081 ベルリオーズ 劇的交響曲「ロメオとジュリエット」 手持ちのdiscです。録音年順ではありません。 小澤征爾指揮 ボストン交響楽団 ニュー・イングランド音楽院合唱団 ユリア・ハマリ(ソプラノ) ジャン・デュピュイ(テノール) ジョゼ・ファン・ダム(バス-バリトン) 1975. DG 2707 089 (2LP) この作品をはじめて聴いたのはTVで放送されたマゼール指揮フランス国立放送管弦楽団(ORTF)の来日公演でした。たしかマゼールはこの年二度来日、クリーヴランド管弦楽団と来日して、数か月後に今度はORTFと来日したのであったはず。 「ファウストの劫罰」もさることながら、「ロメオとジュリエット」を声楽付きの音楽にするのに、ロメオ役もジュリエット役もなし、役柄があるのはバスの歌手だけでロランス神父役、というのに驚いたもの。やっぱり「ベルリオーズは天才だ」(笑)これを聴いて買ってきたのが小澤盤。当時はこれで満足していたが・・・。 リッカルド・ムーティ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 ウェストミンスター合唱団 ジェシー・ノーマン(ソプラノ) ジョン・エイラー(テノール) サイモン・エステス(バス) 1984. EMI 2704 453 (2LP)、EMI CDS7474378(2CD) LPは仏EMIだがDMM盤なので独プレス。ちなみにCDは海外盤だが、discの製造はJapan。 入手した当時は、このレコードがあまり好きではなかった。ちょうどその頃、ムーティがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮した同曲の管弦楽組曲版の演奏がFMで放送されたのを聴いたためもあり、それとくらべると、どうもフィラデルフィア管弦楽団の音色に魅力が感じられなかったため。これならフィルハーモニア管弦楽団と録音してくれればよかったに・・・と。しかし長年聴いているうちに、だんだん好きになってきたんですよ(笑)録音もなかなかいい。惜しいのは歌手が私の好みではないこと。 コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団 ジョン・オールディス合唱団 パトリシア・カーン(アルト) ロバート・ティアー(テノール) ジョン・シャーリー=カーク(バス) ロンドン、1968.04. PHILIPS 6747 271(5LP) コリン・デイヴィスによる"Berlioz The Symphony Works"という5枚組LPのSide7-10。 フォルムが整った、節度を保った演奏・・・と言っても古典主義的な演奏ではない。かなりロマンティックで、どうもフレーズが詠嘆調に傾き、若干恣意的に感じられる。ちょっと不思議な演奏。 ズデニェク・コシュラー指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 同合唱団 Marie Mrazova (alt) Frantisek Livora (tenor) Richard Novak (bass) 5.-15. 4.1978 SUPRAPHON 1122841-42ZA (2LP) オーケストラの実力が追いつかない印象。歌手もこれといって美点があるわけでもない。合唱団もフランス語の発音に難あり。いまは所有していないが、エリアフ・インバルのベルリオーズ録音も合唱団に問題があった。コシュラーは好きな指揮者だけに、残念。 シルヴァン・カンブルラン指揮 SWR南西ドイツ放送交響楽団 ヨーロッパ・コールアカデミー ナディーヌ・ドゥニーズ(メゾ・ソプラノ) ピョートル・ベチャワ(テノール) ペーター・リカ(バス) フライブルク、28.-30.05.1998 haenssler CLASSIC CD93.005 (2CD) メシアンの"L'Ascension"(「キリストの昇天」)を併録。メシアンの録音は13.-15.09.1999。 さすがに上手い。例によって速めのテンポで颯爽としつつ小回りの利いたスタイリッシュな指揮。オーケストラ部分の聴き応えは十分。スタイリッシュなんて言うと、カラヤンを連想する人がいるかも知れないが、響きが濁るようなことはない。「愛の場景」などはきわめて叙情的で美しく透明。響きの作り方についてはかなり知的なコントロールを感じさせる(つまり奏法)。カラヤンとは正反対。歌手も上質。 