028 ワーグナー 楽劇「ワルキューレ」 ※ 所有しているdiscを録音年順に記載します。




 ”Die Walkuere” ※ 新規入手discとコメントは随時追記します。



Artur Bodanzky, Orchestra of the Metropolitan Opera
Flagstad, Althouse, List, Melchior, Lawrence
New York, February 2, 1936(ACT1 & Excerpts ACT2), December 18, 1937(ACT2 &3)
WHL21(CD)


 1936年はFlagstadのMetropolitanデビューでジークムントはP.Althouse、第一幕と第二幕の断片が遺っており、1939年はジークムントがL.Melchiorなんですが、こちらは第一幕の録音が失われています。やむを得ず組み合わせて全曲としたものですね。


Erich Leinsdorf, Orchestra of the Metropolitan Opera
Flagstad, Lawrence, Melchior, Schorr
New York, February 17, 1940
Sony Classical 88765427172 (25CD)



Erich Leinsdorf, Orchestra of the Metropolitan Opera
Lehmann, Lawrence, Melchior, Schorr
New York, March 30, 1940
WHL1(CD)


 これまたMetropolitan黄金時代を象徴するような、垂涎のドリームキャストですね。


Erich Kleiber, Teatro Colon, Buenos Aires
Lawrence, Jessner, Stevens, Maison, List, Janssen
Buenos Aires, August, 1940
Gebhardt JGCD0028-3(CD)


Erich Leinsdorf, Orchestra of the Metropolitan Opera
Melchior, Varnay, Schorr, Kipnis, Traubel, Thorborg
New York, 6.12.1941
MYTO 3MCD913.41(CD)


 Metropolitanの豪華歌手陣に、ここでジークリンデ役にA.Varnayが登場。ケースに“A.Varnay's stage Debut”と印刷されています。日付けにご注意。真珠湾攻撃の前日です。もとはラジオ放送でしょうか、冒頭にアナウンサーの声が入っています。

 Leinsdorfらしく、豊かな表情と速めのテンポでぐいぐい押していく、音楽に推進力を感じさせる演奏です。A.Varnayはやや緊張気味ですが、大器の予感充分・・・とは後の充実ぶりを知っているから? そのほか、とにかく現代の歌手とは桁外れの大歌手たちの「芸」が愉しめる歴史的記録。まったくすばらしい!


George Szell, Orchestra of the Metropolitan Opera
Melchior, Bampton, Traubel, Janssen, Thorborg, Kipnis
New York, 2.12. 1944
MYTO 3MCD953.133(CD)



Paul Breisach, Orchestra of the Metropolitan Opera
Traubel, Melchior, Varnay, Berglund, Thorborg, List
New York, 30.03.1946
ARPCD0069-3(CD)


Fritz Stiedry, Orchestra of the Metropolitan Opera
Bampton, Lorenz, Vichegonov, Traubel, Berglund, Thorborg
New York, 26.01.1949
ARCHIPEL ARPCD 0151-3(CD)


Ferenc Fricsay, Orchester der Staedtischen Oper Berlin
Suthaus, Mueller, Buchner, Herrmann, Klose, Greindl
Berlin, 10.6.1951
MYTO 3MCD933.81(CD)


 第一幕の冒頭は速めのテンポで勢いがいいのに、だんだん遅めになって、あとはずっとそのまま・・・。ところどころ伸縮するものの、恣意的というか気儘なテンポ変動と聴こえます。DGにあまり出来の良くないオペラのスタジオ録音をいくつか残しているFricsayですが、ここでの指揮の方もいまひとつ。オーケストラは決して一流ではないんですが、音色は渋めでソロのひなびた響きなどはおもしろいですね。

 歌手ではジークムントとジークリンデ兄妹のL.Suthaus、M.Muellerとも、ここではもはや盛りを過ぎたという印象です。とくにMuellerは若々しさがなく、おばさん声。J.Greindlのフンディング、M.Kloseのフリッカが堂々たるもの。ヴォータン役のJ.Herrmannとブリュンヒルデ役のP.Buchnerは弱くて、とくにJ.Herrmannの声はヴォータンというよりベックメッサーみたいです。第三幕はさっぱり盛りあがりませんね。


