132 モーツアルトのピアノ協奏曲 その1 LP篇




 モーツアルトのピアノ協奏曲のレコードから、お気に入りものをいくつか―


モーツアルト:ピアノ協奏曲第23番 K.488
同:ピアノ・ソナタ 第10番 K.330
同:デュポールのメヌエットによる9つの変奏曲 K.573
 クララ・ハスキル(ピアノ)
 パウル・ザッハー指揮 ウィーン交響楽団
 1954.10(協奏曲)、1954.5.5-6(協奏曲以外)
仏PHILIPS L02.084L (LP) mono


 まずもって取り上げたいのはハスキルによるK.488。ほかにも10inch盤含め何枚か持っているが、これで代表させる。どれか1枚と言われたら、このハスキル、ザッハーの23番。すべてがこうあって欲しいというとおりの演奏。


モーツアルト:ピアノ協奏曲第23番 K.488
同:ピアノ協奏曲第24番 K.491
 ソロモン・カットナー(ピアノ)
 ハーバート・メンゲス指揮 フィルハーモニア管弦楽団
 1955.5.10-12
英His Master's Voice ALP1316 (LP) mono


 EQカーヴはRIAA。

 ソロモンはややstatic、対するメンゲスが元気溌剌、そのコントラストがかえって面白い。


モーツアルト:ピアノ協奏曲第12番 K.414
同:ピアノ協奏曲第21番 K.467
 モーラ・リンパニー(ピアノ)
 ハーバート・メンゲス指揮 フィルハーモニア管弦楽団
 1955頃?
英His Master's Voice CLP1038 (LP) mono


 EQカーヴはRIAA。

 メンゲスで思い出したレコード。リンパニーは第21番の協奏曲を後にArthur Davison指揮、The Virtuosi of Englandとstereo録音している。私が持っているのは英EMI CFP40009、カップリングは「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」。いずれもバックのオーケストラは元気のよい演奏ながら、Davison盤はやや荒く、メンゲスの方が上品で節度がある。ややか弱いくらいにデリカシーに富んだピアノとのコントラストがユニークなのは上記ソロモン盤と似た印象。


モーツアルト:ピアノ協奏曲第23番 K.488
同:ピアノ協奏曲第24番 K.491
 クリフォード・カーゾン(ピアノ)
 ヨーゼフ・クリップス指揮 ロンドン交響楽団
 1953.10
独DECCA LXT2867 (LP) mono


 ドイツの第2版。EQカーヴはDECCAffrr。

 柔らかく、典雅。クリップスは歯切れよく、上品。モーツアルトとしてはやや予定調和気味ながら、こういう演奏のレコードも1枚くらいは手許に置いておきたい。


モーツアルト:ピアノ協奏曲第19番 K.459
同:ピアノ協奏曲第23番 K.488
 マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)
 カール・ベーム指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 1976.4
独DG 2530716 (LP) stereo
仏DG 2530716 (LP) stereo

 現代的でタッチの俊敏なポリーニとベームのコントラストがまことによろしい。といっても、ポリーニも内面は案外とロマンティック。それに、もともとベームは鈍重な演奏をする人ではなく、アタックは明快、歯切れの良いタイプ。それが高齢のためか、わずかに鈍っている。そこでこのコントラストが生じたものか。いまではあまり話題にもならないレコードながら、私には発売時から現在に至るまでの愛聴盤。ついでに付け加えると、カートリッジはThorensのMCH-IIで聴いたときがもっともよかった。


モーツアルト:ピアノ協奏曲第20番 K.466
同:ピアノ協奏曲第23番 K.488
 アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(ピアノ)
 カルロ・マリア・ジュリーニ指揮 ローマ放送交響楽団
 1951.12.15 live
日キングレコード K22C-249 (LP) mono


 ローマでのlive録音。当日は第13番K.415も演奏されたそうで、ピアノ協奏曲3曲のコンサートであったものと思われる。ミケランジェリは後年のような研ぎ澄まされたピアノではないが、高度に洗練されたモーツアルト。


