Habich
New York, 22 February 1936
MUSIC & ARTS CD652(CD)


Arturo Toscanini, Chor der Wiener Staatsoper, Wiener Philmarmoniker
Nissen, Hoort, Reining, Wiedemann
Salzburg Festival, 5/8/1937
MEL012(LP)


 Toscaniniは1936年と翌年1937年にSalzburg音楽祭でこの作品を振っており、当時大評判になったと言われている上演の貴重な記録です。

 この時代としてはかなり即物的―などと言うと聞こえが悪いんですが、おかげでかえって80年以上も前の演奏であるにも関わらず古びて聴こえないのは、やはりToscaniniがただ者ではなかった証左となっているんじゃないでしょうか。


Erich Leinsdorf, Orchestra and Chorus of the Metropolitan Opera
Janssen, Kullman, Schorr, List
New York, 22 February 1939
RR-484(LP)


 いかにも海賊盤めいた箱に、Metropolitan Operaの表記はないんですが、指揮者と歌手の名前からしてMetropolitanの公演でしょう・・・にしても、録音は1939年のliveとは思えない鮮明なものです。


Wilhelm Furtwaengler, Chor und Orchester der Bayreuther Festspiele
Prohaska, Greindl, Fuchs, Lorenz, Mueller
Bayreuth, 1943
EMI WF68~72(LP), foyer FO1043(LP)


 ドイツ敗色濃厚な第二次世界大戦末期のBayreuth音楽祭の記録です。1943~44年はこの作品のみ上演され、聴衆はほとんどが傷痍軍人などの招待客だったそうです。周知のとおり、2箇所ほど欠落あり。なお、東芝と仏foyerの二種類のLPから聴くことのできるの音のタッチが、まるで違うんですな。東芝盤はノイズを除去して高域丸め、これと比べるとfoyer盤は高域が強調気味かというくらい鮮やかです。


Hermann Abendroth, Chor und Orchester der Bayreuther Festspiele
Schoeffler, Kunz, Suthaus, Scheppan
Bayreuth, 16.Juli 1943
PREISER 90174(CD)


 上のFurtwaengler盤と同じ年のBayreuth実況録音。この年は16回の公演中、Furtwaenglerが4回、残り12回をAbendrothが振ったそうです。Furtwaenglerの録音には一部欠落があるんですが、このAbendroth盤は欠落なく、音質も良好です。一聴して指揮者の意思がオーケストラの流れを決定していると印象づけられます。前奏曲は速めのテンポですが、オペラ上演の常套的な方法というよりも、内からわき上がる勢いを感じさせて見事。ザックスはBoehmが高く評価したというP.Schoeffler、ベックメッサーはE.Kunz、そのliveとなればこれもまた貴重な録音です。


Karl Boehm, Chor der Wiener Staatsoper, Wiener Philmarmoniker
Schoeffler, Kunz, Seider, Seefried
Wien, 28.-30.November und 1.,4. und 5.Dezember 1944
PREISER 90234(CD)


Eugen Jochum, Chor und Orchester der Bayerishcen Stattsoper
Hotter, Proebstl, Kusche, Treptow, Kupper
Muenchen, 10.12.1949
MEL428(LP)


 このLPは何年頃の発売でしたか・・・ついにH.Hotterのザックスが聴けるぞ、と大喜びで購入したのをおぼえています。

 ・・・が、残念なことにここでのHotterはやや不調気味。Treptowも若々しさに欠け、その他の歌手も魅力に乏しい。Jochumの指揮にもこれといった個性が感じられません。


Hans Knappertsbusch, Chor der Wiener Staatsoper, Wiener Philmarmoniker
Schoeffler, Gueden, Treptow, Edelmann, Dermota
Wien, 1950~52
LONDON RS65002(LP), DECCA LXT2659/2664(LP)


 DECCA盤は6LPバラ。これはスタジオ録音で、最初第三幕が録音され、その後第一幕、第二幕が追加録音されたと言われているものです。


Rudolf Kempe, Chor der Staatsoper Dresden, Staatskapelle Dresden
Franz, Lemnitz, Aldenhoff, Pflanzl
Dresden, 1951
Gebhardt JGCD0043-4(CD)、Profil PH13006(CD)

