117 フルトヴェングラーのレコード その3 ユニコーン盤




 フルトヴェングラーの英ユニコーン盤について、整理しておきます。

 とりあえず、英UNICORNによるフルトヴェングラーのレコードをリストにしてみると―

 UNI(UNIC)規格

UNI 100/101 ベートーヴェン:交響曲第9番、ブラームス:ハイドン変奏曲

UNI 102 ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 エドウィン・フィッシャー

UNI 103 ベートーヴェン:交響曲第4番

UNI 104 ベートーヴェン:交響曲第3番

UNI 105 シューベルト:交響曲第9番(発売中止)

UNI 106 ベートーヴェン:交響曲第5番、ピアノ協奏曲第4番 コンラート・ハンゼン

UNI 107 シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ゲオルク・クーレンカンプ

UNI 108 欠番

UNI 109/110 ブルックナー:交響曲第8番

UNI 111 フランク:交響曲(発売中止)



 
WFS規格

WFS 1 ブラームス:交響曲第4番 ベルリン・フィル1948年
  同:ハンガリー舞曲3曲

WFS 2/3 ワーグナー:管弦楽曲集

WFS 4 ブラームス:交響曲第3番 バルリン・フィル1948

WFS 5 ベートーヴェン:交響曲第8番、「レオノーレ」序曲第3番

WFS 6 ブラームス:交響曲第1番 ウィーン・フィル1947

WFS 7 チャイコフスキー:交響曲第4番、弦楽セレナーデから2曲

WFS 8 ベートーヴェン:交響曲第7番 ベルリン・フィル1943

WFS 9 ベートーヴェン:交響曲第6番 ウィーン・フィル1952

WFS 10 モーツアルト:セレナーデ第10番

WFS 11 モーツアルト:ピアノ協奏曲第20番 イヴォンヌ・ルフェビュール
  ハイドン:交響曲第94番

WFS 12 (欠番)

WFS 13 (欠番)

WFS 14 (欠番)

WFS 15 (欠番)

WFS 16 ベートーヴェン:交響曲第1番(未発売)

WFS 17/18 ブラームス:ドイツ語によるレクイエム


 ―以上のとおりとなります。

 フルトヴェングラーのユニコーン盤に関しては、平林直哉の「フルトヴェングラーを追って」(青弓社)に、英ユニコーンの創設者ジョン・ゴールドスミスに質問して得られた回答などの情報がありましたので、これをもとにまとめてみると―

a 音源はソ連のメロディアのLP、つまり「板起こし」である。

b ベートーヴェンの交響曲第3番(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、1944年)とブルックナーの交響曲第8番(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、1944年)はフルトヴェングラー夫人から提供を受けた2本のテープが音源。

c 当時メロディアから出ていないが、UNI107で出たシベリウスのヴァイオリン協奏曲の音源をどこから入手したかについては、はっきりとした記憶がない。


 以上がゴールドスミスの回答から判明したこと。

 以下は平林直哉の記述から―

d 「UNI」と「UNIC」の違いは、前者がイギリス国内向け、後者が輸出用とされるが、はっきりした区別は不明。「UNIC」が最初で「UNI」が後、というもの根拠がない。

 つまり「UNI」と「UNIC」の違いがなにを意味するのかは不明ということ。

e 「WFS」規格はイギリス・フルトヴェングラー協会との提携。ベートーヴェンの7番はメロディア音源だが、それ以外は大半がEMI音源。ユニコーンがEMIの傘下に入って、EMIの音源を出す意味がなくなったために、結果として番号が歯抜けになったのであろうと思われる。

 たしかに、私もWFS規格のLPは「1」、「4」、「6」、「10」、「11」、「17/18」を所有していますが、いずれもジャケットに"re-issued by arrangement with EMI Ltd."または"Issued arrangement with EMI Ltd."との表記があります。なので、この推測は妥当かと思われます。なお、このシリーズで私が持っている盤に関しては、レーベルはすべて白地に赤文字一角獣。