Robert F. Denzler, Orchestre de la Suisse Romande
Werth, Ralf, Alsen, Grob-Prandl, Hofmann, von Milinkovic
Victoria Hall Geneve, 04.05.1951
Gebhardt JGCD 0056-3(CD)


 Denzlerは1892年生まれのスイスの指揮者、“Lulu“や“Mathis der Maler”のチューリヒ初演を行ったひと。

 ケース写真はジークリンデを歌っているH.Werth。このひとに焦点を合わせたdiscでしょうか。力強いとはいえませんが、芯のある透明な清潔感ある美声で、私の好きな声ですね。その他の歌手ではフンディングのH.Alsenが良く、ヴォータンのL.Hofmannは弱い。G.Grob-Prandlはde Sabataの“Tristan”でイゾルデを歌っていたんですが、あちらは音質が悪すぎてどんな歌手なのかまるで分からず。このdiscのブリュンヒルデでようやくまともに聴くことができたわけですが、この時代にしては咆哮しない、細い声―というより、太くない声で、そこはかとない清楚さが感じられて、なかなかいいですね。ほかにWagner録音が見あたらないのが残念。


Joseph Keilberth, Orchester der Bayreuther Festspiele
Lorenz, Moedl, Greindl, Hotter, Varnay
Bayreuth, 1954
MEL547(LP), GM1.0065(CD)


 1954年のBayreuthにおける“Ring”はKeilberthの単独指揮でしたが、いまのところdiscで出ているのはこの“Die Walkuere”のみです。

 ジークムントのM.Lorenzの古臭い歌唱には、なにをいまさらの感。Moedlのジークリンデはむしろブリュンヒルデ向き。ただしここでブリュンヒルデを歌っているVarnayが同時代にいたのはMoedlの不運ですね。そのVarnayとHotterはもはや偉大と言うべき。Keilberthの指揮もさすがの充実ぶりで、とくに第三幕は感動的です。


Wilhelm Frutwaengler, Wiener Philmarmoniker
Moedl, Suthaus, Rysanek, Franz, Frick
Wien, 28.September bis 6.Oktober 1954
LA VOIX DE SON MAITRE FALP 383a387(LP), Electrola 1C149-00 675/79(LP), Toshiba WF40~44(LP)


 FrutwaenglerとWiener Philmarmonikerによる“Ring”全曲録音の第一弾だったんですが、Furtwaenglerの死によりこれが最後の指揮・録音となってしまったものです。

 Furtwaengler死の年の録音で、衰えは隠せず。とはいえ、オーケストラはイタリアのオーケストラを振った2種の録音とくらべれば圧倒的にすぐれており、「Frutwaenglerとしては・・・」という聴き方をしなければ、指揮とオーケストラがよく整った、完成度の高い熱演です。


Joseph Keilberth, Orchester der Bayreuther Festspiele
Windgassen, Moedl, Greindl, Hotter, Brouwenstijn
Barcelona, 27.04.1955
WLCD 0154(CD)


 Bayreuth音楽祭の引越公演。最近続々と登場するDVDで有名になったBarcelonaのLiceu劇場での録音。残念ながら音質はかなり悪い。


Joseph Keilberth, Orchester der Bayreuther Festspiele
Varnay, Vinay, Moedl, Greindl, Hotter, Milinkovic
Bayreuth, August 1955
MEL557(LP), WLCD0177(CD)


 Testamentから出た同年のdiscは7月25日の公演、こちらは8月の公演の記録。Testament盤はブリュンヒルデがVarnay、ジークリンデがBouwenstijnであるのに対して、こちらはブリュンヒルデがMoedl、ジークリンデがVarnay。


Joseph Keilberth, Orchester der Bayreuther Festspiele
Vinay, Moedl, Greindl, Hotter, Varnay
Bayreuth, 11.8.1955
SBT4 1432(CD)

 同年のKeilberthによる”Ring”はstereo録音が2006年に発売されましたが、これは第2キャストによるstereo録音。第2キャストの録音は残念ながらこの”Die Walkuere”と”Goetterdaemerung”のみ。Moedlブリュンヒルデが最大の違い。オーケストラはたいへん好調。