 Gebhardt盤の表記は”Saxon State Orchestra”。米Urania原盤のようです。


Herbert von Karajan, Chor und Orchester der Bayreuther Festspiele
Edelmann, Kunz, Hopf, Schwarzkopf
Bayreuth, 1951
EMI RLS7708(LP)


 戦後1951年に再開されたBayreuth音楽祭は、まずFurtwaengler指揮によるBeethoven交響曲第9番で開幕され、“Parsifal”(Knappertsbusch)、“Ring”(Knappertsbusch、Karajan)、“Meistersinger”(Karajan)といったプログラムでした。つまり“Ring”のみ二人の指揮者が振り分けたんですね (各1チクルス?)。

 ところが資料によっては、この“Meistersinger”もKnappertsbuschとKarajanの分担とされている。どうも1回だけKnappertsbuschが振ったらしいんですね。なんでも7回の公演のうちのある日、Karajanの姿が見えなくなった。噂によればBayreuthを離れて女性とお楽しみで、開演には間に合いそうもないと・・・そこで急遽Bayreuth滞在中のKnappertsbuschに連絡を取って、“Meistersinger”の指揮を依頼した。そしてなにも知らずにKarajanを待っていたオーケストラの前に現れたKnappertsbusch、驚いている団員たちに向かって「そんなに困った顔で見ないでくださいよ。わしだって『マイスタージンガー』を指揮したことはあるんだから!」

 さて、Karajanの“Meistersinger”に話を戻して、その演奏はというと、決して勢いだけで突っ走るものではなく、細部にまで神経が行き届いたものですね。それでいて後年のように、響きの洗練ばかりを追及した密度の薄い演奏でもありません。KarajanのWagnerと言えば晩年の“Parsifal”が最高傑作だと思いますが、それ以外ではこの1951年の“Meistersinger”が好きです。


Fritz Reiner, Orchestra and Chorus of the Metropolitan Opera
Schoeffler, Wegner, Hopf, Holm, Janssen
New York, March 22, 1952
ARLA40-A43(CD)


Hans Knappertsbusch, Chor und Orchester der Bayreuther Festspiele
Edelmann, Pflanzl, Hopf, della Casa
Bayreuth, 1952
MEL522(LP), MUSIC & ARTS CD1014(CD), GM1.0003CD)


Fritz Reiner, Orchestra and Chorus of the Metropolitan Opera
Schoeffler, de los Angeles, Hopf, Greindl
New York, 10.1.1953
WLCD 0273(CD), Sony Classical 88765427172 (25CD)


Hans Rosbaud, Orchestra e doro della RAI di Milano
O.Edelmann, E.Schwarzkopf, H.Hopf, I.Malaniuk, G.Unger, E.Kunz, L.Weber, K.Paul
Milano, 13.02.1955
WALHALL WLCD 0202(CD)


 オーケストラの音色は明るめ、アンサンブルは決して悪くはないんですが、どことなく有機的なつながりが感じられず、ソロなどめいめい勝手に奏いて(吹いて)いるように聴こえます。とくに金管はモチーフがやたらと浮きあがって聴こえてきます。とはいってもそんなにちぐはぐな印象が強いわけではなく、Wagner演奏としては一応の水準に達していると思います。指揮者はひたすら明快さを志向しているようですね。

 ケースの写真がSchwarzkopfなんですが、この人の歌を聴いていると、なんだか手練手管に長けた策略家のようなエヴァと聴こえます。Kunzのベックメッサーに同情したくなりますね(笑)


Franz Konwitschny, Chor der Deutschen Staatsoper Berlin, Staatsoper Berlin
Herrmann, Keplinger, Witte, Mueller, Unger, Pflanzl
Berlin, 04.09.1955 Deutshce Staatsoper unter den Linden Berlin Re-Opening
WALHALL WLCD 0234(CD)


