070 ビゼー 附随音楽「アルルの女」のレコードから ビゼーの「アルルの女」"L'Arlesienne"は、もともとアルフォンス・ドーデーの戯曲のために作曲された全27曲の附随音楽です。一般には第1組曲と第2組曲で知られていますね。 第1組曲はビゼー自身が通常オーケストラ向けに編成を拡大して組曲としたものです。 第1曲「前奏曲」 劇音楽No.1 序曲から。3部構成。第1部の主旋律は、プロヴァンス民謡「3人の王の行列」に基づくもの。これを3回変奏。第2部のアルト・サクソフォーンによる旋律は、主人公フレデリの弟の知的障害をあらわす動機によるもの。第3部は、フレデリの恋の悩みをあらわすもの。 第2曲「メヌエット」 劇音楽No.17 間奏曲から。 第3曲「アダージェット」 劇音楽No.19 メロドラマの中間部から。 第4曲「カリヨン(鐘)」 劇音楽No.18 導入曲およびNo.19 メロドラマ前部と後部から。ビゼーは「アダージェット」に使わなかった部分を中間部に置く三部形式に構成し直しています。 第2組曲は、ビゼーの死後の1879年に、友人エルネスト・ギローの手により完成されたもの。ギローは「アルルの女」以外の楽曲も加えて第1組曲とほぼ同じオーケストラ編成で編曲しています。 第1曲「パストラール」 劇音楽No.7 導入曲および合唱から。もともと二部に分かれていた曲を、ギローは三部形式に構成し直しています。 第2曲「間奏曲」 劇音楽No.15 導入曲から。中間部のアルト・サクソフォーンによる魅力的な旋律は、歌詞を付けて「神の子羊」という表題で歌われることもありますが、私はこれを歌にしたものは甘ったるくて好きではありません。 第3曲「メヌエット」 ビゼーの「美しきパースの娘」からギローが転用・編曲したもの。 第4曲「ファランドール」 劇音楽No.21 ファランドールなどからギローが構成したもの。プロヴァンス民謡「3人の王の行列」に基づく旋律とファランドールが組み合わせ、最後は同時進行でクライマックスを築いています。「ファランドール」の旋律は、民謡「馬のダンス」に基づくもの。 さて、この組曲版ならもっとも好きなのはこのレコードです― ビゼー:「アルルの女」第1組曲、第2組曲、「カルメン」組曲 アンドレ・クリュイタンス指揮 パリ音楽院管弦楽団 パリ、サル・ワグラム、1964年1月13,15,21日 独Columbia SMC80918(LP) 言わずと知れた、ベルギー生まれのフランス系指揮者、アンドレ・クリュイタンスがパリ音楽院管弦楽団を指揮して録音したレコード。参考までに、「カルメン」組曲は第1幕への前奏曲、第2幕への間奏曲、第3幕への間奏曲、第4幕への間奏曲の4曲です。 ここでは独Columbia盤の番号を記載しておきましたが、中古店などで見つけるたびに買ってしまうので、独Electrola盤や英EMIのmono盤、仏Columbiaのmono original盤、東芝から出た国内盤に、比較的最近の復刻盤など、なかには同じものを複数枚所有しているものもあります。たしか、国内盤だけでも10枚くらいあるはず(笑)英プレスのstereo盤だけはなかなか見つかりませんが、見つかったところで、高くて買えませんね、タブン(笑) このレコードについてはあまり語ることもありません。とにかく、機会があったら聴いてみて下さい。ほかにも同曲のレコードは持っていますが、組曲盤に関しては、私はこのクリュイタンス盤があれば十分です。 それでもあえてもうひとつ挙げるとすれば、クリュイタンスの旧録音ということになります。 ビゼー:「アルルの女」第1組曲、第2組曲、「美しいパースの娘」組曲 アンドレ・クリュイタンス指揮 フランス国立放送管弦楽団 シャンゼリゼ劇場、1953年10月 仏Pathe 33DTX145(LP) 一応フランス初出のoriginal盤です。第二版の厚手ボードの棒付き(DTX145)、そのほか東芝から出た国内盤なども複数枚所有しています。参考までに申し上げると、上記Pathe盤のEQカーヴはRIAAではなく、Columbiaのようです。 クリュイタンスの指揮は、後のパリ音楽院管弦楽団との録音とくらべると、表情付けがやや淡白かなとも思いますが、これはこれで愉しめるレコードです。国内盤(HA5077)にはサクソフォーンがM・ミュール、フルートがF・デュフレーヌ。ハープがE・カロヴァンと表記されています。 Andre Cluytens できれば組曲版ではなくて、オリジナルの附随音楽「アルルの女」を聴きたいよ、という人はこちらのレコードを― ビゼー:劇音楽「アルルの女」 Op.23 全曲 第1幕 1 前奏曲 2 3つのメロドラマ 3 合唱とメロドラマ~メロドラマと合唱のフィナーレ 第2幕 4 田園曲(間奏曲と合唱) 5 3つのメロドラマ 6 合唱~2つのメロドラマ~フィナーレ(合唱) 第3幕 7 メロドラマ~フィナーレ 第4幕 8 間奏曲(テンポ・ディ・メヌエット)~カリヨン 9 メロドラマ 10 メロドラマ~フィナーレ(合唱) 第5幕 11 間奏曲と合唱~2つのメロドラマ~フィナーレ ジャック・ヌールディン(サクソフォン:7)、オルフェオン・ドノスティアラ(合唱:3,4,6,10,11) ミシェル・プラッソン指揮 トゥールーズ・キャピトール国立管弦楽団 トゥールーズ、アル=オー=グラン、1985年7月3-25日 Pathe Marconi 2703501PM375(LP) 一応レコードで出たときも、現行のCDでも、「全曲」とされており、数え方によってはたしかに27曲になるんですが・・・すみません、これでホントに「全曲」なのかどうか、確信が持てません。 ただし、演奏はいいですよ。プラッソンらしくあくまで美しく、上品に傾きます。クリュイタンス盤ほどスケールが大きくないのは、原典版(小編成の附随音楽版)であれば当然のこと。これを聴いて思うのは、組曲版、とくにギローの編んだ第2組曲はビゼーの音楽をことさらに劇的にしてしまっているということです。なお、プラッソンは組曲版(第1番だけ?)も別に録音しているので、入手される際にはお間違いのないように―。 Michel Plasson さて、9人の俳優を起用して、ドーデーの戯曲「アルルの女」を効果音入りで、初演当時のスタイルで再現した全曲盤があります。 アルフォンス・ドーデ作:戯曲「アルルの女」(付随音楽作曲:ビゼー) アルベール・ヴォルフ指揮 管弦楽団、合唱団(俳優名は省略) 1955年 英DECCA LXT5229, LXT5230(2LPバラ) 1955年録音で、その年のフランスアカデミー・ディスクグランプリを獲得したレコードです。EQカーヴはDECCAffrr。 これも初出のoriginal盤。おそらく初の全曲録音・・・と言いたいんですが、ギロー版の「ファランドール」が演奏されており、厳密に言うと附随音楽の完全版ではありません。ただしオーケストラ名は不詳なれど、原典どおりの小編成のようです。この録音はCDでも見かけたことがあります。たしかフランスのAccordじゃなかったかな。 Aarbert Wolff (Hoffmann) |