モーツアルト:ピアノ協奏曲第20番 K.466
同:セレナーデ第13番「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
 ブルーノ・ワルター(ピアノと指揮) ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 1937.5(協奏曲)、1936.12(セレナーデ)
東芝 GR-2021 (LP) mono


モーツアルト:ピアノ協奏曲第20番
 イヴォンヌ・ルフェビュール(ピアノ)
 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 1954.5.15.
東芝 WF-28~32 (5LP)

 ブルーノ・ワルターのピアノと指揮、ルフェビュール、フルトヴェングラー盤は取り上げようかどうしようか、少し迷った。ワルター盤は言わずと知れた、天下の「歴史的名盤」・・・と、カギ括弧に入れたのは、私はあまり名盤だと思っていないから(笑)いや、すばらしい演奏だとは思いますけどね。ワルターらしく、ロマンティックに傾く(傾きすぎる)のも、これはこれでいいとしても、しかし、ピアノは大絶賛するほどではない。その点、フルトヴェングラー盤は第2楽章の伴奏にやや疑問はあるものの、ルフェビュールのピアノが聴きもの。どちらかというと、ソリストが指揮者に寄り添っているようでありながら、第3楽章で少し自由になっている。そのあたりがliveならでは、かな。

 なお、ルフェビュール、フルトヴェングラー盤は何種類かの盤を持っているが、上記はどうということもない国内盤。「フルトヴェングラーの芸術」シリーズの第6巻で、詳細はこちら。ワルターの方は、同じく東芝のGR盤。GR盤も番号が2桁、2000番台の頃はいい音がしていた。その後7万番台になってやや悪くなって、1980年頃(フランスでPathe Referencesシリーズが出た頃)白ジャケットになってかなり悪くなった。仏Pathe Referencesシリーズと同様、ノイズ除去の悪影響で空気感が失われてしまっている。



モーツアルト:ピアノ協奏曲第20番 K.466
同:ピアノ協奏曲第21番 K.467
同:ピアノ協奏曲第22番 K.482
同:ピアノ協奏曲第23番 K.488
 アニー・フィッシャー(ピアノ)
 サー・エイドリアン・ボールト指揮(20、23)
 ヴォルグガング・サヴァリッシュ指揮(21、22)
 フィルハーモニア管弦楽団
 1959.2,4(20、23)、1958.2,3(21、22)
仏Pathe Marconi(EMI) 2C181-53337/8 (2LP) stereo


 仏Pathe Marconiの2枚組廉価盤。stereo録音。プレス時期は1970年頃か、ときどき見かける、わりあい音質のよいシリーズ。番号順に収録されているが、ボールトとの共演盤とサヴァリッシュとの共演盤の組み合わせ。サヴァリッシュ清新、ボールトは老練と言いたい巧みさだが、ややリズムが重い。


モーツアルト:ピアノ協奏曲第14番 K.449
同:ピアノ協奏曲第15番 K.450
同:ピアノ協奏曲第16番 K.451
同:ピアノ協奏曲第17番 K.453
同:ピアノ協奏曲第18番 K.456
同:ピアノ協奏曲第19番 K.459
 ピーター・ゼルキン(ピアノ)
 アレクサンダー・シュナイダー指揮 イギリス室内管弦楽団
 1973
英RCA ARL30732 (3LP) stereo


 ピーター・ゼルキンのピアノとアレクサンダー・シュナイダーの指揮では、昔、新日本フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会でブラームスの第2番の協奏曲を聴いたことがあって、忘れがたい体験になっている。

 コロコロと珠を転がすようなピアノ。低音部に厚みを持たせないという意図。なるほど、20番以前の作品を取り上げているのも分かる。


 レコード(LP)を再生した装置について書いておきます。
 古いmono盤では、カートリッジは、ortofon CG 25 D。スピーカーはSiemensのCoaxial、いわゆる「鉄仮面」をチャンネルあたり2基の後面開放型Sachsen 202で聴いています。なお、私はmono盤でもスピーカーは2本で聴きます。stereo盤はSPU GTEで、TANNOYのMonitor Gold10"入りCornettaで聴きました。
 また、EQカーヴはRIAAで疑問を感じたものは適宜ほかのカーヴを試し、結果はなるべく記載しておきました。



(Hoffmann)