 Deutschen Staatsoper unter den Linden Berlinにおけるlive録音、のRe-Openingと記載されています。

 Konwitschnyといえば悠揚迫らぬ堂々としたオーケストラいかにもドイツの伝統的な指揮者というイメージを持たれているようですが、あまりにもおっとりしていて細かなニュアンスなどおざなりな面もあって、私はオペラに関しては必ずしも好きな指揮者ではありません。この“Meistersinger”でも前奏曲がはじまると、上記のようなイメージどおりの演奏です。それでもlive録音の故でしょうか、むしろ速めのテンポで推進力も感じさせます。さすがに入念な表情付けを施しているとまでは思わず、基本的には作品そのものに語らせる姿勢なんですが、それなりにドラマの展開にも意を払っているようで、なかなか愉しめる演奏ですね。歌手はとくに突出したひともいないものの、まずまず上出来。ただし、肝心のザックス役J.Herrmannが、これはミスキャストではないでしょうか、変にクセのある声で、ザックスにふさわしい暖かな人間味とかやさしさは微塵も感じられず、第三幕なんか不機嫌にがなり立てるばかりで怒られているみたい、ラストに至ってはほとんどうなり声に聴こえます。このひとを除けば全体に好感を持ったんですけどね、録音もなかなか鮮明なのに、残念です。


Hans Knappertsbusch, Chor und Orchester der Bayerishcen Stattsoper
Franz, Frick, Pflanzl, Hopf, della Casa
Muenchen, 11.9.1955
HK3001-4(CD), ORFEO C 462 974 L(CD)


 HK3001-4はまるでtrackが切っていないという不便なdisc。


Fritz Reiner, Chor der Wiener Staatsoper, Wiener Philmarmoniker
Seefried, Beirer, Schoeffler, Kunz
Wien, 14.11.1955
MELORAM CDM47083(CD), ORFEO C667 054 L(CD)


Rudolf Kempe, Berlin Philmarmonic Orchestra
Franz, Frick, Kusche, Schock, Gruemmer
1956
HIS MASTER'S VOICE ALP1506-1510(LP), Electrola WALP5191523(LP), EMI RLS740(LP)


 1950年代から1960年代初頭にかけてのKempeによるEMI録音は、その多くがこの指揮者の最良の記録なんですが、ここでははなはだ微温的で冴えませんね。肝心のザックスを歌うFranzは細やかな内面の表現に不足しており、Schockに至ってはそもそもWagnerを歌えるだけの力量があるとも思えません。Gruemmerがいい歌を聴かせてくれますが、それだけでこの大曲を聴き通すのはつらいところです。


Andre Cluytens, Chor und Orchester der Bayreuther Festspiele
Hotter, Greindl, Windgassen, Stolze, Brouwenstijn, von Milinkovic
Bayreuth, 1956
GM1.0068(CD), Music & ARTS CD1011(CD)


 Cluytens、Bayreuthの“Meistersinger”は1956、1957、1958年盤が出そろっているわけですが、オーケストラに関しては1957年、歌手に関してはこの1956年でしょうか。


Andre Cluytens, Chor und Orchester der Bayreuther Festspiele
Neidlinger, Schmidt-Walter, Geisler, Gruemmer
Bayreuth, 1957
MEL572(LP), WLCD0214(CD)


 1956年から上演されたWieland Wgner演出による上演の記録。抽象的な舞台で“ohne Nuernberg”と言われたそうですが・・・。

 Cluytensらしい、ラテン的な明るさの明快な音楽造りが個性的です。いかにも中世ドイツ都市と民衆を感じさせるような演奏ではないんですが、むしろ演出(舞台装置)にはふさわしかった? といって、決して音楽が軽くなっているわけではなく、これはこれでWagner演奏のひとつの型ではないでしょうか。歌手も、いつになく歌いやすそうで、実力以上の魅力を発揮しています。


Andre Cluytens, Chor und Orchester der Bayreuther Festspiele
Wiener, Blankenheim, Traxel, Gruemmer
Bayreuth, 1958
MEL582(LP), MYTO 00187(CD)


 前年の同じ指揮者によるBayreuth実況録音とくらべると、歌手の交代はあるものの、あまり演奏に違いはありません。


Karl Boehm, Orchestra and Chorus of the Metropolitan Opera
Edelmann Nordmo-Loevberg, Feiersinger, Tozzi
New York, 7.3.1959
WLCD 0303(CD)


Erich Leinsdorf, Chor und Orchester der Bayreuther Festspiele
Wiener, Greindl, Blankenheim, Schock, Gruemmer
Bayreuth, 1959
GM1.0061(CD)


