067 マルシュナー 歌劇「吸血鬼」 ハインリヒ・アウグスト・マルシュナー Heinrich August Marschner は1795年生まれのドイツ・ロマン派の作曲家です。ドレスデンとライプツィヒの楽長、ハノーファー宮廷楽団の指揮者を務めた人。 最初の歌劇作品「アンリ4世とドービニェ」"Heinrich IV und d'Aubigne"は、ウェーバーの指揮により1820年にドレスデンで初演されました。翌年にはドレスデンに移り、1824年から同地の歌劇場の音楽監督に就任。1825年にはオペラ「木材泥棒」"Der Holzdieb"を初演。1827年からはライプツィヒ歌劇場の指揮者となって、ここで1828年に「吸血鬼」"Der Vampyr"を初演しています。 1831年にハノーファー宮廷歌劇場の楽長に就任した後に作曲されたのが「ハンス・ハイリング」"Hans Heiling"です。これで大成功したものの、時代の流れは容赦がありませんな、やがてジャコモ・マイアベーアや、リヒャルト・ワーグナーの登場によって徐々に忘れられてゆくことに。1861年にハノーファーにて逝去。 それでも存命中は、メンデルスゾーンやシューマン、ワーグナーなどから高い評価を受けていたんですよ。とくにワーグナー作品にはマルシュナーの影響がかなり明瞭に聴き取れるものもあります。 Heinrich August Marschner 歌劇「吸血鬼」"Der Vampyr” ジョン・ポリドリ John Polodori の小説「吸血鬼」"The Vampyre"をフランスの作家、シャルル・ノディエ Charles Nodier 、ピエール・カルムーシュ Pierre Carmouche 、アシル・ド・ジュフレイ Achille de Jouffray の3人が芝居にして、さらにこれをリッターL.Ritterがドイツ語訳したものを原作として、ヴィルヘルム・アウグスト・ヴォールブリュック Wilhelm August Wohlbrueck が台本を作成。作曲は1827~28年、初演は1828年3月29日、ランプツィヒの国立劇場。 あらすじは、ルートフェン卿は、彼がが死者から蘇って吸血鬼となっていることに気付いた友人オーブリーに、明日の深夜まで黙っていることを誓わせる。しかしルートフェン卿がオーブリーの恋人を奪い、いざ婚礼というときに真夜中の鐘が鳴り、オーブリーはルートフェン卿が吸血鬼であることを明かして、吸血鬼は炎となって消えてしまう、というもの。 歌劇場のレパートリーから消えてしまったのが不思議なくらい、まさしくロマン主義オペラの名作。ウェーバー以上に、ワーグナーに影響を与えた作品だと思われます。ラストはハッピーエンドですが、そこに至るまで、魅力的なナンバーが並んでいます。 Kurt Tenner, Grosses Wiener Rundfunkorchester , Tonkuenstlerchor L.Heppe, L.Synek, F.Sperlbauer 1951 Urania URN22.193(2CD) ナレーション入りで進行することから、放送用録音が音源ではないかと思われます。Uraniaが原盤だとすれば、放送局から権利を買ったものでしょうか。この指揮者については知らず、録音も古いmono録音ですが鑑賞に差し支えることはなく、演奏はなかなか立派なものです。 Hans Haug, Chorus and Orchestra of the Radio Bern G.Fehr, C.Owen, B.Manazza, E.Gutstein, C.Gilling, N.Clavel 1963 MRF-70-S(4LP) 4枚組LPのprivate盤。Joseph Keilberthの”Hans Heiling”とのカップリングで、第1面から第5面Band1までが”Vampyr”。〈stereo〉と表示あり。 Fritz Rieger ; Bavarian Radio Symphony Orchestra & Chorus N.Hillebrand, A.Auger, D.Grobe 1974 GERMAN OPERA RARITIES O7710-11(2CD) デザイン違いのものを見たことがあるので、別レーベルからも出ているかもしれません。脇役にはA.T-Sintow、K.Boehmeの名前もあります。録音は冒頭、機器の調子が悪いようです。 演奏は悪くありません。 Guenter Neuhold, Orchestra Sinfonica e Coro di Roma della Radiotelevisione Italiana M.Egel, C.Farley, J.Protschka, J.Nimsgern 26 gennaio 1980 FONIT CETRA LMA3005 (3LP), Hommage 7001834(2CD), WARNER FONIT 8573 84436-2(2CD) イタリアのオーケストラながらなかなかいい響きを聴かせる、すぐれた演奏です。指揮者も実力派で、歌手もわりあいよく揃っています。FONIT CETRAのレコードは、私が最初にこの作品に接した盤なので、演奏が良かったおかげで作品の魅力に気付くことができたわけで、運が良かったですね。結局いまでも、「吸血鬼」を聴こうというときには、これを取り出すことが多いですね。 Helmuth Froschauer, WDR Rundfunkchor Koeln, WDR Rundfunkorchester Koeln F.Hawlata, J.Kaufmann, R.Klepper, A.Hoffmann, M.Marwuardt, T.Dewald 9-20.8.1999 CAPRICCIO 60083(2CD) 新録音は歓迎したいのですが、指揮、オーケストラがいまひとつ冴えません。歌手はこの作品を鑑賞するには問題のないレベルです。 (Hoffmann) |