Sixten Ehrling, Royal Swedish Orchestra
Nilsson, Svanholm, Nordmo-Loevberg, S.Nilsson, Bjoerling, Meyer
Stockholm, November 18.1955(acts1&2), April 14.1956(act3)
CAPRICE CAP21765(CD)


 第一幕、第二幕が1955年11月の録音で、第三幕は翌1956年の4月。おそらく同じプロダクションの公演だったのでしょう。録音(音質)に格別の差はないようです。このdiscはtrackが大雑把で少なく、もう少し細かく切って欲しいですね。

 さほど期待もせずに聴き始めたんですが、オーケストラはWagnerらしい響きで、細部の表情などあまり細かいことを言わなければ、まずまずの出来。ジークムントのS.Svanholmはそのキャリアも下り坂か衰えが目立つものの、逆に当時新進であったB.Nilssonが、若々しくも安定した歌唱を聴かせています。ヴォータンのS.Bjoerlingは1951年のみBayreuthに登場し、この際の録音はKarajan指揮による“Die Walkuere”第三幕がdiscになっています。ここでようやく全曲の歌唱を聴くことができるようになったわけですが、ここではやや不安定ぶりが露呈しています。第三幕の「雷鳴ゴロゴロ」など、スタジオ録音だといかにも作り物めいた煩わしさがあるんですが、liveだと思えばこれも臨場感を高めるものと思えてくるから不思議です。


Dimitri Mitropoulos, Orchestra of the Metropolitan Opera
Schech, Vinay, Boehme, Harshaw, Edelmann, Thebom
New York, 02.02.1957
LS 1058(CD)


Herberth von Karajan, Orchestre e Coro del Teatre alla Scala di Milano
Suthhaus, Rysanek, Frick Hotter, Nilsson, Madeira
Milan, April 29, 1958
IDIS 6549/51(CD)


 Karajanの“Die Walkuere”のlive録音といえば1969年のMetropolitan Operaの記録と、1951年のBayreuthにおける第三幕のEMI盤がありましたね。これは1959年のScala座における公演の記録です。

 これまた劣悪な音質、音が途切れたりゆれたりと、かなりお粗末な録音です。従ってよほど興味のある方以外は手を出さぬ方が無難ですね。ところが、私はわりあいノイズそのほか録音の瑕に寛容なので、とりあえず最後まで聴きましたよ。演奏は、1951年のBayreuth公演(第三幕のみ)に近く、演奏は存外よかったというのが正直な感想です。Suthhausは衰え隠せず力みがち、ときに前のめりに突っ走ってしまい、そのせいがどうかKarajanまでがときに(おそらく自分の目指す演奏様式を)「踏み外す」んですよ。そのあたりが結構thrilling。Karajanはその都度「シマッタ;;」とか思っていた・・・かどうかは分かりませんが、後のDGへのベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とのレコーディングとはずいぶん違います。オーケストラはScala座にしては微温的にならず、これは指揮者の手腕でしょうか(ただし1969年のMetropolitan録音では指揮者の故につまらない響きとなっていると感じたんですけどね)。歌手はFrick Hotter, Nilsson, Madeiraと豪華、さすがに聴き応えがありますね。ワルキューレのなかには、Christa Ludwig、Rosette Anday、Hilde Roessl-Majdanといった名前も見えます。ただし、念のため繰り返しますが、音質は劣悪ですよ。


Alexander Krannhals, Orqueatra Sinfonica del Sodre
Wilfert, Traxel, Hofmann, Synek, Matthaeus
Montevideo, 25.08.1959
Living Stage LS1062(CD)


 この“Die Walkuere”のdiscは以前からshopで見かけてはいたんですが、買わないでいたもの。指揮者や歌手もさほど興味をそそらないし、これまでに入手したLiving Stage盤の劣悪な音質にいささか閉口していたこともあったため。ところが先日、shopのバーゲンコーナーに3セットあって、これは付いている値段から50%offだったんですが、全部お値段が違う。売れないので値下げして、さらに下げて、それでも売れ残ったんですね(笑)ま、この値段なら・・・ということでいちばん安いものを買ったんですよ。