 戦前の一時期には若くしてMetropolitanでのWagner上演を任されていたLeinsdorfが、1959年に至ってBayreuthに登場した際の実況録音。


Hans Knappertsbusch, Chor und Orchester der Bayreuther Festspiele
Greindl, Shmitt-Walter, Windgassen, Gruemmer
Bayreuth, 1960
MEL602(LP), GM1.0029(CD), MYTO 00274(CD), ORFEO C917 154L(CD)

 ORFEO盤によれば、23.Juli 1960の公演。


Heinz Wallberg, Chor der Wiener Staatsoper, Wiener Philharmoniker
O.Wiener, H.Hotter, K.Doench, W.Windgassen, L.Della Casa, J.Madeira
Wien, 27.Mai 1961
PREISER PR90814(CD)


Josef Krips, Chor und Orchester der Bayreuther Festspiele
J.Greindl, T.Adam, K.Schmitt-Walter, W.Windgassen, G.Stolze, E.Gruemmer, E.Schaertel
Bayreuth, 1961
MYTO 00315(CD)


Joseph Keilberth, Chor und Symphonie-Orchester des Bayerischen Staatskapelle
Wiener, Hotter, Kusche, Thomas, Watson
Muenchen, 23.2.1963
eurodisc XR70841/1-5(LP), The World Record Club OC220~4(LP), SONY 88697594932(CD)


 バイエルン国立歌劇場再建記念公演のlive録音。

 独eurodisc盤は独プレス、キングレコードが解説書・対訳を付けて発売した直輸入盤。The World Record Club LTDによるOC220~4は英プレス盤。後者英盤の方がカッティングレベルが高く、やや高域上がり。独盤の方はもう少し落ち着いた響き。同じ録音なのに、英プレス盤はマイクが近くなったような印象がありますね。ただし録音のせいばかりではなく、Keilberthの指揮はヴァイオリンなど高域寄り弦楽器優勢のバランスのようで、結構モダンな感覚の演奏です。同じKeilberthでもBayreuth録音とは異なるやや腰高なバランスはElectrolaの「魔弾の射手」に似ていて、これは録音のせいなのか。


Joseph Rosenstock, Orchestra and Chorus of the Metropolitan Opera
Edelmann, Flagello, Doench, Konya, Della Casa
New York, January 5.1963
Gala GL100.657(CD)


 オーケストラの響きは明るめながら、ややテンポは遅め、祝祭的な派手さのない演奏表現に渋い味わいを感じます。指揮者の個性でしょうか、これはこれで悪くありませんね。歌手は・・・先入観というものは恐ろしい(笑)やはりKarajanの「薔薇の騎士」の記憶は拭い去りがたく・・・つまりO.Edelmannとなると、なにを歌っていてもオックス男爵に聴こえてしまうんですね・・・というのは半分冗談ですが(笑)ニュルンベルクのハンス・ザックスというより、ウィーンのハンス・ザックスといった印象です。


Karl Boehm, Chor und Orchester der Bayreuther Festspiele
Greindl, Boehme, Alexander, Konya, Silja
Bayreuth, 1964
GM1.0074(CD)


Rafael Kubelik, Chor und Orchester des Bayerischen Rundfunks
Stewart, Janowitz, Konya, Hemsley
Muenchen, 1967
MYTO 4MCD925.69(CD)


Karl Boehm, Chor und Orchester der Bayreuther Festspiele
Adam, Ridderbusch, Hemsley, Kmentt, Jones
Bayreuth, 1968
GM1.0038(CD), ORFEO C 753 084 L(CD)


 ORFEO盤によれば25.Juli 1968の公演。 本来、この年の”Meistersinger”はDGがlive録音する予定だったのに、ザックスを歌う予定だったWalter Berryが急に役を降りてしまったので、公式録音が実現しなかった公演のlive録音。

 金管の強い録音バランスと思うひとがいるかもしれませんが、1960~70年代のBayreuth録音はたいていこんなバランス。おそらくピットに覆いがあるので、ピット内にマイクを設置すればこうなるのでしょう。演奏も1960年代の元気だった頃のBoehmらしい、分厚い金管が強いアタックでメリハリをつけるもの。歌手も合唱も充実しています。以上、コメントは短いんですが、かなり気に入っている演奏です。


