129 シューマン 室内楽のレコードから シューマンの室内楽といえば、取り出して聴くのに便利なのが、仏Eratoから7枚組で出ていた「シューマン室内楽全集」― 「シューマン室内楽全集」 ピアノ四重奏曲 変ホ長調 作品47 (1979.5) ジャン・ユボー(ピアノ) ヴィア・ノヴァ四重奏団: ジャン・ムイエール(ヴァイオリン) クロード・ナヴォー(ヴィオラ) ジャン=マリー・ガマール(チェロ) ピアノ五重奏曲 変ホ長調 作品44 (1979.5) ジャン・ユボー(ピアノ) ヴィア・ノヴァ四重奏団: ジャン・ムイエール(ヴァイオリン) ジャン=ピエール・サボール(ヴァイオリン) クロード・ナヴォー(ヴィオラ) ジャン=マリー・ガマール(チェロ) ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 作品63 (1978.11) ジャン・ユボー(ピアノ) ジャン・ムイエール(ヴァイオリン) フレデリック・ロデオン(チェロ) ピアノ三重奏曲 第2番 へ長調 作品80 (1978.11) ジャン・ユボー(ピアノ) ジャン・ムイエール(ヴァイオリン) フレデリック・ロデオン(チェロ) ピアノ三重奏曲 第3番 ト短調 作品110 (1978.11) ジャン・ユボー(ピアノ) ジャン・ムイエール(ヴァイオリン) フレデリック・ロデオン(チェロ) 幻想小曲集 作品88 (1978.11) ジャン・ユボー(ピアノ) ジャン・ムイエール(ヴァイオリン) フレデリック・ロデオン(チェロ) ヴァイオリン・ソナタ 第1番 イ短調 作品105 (1979.5) ジャン・ムイエール(ヴァイオリン) ジャン・ユボー(ピアノ) 《F.A.E.》ソナタ ~ 第2楽章:インテルメッツォ (1979.5) ジャン・ムイエール(ヴァイオリン) ジャン・ユボー(ピアノ) ヴァイオリン・ソナタ 第2番 ニ短調 作品121 (1979.5) ジャン・ムイエール(ヴァイオリン) ジャン・ユボー(ピアノ) 弦楽四重奏曲 第1番 イ短調 作品41の1 (1978.12) ヴィア・ノヴァ四重奏団: ジャン・ムイエール(ヴァイオリン) ジャン=ピエール・サボール(ヴァイオリン) クロード・ナヴォー(ヴィオラ) ジャン=マリー・ガマール(チェロ) 弦楽四重奏曲 第2番 ヘ長調 作品41の2 (1979.5) ヴィア・ノヴァ四重奏団: ジャン・ムイエール(ヴァイオリン) ジャン=ピエール・サボール(ヴァイオリン) クロード・ナヴォー(ヴィオラ) ジャン=マリー・ガマール(チェロ) 弦楽四重奏曲 第3番 イ長調 作品41の3 (1979.5) ヴィア・ノヴァ四重奏団: ジャン・ムイエール(ヴァイオリン) ジャン=ピエール・サボール(ヴァイオリン) クロード・ナヴォー(ヴィオラ) ジャン=マリー・ガマール(チェロ) 民謡風の5つの小品 作品102 ~ チェロとピアノのための (1977.3) フレデリック・ロデオン(チェロ) ダリア・オヴォラ(ピアノ) アダージョとアレグロ 変イ長調 作品70 (1979.5) ジャン・ユボー(ピアノ) おとぎの絵本 作品113 ~ ヴィオラとピアノのための (1979.12) ジェラール・コセ(ヴィオラ) ジャン・ユボー(ピアノ) 3つのロマンス 作品94 ~ オーボエとピアノのための (1979.12) ピエール・ピエルロ(オーボエ) ジャン・ユボー(ピアノ) おとぎ話 作品132 ~ クラリネット、ヴィオラとピアノのための (1979.12) ジャン・ユボー(ピアノ) ヴァルター・ベイケンス(クラリネット) ジェラール・コセ(ヴィオラ) 幻想小曲集 作品73 ~ クラリネットとピアノのための (1979.12) ジャン・ユボー(ピアノ) ヴァルター・ベイケンス(クラリネット) 仏Erato STU71252 (7LP) どの作品を聴きたくなっても、このセットを引っ張り出せば上質の演奏で聴くことができます。 この全集以外で、わりあい頻繁に針を下ろすことがあるのは― 弦楽四重奏曲 第1番 イ短調 作品41の1 弦楽四重奏曲 第2番 ヘ長調 作品41の2 Le Quaruor Parrenin: Jacques Parrenin (violon) Marcel Charpentier (violon) Denes Marton (alt) Pierre Panassou (violoncelle) 独Columbia SMC80908 (LP) 弦楽四重奏曲 第3番 イ長調 作品41の3 ピアノ四重奏曲 変ホ長調 作品47 Pierre Barbizet (piano) Le Quaruor Parrenin: Jacques Parrenin (violon) Marcel Charpentier (violon) Denes Marton (alt) Pierre Panassou (violoncelle) 仏Pathe Marconi CVB2149 (LP) とりわけラヴェル、ドビュッシーの弦楽四重奏曲のレコードで有名な、パレナン四重奏団による演奏。