ジョン・エリオット・ガーディナー指揮 オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク モンテヴェルディ合唱団 キャサリン・ロビン(メゾ・ソプラノ) ジャン=ポール・フシェクール(テノール) ジル・カシュマイユ(バリトン) ロンドン、ワトフォード、1995. PHILIPS 454454-2(2CD) 1839年にパリで初演された際のオリジナル版と、7年後の1846年にプラハで演奏した改訂版のふたつのヴァージョンがあり、一般的には最終稿である改訂版で演奏されるが、ここでは追補として、オリジナル版からの音楽も収めているほか、未完で残された第2プロローグをオリヴァー・ナッセンの編曲で収録している。古楽器オーケストラ「オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク」を振った、ピリオド・スタイルによる演奏。 透明で美しく、しかし脱脂されたようなさっぱり感はなくて、たしかに「劇的」。あまり古楽器オーケストラであることを際立たせてはいないが、それがむしろ好ましい。歌手も3人ともにすぐれている。とくにはじめの方でのキャサリン・ロビンの声が印象的で、合唱団も見事。「ファウストの劫罰」のdiscを聴いていても感じたことだが、ベルリオーズの演奏は1990年代あたりから、ずいぶん変わった。 以下は抜粋盤と管弦楽組曲版― ベルリオーズ:「ファウストの劫罰」から ベルリオーズ:「ロメオとジュリエット」から アンドレ・クリュイタンス指揮 フランス国立歌劇場管弦楽団 パリ、1956.10. 仏Columbia FCX559 (LP)、英Columbia 33CX1544 (LP)、米Angel ANG.35431 (LP) 「ファウストの劫罰」はハンガリー行進曲、妖精の踊り、鬼火のメヌエットの3曲。「ロメオとジュリエット」はTristesse, Cocert Bal, Grande Fete Chez Capulet, Scene D'Amour, Scherzo de la Reine Mab。 これもまた、全曲録音でないのが残念。全曲通して演奏したら、どんな設計になったのか、たいへん興味深い。 ベルリオーズ:劇的交響曲「ロメオとジュリエット」抜萃 レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック 1 ロメオ一人、哀しみ~遠くから聞こえてくる音楽会と舞踏会~キャピュレット家の饗宴 2 愛の情景 3 マブ女王のスケルツォ ニューヨーク、30丁目スタジオ、1959.10.26. 日コロムビア OS-103 (LP) 「ローマの謝肉祭」序曲を併録。 意外と整っていて、ガチャガチャしていない(笑)バーンスタインとニューヨーク・フィルハーモニックのレコードは、オーケストラの機能に関しては初期の方がいい・・・というのは、つまりこのオーケストラはバーンスタインの下で、アンサンブルなど上手くはならなかったということ。 ベルリオーズ:劇的交響曲「ロメオとジュリエット」抜萃 カルロ・マリア・ジュリーニ指揮 シカゴ交響楽団 シカゴ、メディナ・テンプル、1969.10. EMI ASD2606 (LP) いわゆる管弦楽のみによる組曲版。 ジュリーニのベルリオーズとは意外ながら、近頃の演奏が20世紀音楽に近づいているのに対して、いかにもなロマン主義音楽になっている。キレとコクのバランスがいいというか、響きが派手にならずに血が通っている印象。もうこのような演奏を聴くことはできないだろうと思われる。 ベルリオーズ:劇的交響曲「ロメオとジュリエット」op.17より ・ロメオ独り (Romeo allein) ・愛の場面 (Liebesszene) レナード・バーンスタイン指揮 シュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭管弦楽団 シュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭、1989. live DREAMLIFE DLVC-1222 (DVD) 北ドイツの夏の風物詩、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭でのバーンスタインによる、若い演奏家によるオーケストラへの公開リハーサルとコンサート。 このほか、かつてレコードを持っていたのはミュンシュ、モントゥー、マゼール、ランベルト・ガルデルリ盤など。ミュンシュはあまりに一本調子、モントゥーはなぜか大曲のレコーディングになるとオーケストラに恵まれず、マゼールは響きが痩せていて、ガルデルリはノリが悪いというか、フレーズごとにいちいち「ヨッコラショ」と聴こえる。 (Hoffmann) |