Ferdinand Leitner, Chorus and Orchstra of the Colon Theatre, Buenos Aires
Neidlinger, Crass, Alexander, Konya, Unger, Watson
Buenos Aires, October 27, 1968
Living Stage LS1024(CD)


 この年代としては録音お粗末。録音のせいもあるかもしれませんが、総奏のあと静かになるような箇所では演奏が止まっちゃいそうに聴こえます。ただしオーケストラと歌手のバランスは悪くありません。その歌手はといえば、この歌劇場らしくなかなか豪華で愉しめるんですけどね、どうもオーケストラが非力なことに加えて、指揮者が交通整理以上の主張を感じさせてくれません。


Herbert von Karajan, Staatskapelle Dresden
Adam, Kollo, Ridderbusch
1970
EMI SLS957(LP)


 評判の良いdiscですね。Karajanがこの作品ならと、あえて東ドイツ(当時)に赴いて録音したものだと言われていますが・・・どこで読んだのか忘れましたが、このレコーディングは当初指揮者にBarbirolliが予定されていたとか。ところが1968年の「プラハの春」事件の際、R.Kubelikから東側諸国での演奏活動を控えられたいとの要請があって、Barbirolliもこれに賛同、レコーディングを断り、Karajanは代役だったらしいんですね。

 T.Adam、K.Ridderbusch、R.Kolloほか、歌手にも穴はなく、Dresdenのオーケストラの音色も魅力的なんですが、やはり私ははこの流線型の音楽造りには首肯できません。何度聴いても愉しむことができないのが残念です。ただし録音に関する限り、KarajanのWagner全曲(セッション)録音のなかでは、比較的まとも。


Thomas Schippers, Orchestra and Chorus of the Metropolitan Opera
Lorenger, King, Adam, Kusche, Flagello
New York, January 15, 1972
Sony 88697 85304 2(CD)


Silvio Varviso, Chor und Orchester der Bayreuther Festspiele
Ridderbusch, Sotin, Hirte, Cox, Bode
Bayreuth, 1974
PHILIPS 6747167(LP), PHILIPS SFX9548~52(LP), PHILIPS 432 573-2(CD)


 PHILIPS 6747 167の5枚組LPは2組持っていて、一方は箱がフランス語なんですが、いずれも蘭プレス。仏語箱は赤レーベル白文字、ドイツ語箱はブルーグレーに銀文字。結構音が違うんですな。「6747 243」はいわゆる「Wagner大全集」のセット、こちらはブルーグレーレーベル銀文字。レコード番号は「6599 798/802」。

 雑誌などではほとんど取りあげられることもない、(おそらく)一般には評価の低いdiscですね。'60年代に活躍していた大歌手たちが退いた時期でもあり、ザックスのRidderbusch以外の歌手が総じて弱く、そのRidderbuschでさえ、「ハンス・ザックスという役どころと結びつけて考えられる独特な暖かみと人間性に欠けている」(ドナルド・キーン)などと評される始末・・・先入観というか、短絡的な気がします。T.Adamのような、いかにもなザックスではありませんが、声も表現も一流だと思います。Ridderbusch以外では、Coxは弱いとしか言いようがないものの、その他の歌手は悪いというほどではありません。とくに歌手のアンサンブルは上出来。指揮は重厚でありながら鈍くならず、速めのテンポでさわやかと言いたいくらい。第三幕終盤の劇的な高揚感は特筆もの。合唱団に至ってはさすがBayreuth(合唱指揮者Norbert Balatschの功績!)、まったく申し分ないすばらしさです。


Sir Georg Solti, Vienna Philharmonie Oschestra, Vienna State Opera Chorus, Gumpoldskircher Spatzen
N.Bailey, K.Moll, B.Weikl, R.Kollo, A.Dallapozza, H.Bode, J.Hamari
15-30.9, 9-14.10.1975
DECCA D13D5(LP)


Christoph von Dohnanyi, Orchester und Chor der Wiener Staatsoper
Ridderbusch, Moll, van der Bilt, King, Janowitz
Wien, 21 October 1975
PONT PO-1006(CD)


