144 J.S.バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータのdiscから




 BWV1001-1006の全曲録音のdiscのみ取り上げます。

 LP篇

イェフデエィ(ユーディ)・メニューイン
1929, 1934, 1935, 1936
英EMI EX 7 69377 1 (2LP)


 これは以前取り上げたことがあるレコードです。"The HMV Treasury"シリーズの2枚組で、DMM盤。もちろん復刻盤。メニューインは1916年生まれですから、1929年には13歳、1936年に20歳。若くして、内容のある演奏です。


ジョルジュ・エネスコ
1940年代末
英CREMONA CR03 (3LP)


 米コンチネンタルのCLP104-106を持っている人は、必ず「このoriginal盤でなければその良さは分からない」と自慢するレコード。私はとりあえず手許にあるこの復刻盤で聴いています。聴かないよりは聴いた方がいいに決まってますからね。おれさまはoriginal盤を持っているぞとマウントをとってくる人には、「おおー、スゴイですねー」と感心して見せておきましょう。ただしあまり大げさにやると「愚弄」と思われるので、注意して下さい(笑)


ヨーゼフ・シゲティ
1955.7, 1955.10, 1956.3
英CREMONA CR01 (3lP)
日Vanguard MH5041~3 (3LP)


 これも英CREMONA盤で十分です。国内盤はちょっとカン高い。


ヤッシャ・ハイフェッツ
1952.10
英RCA SER5669/71 (3LP)


 緊張感のあるいい演奏だと思うんですが、さまざまな録音で聴く限り、ハイフェッツは1930~1940年代が全盛。もう少し早めに録音していたらどんなだったろうか。


エミル・テルマーニ(Bach Bow使用)
1953.11, 1954.3
danacord DACO147-148 (3LP)


 "using his famous 》Vega《 Bach Bow"と表示あり。演奏はstaticでおとなしい。物足りない。


ポール・ズーコフスキー
1971,1972
米Vanguard VSD71194/6 (3LP)


 現代音楽の名手による演奏で、ことさらに個性や表情を意識していない。それでいて即物的にならないのが面白い。


レジス・パスキエ
1981.10, 1981.11
独harmonia mundi HM1085/87 (3LP)


 美しくも風格を感じさせる、大人(たいじん)の音楽。


シギルヴァルト・クイケン
1981.12
仏harmonia mundi DHL20401.03 (3LP)

 後の再録音(CD)とともに、現代の規範となるべき演奏。


シュロモ・ミンツ
1983.1, 1983.12, 1984.3, 1984.6
日DG 78MG0848/50 (3lP)


 ミンツは1957年10月生まれなので、録音時は25~26歳。いまではもっと若くして同曲を録音しているヴァイオリニストもいるが、録音当時の若手で満足できる演奏となっているのは、若き日のメニューインとこのミンツくらいでは?


ディミトリ・シトコヴェツキー
1984.12
独ORFEO S130 853F (3LP)


 横に流れてゆく演奏。構築性ではいま一歩ながら、これはこれで聴きたくなるときもある。


 このほか、全6曲のレコードはシェリングの新旧、ミルシテイン、グリュミオー、クレーメルのPHILIPS録音などがありますが、あまり聴くこともなく、放出候補でもあるので、ここには挙げていません。


 CD篇

ジョルジュ・エネスコ
1940年代末
Continental CCD105/5 (2CD)

ヨーゼフ・シゲティ
1955.7, 1955.10, 1956.3
Vanguard 08 8022 72 (2CD)

エミル・テルマーニ
1953.11, 1954.3
Testament SBT2 1257 (2CD)

ポール・ズーコフスキー
1971,1972
CP2 118/119 (2CD)


 ここまではLPで持っているものと同じ。


ズザーネ・ラウテンバッハー
1973, 1974
UNIQUE SVBX526 (2CD)


 生真面目で、フォルムが整っており、それでいて構えたところがない自然体。すばらしい。ラウテンバッハーには1964年の旧録音があるらしいが、未聴。


シャンドール・ヴェーグ
1970?
VALOIS V4427 (2CD)


 よい意味での職人芸。何度聴いても聴き飽きない。


シギスヴァルト・クイケン
1999, 2000
BMG(deutsche harmonia mundi) 05472 77527 2 (2CD)


 クイケンの再録音。演奏もいいが、ホールトーンが豊かで、音像は小さく引き締まっている名録音。


パトリス・フォンタナローザ
2016.5
POLYMNIE POL118 130 (2CD)


 どことなく、「おしゃれな」ヴァイオリンと聴こえるが、表面的ではない。知性派。


ファビオ・ビオンディ
2020.6
naive V7261 (2CD)

 かなり入念な表情付け。しかし恣意的ではなく、リズムが犠牲にならず、そこはかとない躍動感。わずかに神経質かとも感じられる。


レオニダス・カヴァコス
2020.7, 2020.12
Sony Classical 19439903132 (2CD)


 テクニックを際立たせることなく、物思いに沈んだような演奏。楽曲ごとにコントラストをつけたような設計。それでいて、あざとくならないバランス感覚。


 番外篇

 CDでも、このほかに何組かありますが、あえて語るほどのこともないので省略。ただし「番外」としてLPとCDをそれぞれ1点―

ハローチュン・ベデリアン(ヴァイオリン)
ロルナ・グリフィット(ピアノ)
2006.6.12-17
CENTAUR CRC2904/2905 (2CD)


 これはシューマンがピアノ伴奏を加えたヴァージョンによる録音。ピアノが必要だとは思わないが、なかなか新鮮で愉しめる。


パルティータ 第2番 BWV1004
同 第3番 BWV1006
1960年代後期?
オットー・ビュヒナー(Rundbogen使用)
独CALIG CAL30403 (LP)


 Rundbogen 彎弓使用。テルマーニの"Bach Bow"と同じようなもの。これは全曲録音ではなく、パルティータ2曲のみ。国内盤はTRIOから出ていて(PA-1001)、その解説に「パルティータ1番、ソナタ1~3番は近い将来完成が予定されています」とあるが、結局録音されなかった模様。この2曲に関する限り、このレコードがいちばん好きなので、独盤、国内盤とも複数枚持っている(笑)ちなみに独盤は番号は同じなれどジャケット違いあり。これを聴いてしまうと、テルマーニ盤が生ぬるく聴こえてしまうんですよ。


(Hoffmann)