 やっぱり音質はよくない。演奏はこれといって特徴もなし。かなりカットがあって、まあカットがあるのはめずらしくもないのですが、第三幕なんてはじまったと思ったら、一気に端折ってブリュンヒルデが駆け込んできます(笑)


Rudolf Kempe, Orchester der Bayreuther Festspiele
Crespin, Uhl, Varnay, Hines, Resnik, Frick
Bayreuth, 1961
MYTO 3MCD975.164(CD)


 Kempe、Bayreuthの“Ring”は1960年の録音が全曲(4部作)disc化されていますが、1961年の録音はいまのところこの“Die Walkuere”のみ。

 Kempeの指揮は前年にくらべると、はるかに自信に満ちて安定していますね。F.Uhlのジークムントが、「冬の嵐は過ぎ去り」あたりで、フレーズの最後をやたらとソフトにディミヌエンドする、それがいちいちあまりにも徹底しているので、聴いていて笑ってしまいます(はじめは息が続かないのかと疑っちゃいましたよ・笑)。もっとも、ジークムントは前年のWindgassenも不調だったので、一長一短かも。第三幕のVarnay、Hinesはオーケストラの充実ぶりとも相俟って、なかなか感動的です。


Erich Leinsdorf, London Symphony Orchestra
Vickers, Brouwenstijn, Ward, London, Nilsson, Gorr
London, September 1961
RCA LDS-6706.1-5(LP), RCA LD-6706.1-5(LP), DECCA 289 470 443-2(CD)


 RCAのLP2組は「SORIA SERIES」、「LD」ナンバーはmono盤。

  1961年にウィーンでKarajanがHotter、Nilsson、Vickers、Gorrといった布陣で公演した際、RCAがレコーディングを計画したところ、DECCAの横槍が入って、RCAの録音は実現せず、DECCAの録音により指揮はLeinsdorfに、オーケストラはLSO、歌手もHotterがLondonに変わって、世界じゅうのファンが落胆したというdisc。当時DECCAはSolti指揮で“Ring”のレコーディングを開始、既に1958年に“Das Rheingold”を録音していたので妨害したんでしょうな。戦後から'60年代くらいまで、ウィーン・フィルは英DECCAの専属というか独占オケというか、大英帝国の植民地だったんですよ(おかげで経営はズイブン助かったはずだが)。

 しかしLeinsdorfの指揮はすばらしいものですね。歌手はとくにNilsson、Brouwenstijnがよくて、やや癖の強い歌唱ながらLondonも好演。Vickersも後のKarajanとの録音よりはまだしもまともな声です。


Georg Solti, Chorus and Orchestra of the Royal Opera house, Covent Garden
A.Vaelkki, C.Watson, H.Hotter, J.Vickers, M.Langdon, R.Gorr
London, 2.October 1961
Testament SBT4 1495(CD)


Edward Downes, Orchestra of the Royal Opera House Covent Garden
Bjoner, Kozub, Boehme, Dvorakova, Fliether, Veasey
London, October 3, 1967
GM1.0075(CD)


 このセット、CD3のTrack3、5分15秒の箇所に編集ミスがありまして、shopでも返金するとの張り紙があったんですが、修正されたものが発売されるという保証もないので、そのまま手許においてあります。うっかり返品すると「幻のdisc」になっちゃうかもしれませんからな(じっさい、修整されたものが発売された形跡はありません)・・・と、言うほどの演奏でもありません。機材の不調か、音ゆれも頻繁に発生していますし、それでも所有しているのは「資料」ですから(笑)


Thomas Schippers, NHK Symphony Orchestra
H.Dernesch, J.Thoma, G.Nienstedt, A.Silja, T.Adam, G.Hoffman
Osaka, 11.04.1967
ALTUS ALT491/3(CD)


Berislav Klobucar, Orchestra of the Metropolitan Opera
Nilsson, Rysanek, Ludwig, Vickers, Stewart, Ridderbusch
New York, February 24, 1968
SONY 88697 85308 2(CD)