 さすがDohnanyi、1975年にして新時代のWagner演奏になっており、重厚壮大型の旧世代のWagner演奏とは一線を画すものです。とくに弱音部のニュアンスが豊かで、このあたりの表情付けのコントロールは合唱にまで至ります。決して激することなく、つねに美しさを保つ響きはこの指揮者らしいところ。歌手はそうした指揮者のコンセプトにふさわしい面々。ただ、私はこの演奏が好きかと問われると、ちょっと微妙ですね。


Eugen Jochum, Chor und Orchester der Deutschen Oper Berlin
F-Dieskau, Lagger, Hermann, Domingo, Ligendza
Berlin, 19.03.~03.04.1976
DG 2740149(LP)


 1976年3月のDeutschen Oper Berlinでの公演が評判がよかったので、一部歌手を入れ替えて録音されたものだそうです。オーケストラは超一流の魅力とは言えないんですが、落ち着いた貫禄とモダンな感覚を併せ持つJochumの、これは最上のdiscかもしれません。Domingoの有り余る声の威力はさすが、ただしこれが私の好みであるとは到底言えません。そのほか歌手は総じていい歌を聴かせていますが、残念、肝心のザックスが私の嫌いなF-Dです。F-Dのザックスはこのときの公演が初めて、本公演では絶賛されたそうなんですが、好みは別としてもこのザックス、歌の表情付けなど上手いというよりあざとい。ザックスの人間味よりもF-Dという歌手の演技ばかりが押しつけがましく、おかげであまりにも神経質にすぎると聴こえます。


Horst Stein, Chor und Orchester der Bayreuther Festspiele
Wolfgang Wagner,
Bayreuth, 1984
DG 00440 073 4160(DVD)


Charles Mackerras, The Australian Opera Chorus, The Elozabethan Philharmonic Orchestra
Michael Hampe. McIntyre, Frey, Pringle, Doig, Shanks, Gunn, Allman
Sydney, October 14, 1988
KULTUR D0007(DVD)


 このDVDはRegion1です。

 さすがベテラン指揮者、Mackerrasの指揮の下でなかなか充実した公演になっています。画質はさすがに古いと感じさせるもので、カメラワークもあまりいいとは思えませんが、McIntyreの細かい演技などが愉しめる映像です。


Wolfgang Sawalisch, Bayerisches Staatsoper
Weikl, Heppner, Studer, Lorenz,
Muenchen, 1993
EMI CDS 5 55142 2(CD)


 私はは日頃から、discでオペラを聴くならlive録音に限る―「限る」は言い過ぎとしても、live録音に如くはない、と思っているのですが、やはりここでも後述するBarenboim盤にその長所が存するのを認めざるを得ませんでした。もっともlive録音といってもゲネプロなど適宜編集したものでしょうけれど、その感興がドラマをそれらしく進行させているのは確かです。たとえば第一幕でコートナーがマイスタージンガーたちの点呼(出席)をとっている場面、めいめい個性ある返答をしている親方たちのなかで、ザックスのあとにベックメッサーがザックスをからかうようなことを言うんですが、ここ、Sawalisch盤だとよどみなく流れていく旋律のなかに埋没してしまっています。ぼんやりしているとザックスもベックメッサーもいつの間にか通り過ぎてしまう、めりはりがないんですね。ところがBarenboim盤だと、親方たちひとりひとりの返答(歌)が立ち上がってきて、そのなかでもザックスとベックメッサーの存在感は浮きあがってくる。たぶん、Sawalischだって実演では歌手たちの演技と相俟って、こうした演劇的な音楽造りになるのだと思います。やはり、このあたりにliveでないスタジオ録音というものの落とし穴があるんじゃないでしょうか。


Rafael Fruebeck de Burgos, Chor und Orchester der Deutschen Oper Berlin
Goetz Friedrich, Brendel, Wingergh
Berlin, 19,23,26. 2. 1995
PIBC2004(DVD)