 なお、「UNI」及び「UNIC」規格で私が所有しているのは以下の盤―

 まず、白地に文字ジャケット―

UNI 104 水色一角獣。2枚持っています。

 これはフルトヴェングラー未亡人提供のテープによるものですが、有名な「裏庭の英雄」・・・じゃなくて「ウラニアの英雄」と同じ演奏の別音源ということになります。つまり、このレコードは未亡人所有のテープによる初出盤。音質はほかの盤よりもいいんですが、若干ピッチが高いようで、私はこの盤を聴くときは、ターンテーブルの回転速度を多少遅めに調整しています。

UNI 106 水色一角獣。

UNI 107 水色一角獣。

 次に、絵柄のジャケット―

UNI 107 赤一角獣。ジャケットはEdvard Munch。

UNI 109/110 水色一角獣。ジャケットはOskar Kokoschka。Wジャケット。

 このブルックナーもフルトヴェングラー未亡人提供のテープによるもので、初回UNICスタンパーですから、1969年初リリースのoriginal盤であるということになります。

 写真ジャケット―

UNI 100/101 赤一角獣。Wジャケットではなくシングルジャケットに2LP入り。


 次にUNIC規格盤。これは日本楽器による輸入盤で、すべて黒ジャケットです。

UNIC-100/101 レーベルは深緑。

UNIC-102 深緑。

UNIC-107 深緑。

 またまたクーレンカンプのシベリウスですが、この深緑レーベルは音がいいので有名な盤です。たしかに、ほかの盤よりも生々しい。


Wilhelm Furtwaengler

 「なんでいまさらユニコーン盤nano?」と思われましたか? たしかに、ソ連(ロシア)からのtape返還後、ユニコーン盤を含む少なからぬレコードについて、「役目を終えた」「商品価値がない」とする人がいます。私もフルトヴェングラーに特段の思い入れがあるというほどでもなく、ましてやコレクターでもありません。音質のよい盤が出れば音質の劣る盤の価値が減ずるというのは理解できます。

 しかし私は「商品価値」に耳を傾けているわけではなく、長年聴き馴染んできたレコードをいまも聴いているだけのこと。だいいち、その音質の良さというのもアテになりません。かつて私がフルトヴェングラーのdiscに詳しいという人に教わった「高音質盤」というのが、高域上がりのキンキンしたものであったり、(おそらく)ノイズ除去の影響で鼻をつまんだような空気感のない音であったりしたことがあります。それに、おかしな「リマスタリング」を施したCDよりは、往年のユニコーン盤の方が余程ましな音かもしれない・・・「かもしれない」じゃ、ダメですか? でも私は何枚も(何十枚も)聴きくらべて、どれがベストかを判定する時間があったら、いま持っている1枚を愉しむ時間に充てたいですね。老い先長くない身ですから(笑)そういった時間と手間を要する作業はお若い方にお任せします。でも、本当は誰しも自分で聴いて自分で判断して、「愛聴盤」とすべきだと思っています。もちろん、他人様の推薦するものを信じて、買って、並べて(聴いて)満足していられる人には、それはそれで外野がどうこう言う必要もないことです。

 ついでに付け加えると、私が同じ内容のレコードを複数枚入手してしまうことがあるのは、少しでもいい音で聴きたいという理由があるためではありません。私のレコードの買い方が、特定のレコードを探して入手する、というやり方ではなく、たまたま目の前に現れたレコードが気になったら買う、というスタンスだからです。たまに聴きくらべてみるのも、違いがあるからで、どっちがいいの、どっちが悪いの、といった格付けをすることには関心がありません。「違い」は「違い」であって、必ずしも優劣ではないことにご注意下さい。どの盤に針を下ろすかというのは、先日はフレンチクルーラーを食ったから、今日はチョコファッションにしようかな、という程度のハナシです(笑)さらに、私が好きなレコードというのは、ジャケットのデザインなども含めてのことである場合が多いんですよ。

 私は求道精神で趣味を極めようなどという、滑稽な思い上がりは持ち合わせていません。まあ、あまり難しく考えないでくダサイということです。


(Hoffmann)