 1968年でmono録音というのは残念ですが、録音は鮮明。ややマイク近め。Nilsson、Ludwig、Ridderbuschが充実。Vichers、Stewartがどうにも品格に欠けており、第一幕、第二幕の歌い出しがこのふたりですから、どうしても全曲盤としての印象は悪くなりますね。KlobucarはBayreuthにも出演したひとで、私も「エレクトラ」を生で聴いたことがあります。なかなかの実力派だと思いますが、ここでは手堅くまとめているものの、微温的でやや緩めのMetropolitanのオーケストラを引き締めるには至らず。管のソロなどはめいめい勝手に表情付けているよう。WalkuereたちのなかにGwendolyn Killebrew、Barbro Ericsonといった名前も見えます。


Herbert von Karajan, Orchestra of the Metropolitan Opera
Vickers, Crespin, Talvela, Adam, Nilsson
New York, 1.3.1969
ARKADIA CDKAR217.3(CD), Sony Classical 88985392322(31CD)


 オーケストラの響きはコンパクトにまとまっている印象です。といって、Karajanらしい室内楽的な精緻さに至っていないのは、やはりMetropolitanのオーケストラという、他流試合のためでしょうか。歌手はVickersがならず者のような声を出しているほかは問題ありませんが、AdamもNilssonも、ほかの―たとえばBoehm指揮のBayreuth録音の方が出来はいいと思います。ただしKarajanとNilssonの共演はめずらしいですね。リハーサルではいろいろあった模様で、おかげでNilssonは「Karajanのお気に入り」とはならなかったのです(笑)


Christoph von Dohnanyi, The Cleveland Orchestra
P.Elming, A.Marc, A.Muff, R.Hale, G.Schnaut, A.Silja
Severance Hall, Cleveland, November 1992
DECCA 440 371-2(CD)


 ”Das Rheigold”の項に書いたとおり、DECCAによるSolti盤以来ひさびさの”Ring”全曲録音計画でしたが、この”Die Walkuere”が出たところで頓挫したものです。


Zubin Mehta, Bayerisches Staatsorchester
Meier, Schnaut, Fujimura, Seiffert, Tomlinson, Rydl
Muenchen, Juli 2002
FARAO B 108 040(CD)


 Mehtaの指揮は、悪く言えばあっけらかんとゴージャスなサウンドをオーケストラから引き出しており、深い内容を感じさせるものではないものの、これはこれで水準以上の演奏です。このひとはあまり歳を経ても変わりませんね。リズムやフレージングの硬直化といった老化現象も見受けられないのはたいしたものです。歌手も概ね現代の水準以上です。


Sir Simon Rattle, Berliner Philharmoniker
Staged by Stephane Braunschweig
Gambill, Petrenko, White, Westbroek, Johansson
A Festival d'Aix-en-Provence, July 2007
BelAir BAC034(DVD)


 Rattleの指揮はこのWagnerに限らず明晰系なので、神秘性とか魔性のような要素はどうしてもスポイルされちゃいますね。そのあたりが好みを左右するかもしれません。個人的には、いわゆるWagnerの毒も含めてWagnerの魅力なので、好みとしては微妙なところです。それにしても、Rattleもすっかり大家? いや、現代のWagner演奏という意味では、Kent NaganoあたりがRattleのさらに先を行っているんじゃないかと思うんですよ。


Christian Thielemann, Orchester der Bayreuther Festspiele
Tankred Dorst, Botha, Dohmen, Haller, Watson
Bayreuth, 21.8.2010
OPUS ARTE OA BD7081(BD)


 C.ThielemannはかつてGoetz Friedrich率いるDeutschen Oper Berlinとともに来日して“Lohengrin”を指揮したときに二回聴いて、なんだかムカシの巨匠ふうの指揮をするひとだなと思ったもので、その印象は現在でもあまり変わりません。つまりRattleあたりとは対照的で、オーケストラに指揮棒に対する反応を俊敏にさせて、アタックを明晰にするよりも、棒を振り下ろしたところで音を出せて、わずかに厚みを持たせた響きとなるように図る・・・これは完全にそのとおりかどうか自信がないので、まあ比喩だと思ってもらってもかまいませんけどね。あと、アクセルとギアを駆使して進めてゆく、これは、よく言えば要所要所に濃厚な表情のアクセントをつけるということで、悪く言えば、関心のないところは素通りするということ。それが必ずしも音楽の重要度とは一致しているとは限らないんですね。


