116 “レ・ミュジシャン”のレコード SP期からフランスで活躍したパスキエ3兄弟による元祖パスキエ・トリオのヴィオラ担当のピエール・パスキエの2人の息子、レジスRegis PasquierとブリュノBruno Pasquierにチェロのローラン・ピドゥーRoland Pidouxが加わって結成されたのが新パスキエ・トリオ。 この新パスキエ・トリオのRegis Pasquier、Bruno Pasquier、Roland Pidouxが中心となって結成されたのがレ・ミュジシャン"Les Musiciens"です。具体的にはクラリネットのMichel Portal、ピアノのJean-Claude Pennetier、ヴァイオリンのRoland Daugareilを加えた6人のこと。 室内楽を演奏するための、純フランス人メンバーによる団体で、おそらくレパートリーを増やすため、新パスキエ・トリオを室内楽団体へと発展させたものと思われます。当初新パスキエ・トリオの3人にヴァイオリンにロランド・ドガレイユ、ピアノのジャン・クロード・ペヌティエを加えた5人でスタートし、後にクラリネットのミシェル・ポルタルも加えて6人となったらしい。これによって、弦楽四重奏曲、ピアノ四重奏曲クラリネット五重奏曲なども演奏可能となったわけです。 ブラームス:弦楽六重奏曲第1番 Regis Pasquer、Raphael Oleg (violon) Bruno Pasquer、Jean Dupouy (alt) Roland Pidoux、Etienne Peclard (violoncelle) avril 1981 harmonia mundi FRANCE HM1073 (LP) ブラームス:ピアノ三重奏曲全集 opus8、87、101 Jean-Claude Pennetier (piano) Regis Pasquer (violon) Roland Pidoux (violoncelle) october 1980 harmonia mundi FRANCE HM1063/64 (2LP) ブラームス:ピアノ四重奏曲 op.25 Jean-Claude Pennetier (piano) Regis Pasquer (violon) Bruno Pasquer (alt) Roland Pidoux (violoncelle) september 1980 harmonia mundi FRANCE HM1062 (LP) ブラームス:ヴィオラ・ソナタ op.120 No.1、No.2 Bruno Pasquer (piano) Jean-Claude Pennetier (piano) fevrier 1982 harmonia mundi FRANCE HM1092 (LP) ピアノ三重奏曲全集のみ、独プレス。 このなかでは、とくに弦楽六重奏曲がすばらしい。とくに第一ヴァイオリンが主導しているといった印象もなく、理想的なアンサンブルが見事。洗練された響きも美しい。ピアノ三重奏曲もとくに第1番での若々しい息吹にふさわしいデリカシー。ピアノ四重奏曲のみ、どうも練り上げが足りないといった印象。ヴィオラ・ソナタのブリュノ・パスキエもいいが、ややピアノ主張が強いかなと感じる。 なお、ミシェル・ポルタルはジョルジュ・プルーデルマッハーGeorges Pludermacher(プルデルマシェール)とクラリネット・ソナタop.120を録音しており、録音年は分からないんですが、harmonia mundi FRANCEのLP、B904のジャケットにはマルP1977とあるので、上記レ・ミュジシャンのレコード録音よりも前です。プルーデルマッハーのピアノがペヌティエに劣らずすばらしいものであることは特筆しておきたいですね。 また、ブリュノ・パスキエも2001年にJean-Bernard Pommierジャン=ベルナール・ポミエのピアノでヴィオラ・ソナタを再録音しています。CDはGega GM702で、シューマンの「おとぎの絵本」op.113がカップリングされています。こちらのdiscもいいですよ。 シューベルト:ピアノ三重奏曲 opus99、opus100 Jean-Claude Pennetier (piano) Regis Pasquer (violon) Roland Pidoux (violoncelle) fevrier et avril 1980 harmonia mundi FRANCE HM1047/48 (2LP) シューベルト:弦楽三重奏曲第2番 D.581、第1番 D.471 同:アルペジオーネ・ソナタ D.821 Regis Pasquer (violon) Bruno Pasquer (alt) Roland Pidoux (violoncelle) Jean-Claude Pennetier (piano) fevrier 1980 harmonia mundi FRANCE HM1035 (LP) シューベルト演奏としては個性的かもしれないが、これもまた楽曲の一面。生き生きとした表情はブラームス以上。ローラン・ピドゥーのアルペジオーネ・ソナタは往年の大家による演奏よりも楽曲にふさわしいのでは? モーツアルト:クラリネット五重奏曲 K.581 同:クラリネット三重奏曲 K.498 Michel Poltal (clarinette) Regis Pasquer Roland Daugareil (violon) Bruno Pasquer (alt) Roland Pidoux (violoncelle) mars 1983 harmonia mundi FRANCE HM1118 (LP) モーツアルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 Regis Pasquer (violon) Bruno Pasquer (alt) 10 et 11 avril 1980 harmonia mundi FRANCE HM1052 (LP) 室内楽アンサンブルの妙。だれがリードしているとか、だれがサポートしているかといったことを感じさせない。エレガントということばが思い浮かぶ、限りなく上品。パスキエ兄弟はいずれ劣らず、心地よい愉悦感。 ショーソン:ピアノ三重奏曲 op.3 同:ピアノとチェロのための小品 op.39 Regis Pasquer (violon) Roland Pidoux (violoncelle) Jean-Claude Pennetier (piano) decembre 1982 harmonia mundi FRANCE HMC1115 (LP) ショーソン:ピアノ四重奏曲 Jean-Claude Pennetier (piano) Regis Pasquer (violon) Bruno Pasquer (alt) Roland Pidoux (violoncelle) decembre 1982 harmonia mundi FRANCE HM1116 (LP) ショーソン:協奏曲(ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための) op.21 Regis Pasquer (violon) Jean-Claude Pennetier (piano) Roland Daugareil & Genevieve Simonot (violon) Bruno Pasquer (alt) Roland Pidoux (violoncelle) novembre 1983 harmonia mundi FRANCE HMC1135 (LP) ショーソンの作品は、この団体(グループ)が演奏するのにもっともふさわしいかと思われる。繊細だが芯があって毅然とした表現。シューベルトあたりのintimateな味わいとはまた違ったもの。 さすがharmonia mundi FRANCE、1980年代録音ですがデジタルではなく、音質もすぐれたもの。 (おまけ) 上記のレコード・ジャケットを飾っている絵からいくつか― 仏盤なので"Nuit d'ete"とありますが、Winslow Homerの"Summer Night"。 おなじみCasper David Friedrichの"Der Monch am Meer"と"Gebirgslandschaft mit Regenbogen"。 同じくCasper David Friedrichの"Frau am Fenster"。以前、ここでもupしましたね。モデルは新婚当時の妻カロリーネ。 ピアノ三重奏曲の箱がこれ―若きブラームスのportrate。ブラームスというといかにも大家然としたヒゲもじゃの写真ばかりが使われますが、若い頃の作品のdiscはこちらの絵で飾りなさいといいたいですね。 レコード(LP)を再生した装置について書いておきます。 今回はすべて新しめのstereo盤なので、カートリッジはB&O MMC1、MUTECH RM-KAGAYAKI 《耀》などを使用、スピーカーはSpendorのブックシェルフ、その他古めのB&Wなどで聴きました。アンプは往年のMeridianです。 (Hoffmann) |