パレナン四重奏団は1942年にパリ音楽院の教授ジョセフ・カルヴェ門下の4人で結成。師のカルヴェはSP期にカルヴェ四重奏団という名団体を率いていた人。1942年といえばナチス占領下ですね。 この団体は、レコードでは案外と印象が異なるときがあって、これはおそらくメンバーの交代による影響と思われます。第2ヴァイオリンが2回、チェロが1回、ヴィオラは4回交代しているんですよ。このシューマンの録音は、J・パルナン、M・シャルパンティエ、D・マルトン、P・ペナソーの4人で、ヴィオラだけが初代のセルジュ・コロから1961年にミシェル・ヴァールに、1969年にデネシュ・マルトンに変わっており、このメンバーがパレナン四重奏団の最盛期? 洗練された響きの美しさが印象的です。バルビゼとのピアノ四重奏曲も同様。これもまたシューマンの側面。 ヴァイオリン・ソナタ 第1番 イ短調 作品105 ヴァイオリン・ソナタ 第2番 ニ短調 作品121 Ulf Hoelscher (violon) Michel Beroff (piano) 独Electrola 1C065 30233Q (LP) ヴァイオリン・ソナタ 第1番 イ短調 作品105 ヴァイオリン・ソナタ 第2番 ニ短調 作品121 Catherine Courtois (violon) Catherine Collard (piano) 17 et 18. decembre 1980 仏Pathe Marconi 2C066 73059 (LP) ヴァイオリン・ソナタ 第1番 イ短調 作品105 ヴァイオリン・ソナタ 第2番 ニ短調 作品121 Pierre Doukan (violon) Francoise Petit (piano) 仏Erato 3048 (LP) ヴァイオリン・ソナタはとくに好きな作品なので、何枚も持っているんですが、代表としてこの3枚を。 ウルフ・ヘルシャーは好きなヴァイオリニストです。SQエンコード盤ですが、そんなにヘンな音はしません。シューマンの偏執ぶりはこの演奏で。ちなみにヘルシャーはヴァイオリン協奏曲も録音しており、それも気に入っていて、ときどき聴いています。カトリーヌ・クルトワ盤は、ピアノ伴奏のカトリーヌ・コラールがこの3枚中ベストの出来。ピエール・ドゥーカンは有名なレコードなので解説は不要ですよね。Eratoにはフォーレ、フランク、ラヴェルなど4枚のLPを残していますが、どれもすばらしいレコードです。 ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 作品63 ピアノ三重奏曲 第3番 ト短調 作品110 Jean Hubeau (piano) Henri Merckel (violon) Paul Tortelier (violoncelle) 日RVC ERA-1098 (LP) もう1枚、これは国内盤ですが、Eratoの全集とは別録音。ヴァイオリンはジャケットには「ヘンリ・マイケル」とあるが、おそらく「アンリ・メルケル」の間違い。 CDでひとつだけ挙げておきたいのは― シューマン:ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ短調 Op. 105 同:ヴァイオリン・ソナタ第2番 ニ短調 Op. 121 同:ヴァイオリン・ソナタ第3番 イ短調 WoO 27 Isabelle Faust (violin) Silke Avenhaus (piano) 1999.3.22-25 cpo 999 597-2 (CD) またまたヴァイオリン・ソナタなんですが、上に挙げたLP3枚とはかなり異なる、クールで知的な演奏。かなり熱を込めているようでいて、それも計算のうえ、と聴こえるんですね。たいへんすぐれた演奏であることは認めつつ、どうもあまり「夢中」になれる演奏ではありません。気分が落ち着かないときにクールダウンするために聴くのに最適(笑)これがフランクかイザイならともかく、シューマンの音楽でそのような演奏が可能であるということが、この演奏者の非凡なところ。 (Hoffmann) |