Christian Thielemann, Staatskapelle Dresden
Staged by Vera Nemirova
O.Seiffert, G.Zeppenfeld, V.Kowaljow, A.Harteros, A.Kampe, C.Mayer
Salzburg, 05-17.April 2017
C major 742904(BD)



Antonio Pappano, Orhcestra of the Royal Opera House
Director Keith Warber
N.Stemme, J.Lindgren, S.Skelton, E.Magee, S.Connolly, A.Anger
Royal opera house, Covent Garden, 18-28.10.2018
OPUS ARTE OABD7270D(BD)





(抜粋盤など)

Bruno Walter, Orchestre Philharmonique de Vienna
L.Lehmann, L.Melchior, E.List
Wien, 20-22 june 1935
Pathe Marconi(EMI) 2C 051-03023(LP), Toshiba TOCE-7761~74(CD)

 第一幕。CDは東芝EMIから出た「ブルーノ・ワルターの芸術(I)」のセット。このセットには次の第二幕の録音も収録されている。


Bruno Seidler-Winkler, Berlin State Opera Orchestra, Bruno Walter, Orchestre Philharmonique de Vienna
H.Hotter, M.Fuchs, M.Klose, L.Lehmenn, E.List, A.Jerger
June 1935, Sept 1938
Toshiba TOCE-7761~74(CD)

 第二幕。1938年にオーストリアがナチスに併合され、ユダヤ人排撃の影響で、一部録音されていたB.Walterによる演奏に、指揮者及び歌手が交代して収録したものを併せて完成させたもの。

 1945年に、皮肉にも敵国アメリカColumbiaでA.Rodzinskiによる第三幕が録音され、これで演奏者は混成ながら、”Die Walkuere”全曲録音が完成したことになり、愛好家を喜ばせたとか。



Wilhelm Furtwaengler, Orchestra e Coro della Royal Opera Covent Garden
K.Flagstad, M.Mueller, R.Bockelmann
London, 26.5.1937
MYTO 1MCD914.43(CD),CEDAR AB78512(CD)

 第三幕のlive録音。


Carl Leonhardt, Orchester des Reichssenders Stuttgart
R.Bockelmann, H.Jung, E.Schlueter, F.Krauss, M.Reining, J.von Manowarda
3.April 1938
PREISER 90207(CD)

 第二幕抜粋(不完全)、第三幕は全曲。CD2枚組。


Karl Elmendorff, Saechsische Staatskapelle
M.Lorenz, M.Techemacher, K.Boehme
21.September 1944
PREISER 90015(CD), Profil PH07048(CD)

 第一幕。Profil版はCD2枚組でその他の作品の断片も収録あり。


Arthur Rodzinski, Philharmonia-Symphony Orchestra of New York
H.Traubel, H.Janssen, E.Darcy,Vocal Ensemble of the Metropolitan Opera
New York, 5.1945
Columbia Set SL-105(LP)


 第三幕。「SL105」ナンバーの箱にVol,I、Vol.IIの2LPが入っている。6eyes。ブルーMASTERWORKSレーベル。


Arthur Rodzinski, New York Philharmonic Orchestra
H.Traubel, H.Janssen, Doris Dore
New York, 25/11/1945
ASdisc AS545(CD)


 第三幕。その他管弦楽曲の併録あり。


Georg Solti, Bayerisches Staatsorchester
M.Schech, F.Voelker, F.Dalberg
Muenchen, 1947
ORFEO S120842 1(LP)


 ORFEOから出た”Prinzregenten-Theater Muenchen Historische Mitschnitte 1947-1962”という表題の2枚組LP。1枚目が上記による第一幕の録音。ちなみに2枚目にはE.Kleiberによる「ばらの騎士」(20.07.1952)、K.Boehmによる「エレクトラ」(26.08.1955)、J.Keilberthによる「ドン・ジョヴァンニ」(14.08.1962)の一部。


Dimitri Mitropoulos, Orchestra of the Metropolitan Opera
M.Schech, R.Vinay, M.Harshaw, O.Edelmann, B.Thebom, H.Uhde, N.Scott
New York, ?
MO728(2LP)