 このproductionは来日公演でも取り上げられましたね。Goetz Friedrichらしい、民衆を重視した演出です。とくに歌合戦の場面では、ヴァルターの歌を聴きに旅芸人、つまりアウトサイダーまでが集まってくるあたりに、その演出意図がよくあらわれています(ただしこの映像ではわかりにくい)。Brendelのザックスはことさらに高貴な人格者ではなく、なんとも庶民的な親方職人、ベックメッサーとの和解も自然です。舞台奥の円環を場面によって使い分けるのもいいですね。とくにミニチュアの街並みはうまいと思います。指揮は堂に入ったもので、かなり高水準の上演じゃないでしょうか。

 問題は映像で、カメラや編集をだれがやったのか知りませんが、まったく演出意図を理解しておらず、肝心なところで肝心なものを映さないという底なしの無能ぶりを露呈しています。


映像がダメなのが惜しい・・・。


Bernard Haitink, The Royal Opera Chorus, The Orchestra if hte Royal Opera Hause
Winbergh, Gustafson, Allen, Tomlinson, Wyn-Rogers, Lippert
London, 12 July 1997
ROHS008(CD)


 HaitinkのCovent Gardenにおける“Die Meistersinger von Nuernberg”のlive録音です。

 指揮は良くも悪くも中庸をゆくもの。メリハリとかコントラストといった形容とは無縁で、デコボコを見逃すことなくきれいに均して、終始激することなく美しい響きを忘れないといった演奏ですね。ただ、その響きにいま一歩力強さが加われば・・・また、これだけ長い作品ですから、もう少しドラマティックな変化を付けてくれてもよかったのではないかとも思います。細部にこだわると、ちょっと素っ気ないと聴こえるんですね。正直言って、ちょっと退屈です。決して無機的にはならず、humanな暖かみを感じさせるのがHaitinkらし意図頃ですが、有無を言わせぬ説得力には至りません。歌手は総じて優秀で、intimateな雰囲気のある、いい歌を聴かせてくれます(ただし演出がどんなものだったのかは知りません)。


Daniel Barenboim, Chor und Orchester der Bayreuther Festspiele
Wolfgang Wagner, Holl, Schmidt, Seiffert, Magee
Bayreuth, 21-30 June 1999
Teldec 3984-29333-2(CD), Unitel 2072358(DVD)


 Barenboimの“Ring”以外のWagner全曲録音をまとめて買ってきて、ケースの表記すらろくすっぽ確認していなかったんですが、これは音が出た瞬間「おや」と思いました。この作品のみBayreuth録音だったんですね。やはりBayreuthの音響はWagnerにふさわしいというか、ひと味違いますね。

 演奏そのものはBarenboimらしく、重厚にやっているつもりがダルになっているという印象なんですが、やはりほかのdiscとは違った美点があるのはオーケストラ(とホール)のせいでしょう。ただ、古いものも含めてあれこれdiscを聴いていて、このあたりの時期の録音になると、どうにも歌手に魅力が乏しくなってきますね。

(追記)
 2008年にDVDが出ました・・・で、あらためて視聴したんですが、映像が付いたからといってたいしておもしろくもなし。むしろ小粒な歌手、Barenboimのダルな指揮ぶりが際立つ結果になって、退屈でした。


Franz Welser-Moest, Orchester der Oper Zuerich
Nikolaus Lehnhoff, Van Dam, Salminen, Volle, Seiffert, Strehl, Schnitxer,Pinter
Zuerich, 2004?
EMI 7243 5 99736 9 2(DVD)


 前奏曲の間は出演者の食事風景が映し出されるという、制作者がなにを考えているのか分からないDVDです。その後もカメラは舞台に対して無意味に傾けられたりするなど、観ていて居心地が悪く、ほとんど不快。そんなカメラワークですから演出について好悪を語っても仕方がない。ザックスは神経質で粗暴でさえあり、これが演出のせいなのか、歌手の個性なのか・・・たぶん両方? オーケストラの音色も魅力に乏しいですね。


Christian Thielemann, Chor der Wiener Staatsoper, Orchester der Wiener Staatsoper
Otto Schenk, Struckmann, Anger, Eroed, Botha, Schade, Merbeth, Selinger
Vienna, 19 and 23 January 2008
medici arte 2072488(DVD)


Sebastian Weigle, Chor und Orchester der Bayreuther Festspiele
Katharina Wagner, Hawlata, Korn, Volle, Vogt, Ernst, Kaune, Guber
Bayreuth, 2008
OPUS ARTE OA BD7078(BD)


