126 ブラームス アルト・ラプソディのレコードから ブラームスのアルト・ラプソディを取り上げるとなれば、まず最初に挙げたいのはマリアン・アンダーソンの盤。録音は3種類残されていて、録音年順に並べると― 1939年 ユージン・オーマンディ指揮 フォラデルフィア管弦楽団 1945年 ピエール・モントゥー指揮 サンフランシスコ交響楽団 1950年 フリッツ・ライナー指揮 RCAビクター交響楽団 ・・・ということになります。 すべて以前取り上げたSony Classicalから出たCD15枚組のセットに収録されていますが、オーマンディ盤は、これも以前も取り上げた英BiddulphのCDがたいへん良質な復刻です― Brahms:Viola Sonata No.1(1946) William Primrose (viola)、William Kapell (piano) Brahms:Viola Sonata No.2(1937) William Primrose (viola)、Gerald Moore (piano) Brahms:Two Songs for alto, viola obbligato and piano(1941) Marian Anderson (contralto), William Primrose (viola), Franz Rupp (piano) Brahms:Dein Blaues Auge, Immer Leise wird mein Schlummer, Der Schmeid, Alto Rhaosody(1939) Marian Anderson (contralto), Eugene Ormandy, The Philadelohia Orchestra, University of Pennsylvania's Men's Glee Club Biddulph LAB150(CD) 英BiddulphのCD。ヴィオラ(すなわちアルト)とアルト歌手というユニークな企画。ヴィオラのプリムローズとマリアン・アンダーソンに焦点を当てたブラームスの歴史的録音集。録音年は作品名の後に記載しておきました。プリムローズのヴィオラ・ソナタもいいんですが、後半6曲のマリアン・アンダーソンの歌が折にふれて聴きたくなる愛聴盤。「アルト・ラプソディ」は1945年にピエール・モントゥーと、1950年にフリッツ・ライナーとも再録音しています。個人的なことですが、私はこの「アルト・ラプソディ」を涙なしには聴けません。 以上は前回の引用。アルト・ラプソディの録音データは1939年1月8日、フィラデルフィア、アカデミー・オブ・ミュージック。 ピエール・モントゥー盤はSP盤で持っています。 ブラームス:アルト・ラプソディ マリアン・アンダーソン(コントラルト) ピエール・モントゥー指揮 サンフランシスコ交響楽団 The Municipal Chorus of Sun Francisco(サンフランシスコ市合唱団) 1945年3月3日 サンフランシスコ、戦争記念オペラハウス 濠His Master's Voice ED433/34 (2SP) 合唱団名は、多くのCDの解説書にも、私が所有しているSP盤のレーベルにも記載がなく、以前取り上げたSony Classicalから出たCD15枚組のセットに記載されていたもの。 フリッツ・ライナー盤はLPで― ブラームス:アルト・ラプソディ マリアン・アンダーソン(コントラルト) フリッツ・ライナー指揮 RCAビクター交響楽団 ロバート・ショウ合唱団 1950年10月20日 ニューヨーク、マンハッタン・センター マーラー:子供の死の歌 マリアン・アンダーソン(コントラルト) ピエール・モントゥー指揮 サンフランシスコ交響楽団 1950年2月26日 サンフランシスコ、戦争記念オペラハウス 英 His Master's Voice ALP1138 (LP) 以上、今回すべて聴きましたが、とりたてて優劣を云々するようなものでもなく、1939年はさすがに声が若いかなとも思いますが、その深い内容を感じさせる感動的な歌いぶりに変わりはありません。 Marian Anderson 次はクリスタ・ルートヴィヒ― ブラームス:アルト・ラプソディ クリスタ・ルートヴィヒ(メゾ・ソプラノ) オットー・クレンペラー指揮 フィルハーモニア管弦楽団 フィルハーモニア合唱団(ヴィルヘルム・ピッツ合唱指揮) 1962.3.21-23 英EMI ASD 2391 (LP) 英EMI SXLP2700001 (LP) 独Columbia STC91365 (LP) このほかに複数組持っているクレンペラーの「ドイツ語によるレクイエム」には、アルト・ラプソディが併録されている盤もありますが、そちらは省略。上記の3枚のそれぞれのカップリング曲を記載しておくと― ASD2391 マーラー:5つの歌 ワーグナー:ヴェーゼンドンクの5つの歌 A面がアルト・ラプソディ、ヴェーゼンドンク歌曲と続いて、5曲めだけがB面になっている、これは残念。 英EMI SXLP2700001 ワーグナー:ヴェーゼンドンクの5つの歌 ワーグナー:イゾルデ愛の死 マーラー:5つの歌 "HMV Cocert Classics"シリーズ、廉価盤。 独Columbia STC91365 ワーグナー:ヴェーゼンドンクの5つの歌 ブラームス:ジプシーの歌 ジプシーの歌のピアノ伴奏はジェラルド・ムーア。表面隆起の危険のある盤だが、10数年前に入手していまのところ問題ない。 組み合わせを変えてさんざん再発売されたということですね。 Christa Ludwig 今回LPで聴いたものはこのほかにもいろいろあるんですが、もうマリアン・アンダーソンとクリスタ・ルートヴィヒのレコードがあれば十分かなと思いました。その内容の深さでアンダーソンに及ぶ歌手はなく、たいへんよい意味で、歌手も指揮も合唱も、「お手本」といいたいくらいに充実しているのがクリスタ・ルートヴィヒ盤です。クレンペラーという指揮者は、なにもせずに淡々と音楽を先に進めているようでいて、その底に流れるものを感じさせるのは不思議です。 あとは、往年の大歌手、若くして亡くなった人気の歌手、その他・・・あまり興味を引かない盤がいたずらに並ぶばかり・・・といった趣なんですが、次点としてもうひとつだけ挙げておきます― ブラームス:アルト・ラプソディ 1961.1.11 同:運命の歌 1961.1.9 マーラー:さすらう若人の歌 1960.6.30, 7.1 ミルドレッド・ミラー(メゾ・ソプラノ) ブルーノ・ワルター指揮 コロムビア交響楽団 オクシデンタル大学コンサート合唱団 ハワード・スワン合唱指揮 米Columbia MS6488 (LP) stereo 2eyes。ワルターとの「大地の歌」で客観的ながら惻々とした無常観を漂わせるミルドレッド・ミラーの歌唱です。やはりここでも情感に浸るよりもややクール・・・というよりも、作為を感じさせない自然体。知的というのとも違うな。すべては音楽に語らせる、という指揮者は案外といるものですが、歌手でそのようなスタンスをとって、それですぐれた歌唱になってしまう人はめずらしい。淡白でないのはワルターの指揮故。その上に重なる清潔で高貴な声が見事なコントラスト。 (Hoffmann) |