 第一幕、二幕、三幕抜粋。ジャケットには”The Metropolitan Opera Record Club”と表記あり。1957年2月2日の公演の一部かと思っていたのですが、ワルキューレの歌手はすべて同一なれど、O.EdelmannとN.Scottのみ異なります。よって録音年はわかりません。


Herbert von Karajan, Festspieleorchester Bayreuth
L.Rysanek, S.Bjoerling, A.Varnay
Bayreuth, 12.August 1951
Columbia 33FCX111/112(LP), Columbia 33FCX111-112(LP), Electrola 1C181-030 35/36(LP)


 第三幕のみ。昔から有名なレコードです。仏Columbia盤は2LPバラと2LPがひとつのジャケットに入っているものと2種持っています。Electrola盤はもちろん、ずっと後の再発盤。私はこの演奏が結構好きで、ときどき聴いています。


Hans Schmidt-Isserstedt, Orchestra
S.Svanholm, J.Greindl, B.nilsson
Hamburg, 1953
BellaVoce BLV107.010(CD)


 第一幕。オーケストラ名の記載もありません。私は持っていないのですが、かつてHistorical Recording Enterprises HRE347-1というLPレコードで出ており、その際は1955年Hamburg Radioと表記されていました。


Charles Munch, Boston Symphony
M.Harshaw, A.Da Costa, J.Pease
Tanglewood Festival, 21/July/1956
MEMORIES MR2292


 第一幕。


Georg Solti, The Vieena Philharmonic Orchestra
K.Flagstad, O.Edelmann, S.Svanholm
Wien, 5.1957
LONDON OSA1203(LP)


 第三幕全曲と第二幕から「死の告知」の場面。英プレスのLONDON盤は箱入りのいわゆるBB盤で、EQカーヴはRIAAとの表示あり。

 DECCAがFlagstadを獲得するために行った録音。時にFlagstad61歳。


Hans Knappertsbusch, The Vienna Philharmonic Orchestra
K.Flagstad, S.Svanholm, A.van Mill
Wien, 28-30.10.1957
LONDON OSA1204(LP), Ace of Diamonds GOS581-2(LP)


 第一幕のセッション録音。たいへん良質なstereo録音。上記はいずれも英プレスで2枚組、カップリングは「夜明けとジークフリートラインの旅」「ジークフリートの葬送行進曲」。

 audio評論家がときどきアナログ機器の試聴盤に使っていますね。幕切れの音楽など、Furtwaenglerの畳みかけるような勢いとは真逆で、くらべてみると面白いですよ。


Hans Knappertsbusch, The Vienna Philharmonic Orchestra
C.Watson, F.Uhl, J.Greindl
Wien, 21.5.1963
Seven Seas KICC2406(CD), TDK TDBA-0017(DVD)

 演奏会形式による第一幕。ウィーン芸術週間初日のlive録音。CDにはMusikvereinsaalでの録音とあるが、映像で観ればわかるとおり、Theater an der Wienが正しい。


Otto Klemperer, New Philharmonia Orchestra
H.Dernesch, W.Cohan, H.Sotin, N.Bailey
London, 22-24.30-31.10., 6.11. 1969, 26-27.10.1970
Electrola 1C 193-02 222/23(LP), EMI 2C 167 02 222/23(LP)

 独プレス盤と仏プレス盤を持っています。

 第一幕と「ヴォータンの告別」を収録。一説によると”Ring”全曲録音を計画したものの、Klempererの逝去により上記のみの録音に終わったものとのこと。ちなみに1970年の「ヴォータンの告別」はKlemperer最後の録音。



Klaus Tennstedt, London Philhermonic Orchestra
R.Kollo, E-M.Bundschuh, J.Tomlinson
London, 7,10. 10.1991
LPO-0092(CD)

 第一幕。


Franz Welser-Moest, Orchester der Wiener Staatsoper
N.Stemme, J.Botha, A.Anger
Wien, 2.Dezember 2007
ORFEO C 875 131 B(CD)

 第一幕。


Christian Thielemann, Staatskapelle Dresden
A.Kampe, S.Gould, R.Pape
Osterfestspiele Saizburg 2021, 31.Oktober 2021
Profil PH22038(CD)

 第一幕。CD2枚組で”Goetterdaemmerung”の抜粋も収録あり。



(Hoffmann)