 なんだかもう、Wagner演出もひどいことになってきましたね。これはKatharinaが、自分の地位を固めるための諸外国向けアジテーションです。


Jaap van Zweden, Radio Filharmonisch Orkest Groot Omroepkoor
R.Holl, A.Anger, E.W.Schulte, B.Fritz, R.Trost, B.Haveman, E.Bishop
Amsterdam, 7 februari 2009
Quattro Live(CD)


Marek Janowski, Rundfunk-Sinfonieorchester Berlin, Rundfunkchor Berlin
A.Dohmen, D.Henschel, E.Haller, R.D.Dean Smith, M.Breedt
Berkin, June 3, 2011
PentaTone PTC 5186 402(SACD)


Vladimir Jurowski, London Philharmonic Orchestra, The Glyndebourne Chorus
Director David mcVicar
G.Finley, M.Jentzsch, J.M.Kraenzle, A.Gabler, A.Miles, T.Lehtipuu, M.Selinger
Glyndebourne, 06/2011
OPUARTE OA BD7108 D(BD)


Marcus Bosch, Staatstheater Nuernberg Chorus, Staatsphilharmonie Nuernberg
Director David Mouchtar-Samorai
A.Pesendorfer, J.Kupfer, M.Putsch, M.M.Mayer, G.Jentjens, T.Lichdi
Nuernberg, 10/2011
Civiello COV81201(DVD)


Daniele Gatti, Wiener Philharmoniker, Konzertvereinigung Wiener Staatsopernchor
Staged by Stefan Herheim
M.Volle, R.Sacca, A.Gabler, P.Sonn, G.Zeppenfeld, M.Bohinec, M.Werba
Salzburg, 08/2013
UNITEL 2072684(BD)


Philippe Jordan, Chor & Orchester der Bayreuther Festspiele
Staged by Barrie Kosky
M.Volle, G.GroissBoeck, J.M.Kraenzle, K.F.Vogt, D.Behle, A.Schwanewilms, W.Lehmkuhl
Bayreuth, 2017
DG 00440 073 5453(BD)


Christian Thielemann, Staatskapelle Dresden, Saechsischer Staatsopernchor Dresden, Bachchor Salzburg
G.Zeppenfeld, A.Eroed, K.F.Vogt, S.Kohlhepp, J.Wagner, C.Mayer
Salzburg, 13, 22.4.2019
Profil PH20059(CD)


John Fiore, Orchestra and Chorus of the Deutsche Oper Berlin
Stage Directors Jossi Wieler, Sergio Morasito, Anna Viebrock
K.F.Vogt, H.Stober, J.Reuter, P.Jekal, A.Pesendorfer, Y-C.Huang
Berlin, 2022.6.29, 7.20.
NAXOS NBD0178-79V(BD)

 Wagnerなので買いましたが、なんだかあまり観たくないなあ(笑)





(抜粋盤など)


Karl Boehm, Die Staatskapelle Dresden, Der Chor der Staatskapelle Dresden
H.H.Nissen, S.Nilsson, E.Fuchs, A.Schellenberg, T.Ralf, M.Kremer, M.Teschmacher, L.Jung
Dresden, 08/1938
Electrola E80983-84(2LP), Profil 2PH05038(CD)

 Electrola盤は2LPバラ。第三幕のみ。ProfilのCDも2枚組。古くから有名な録音です。Boehmがその「回想録」でこの演奏を自慢しています。ただしそこでマグダレーナ役をE.Hoengenと記しているのは、H.Jungの誤り。BoehmはDresdenでの初舞台がこの作品で、ザックスとベックメッサー以外はそのときのキャストだそうです。


Arthur Roter, Chor und Orchester der Berliner Rundfunks
G.Hann, E.Kunz, H.Hoort, K.Wessely, T.Kempf, E-L.Schilp
19.November 1942
PREISER 90168(CD)

 第二幕。


Sir Thomas Beecham, Royal Opera House Covent Garden
E.Gruenner, P.Anders, H.Hotter, B.Kusche, L.Weber
London, 02.07.1951
Gebhardt JGCD0050-1(CD)

 Excerpts From Act I & II。



(Hoffmann)