149 ジネット・ヌヴーのdisc




  ジネット・ヌヴーGinette Neveuは1919年8月11日、パリ生まれ。アメリカにおける成功によって同国人にも認められた点では、師ティボーと同じですね。

 5歳の時に母からヴァイオリンの手ほどきを受けて、7歳の時にはパリのコロンヌ管弦楽団と共演して成功、9歳でベルリンでもセンセーショナルな成功を収めており、11歳でパリ音楽院でジュール・ブーシェリに学び、わずか8か月で卒業免状を第一位で獲得しています。12歳でウィーンの国際音楽コンクールで四位、その後カール・フレッシュのもとで学び、1935年にワルシャワのヴィエニャフスキ・コンクールで優勝。世界的な名声は1930年代からですね。

 ところが、1949年10月27日、アメリカに向かうために乗り込んだエールフランスの飛行機が、アゾレス諸島の主島であるサンミゲル島の山中に墜落して死去。わずか30歳。その死を悼んで哀悼の辞を述べたジャック・ティボーもまた4年後の1953年、日本へ向かう途上、同じくエールフランスの飛行機がアルプス山脈に衝突して命を散らしています。

 フランスの批評家からは、「女性らしさがない」などと評されたそうですが、気迫も表現力もエネルギー漲るデュナーミクも、強烈なものがありますからね、それこそがジネット・ヌヴーの個性と言っていいでしょう。さらにsentimentalismを排した、清潔感のあるモダンな響きもまた、いまの時代にその残された録音を聴いて古びた印象を抱かせない要素だと思います。


Ginette Neveu


 LP篇

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
ジネット・ヌヴー (ヴァイオリン)
ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮 北西ドイツ放送交響楽団
1948.5.3
仏STIL 0305S48 (LP)


 以前取り上げたこれを第一に挙げたい。その時にも言いましたが、以下4種類あるジネット・ヌヴーによる同曲の録音のなかでも最高の演奏。もちろん、ほかの録音がダメということではないが―

イサイ・ドブロウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1946.8.16-18 HMVセッション録音
ロジェ・デゾルミエール指揮 フランス国立放送管弦楽団 1948.4.25 パリlive
ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮 北西ドイツ放送交響楽団 1948.5.3 ハンブルクlive(当録音)
アンタル・ドラティ指揮 ハーグ・レジデンティ管弦楽団 1949.6.10 ハーグlive


ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
同:ヴァイオリン・ソナタ第3番
ジネット・ヌヴー (ヴァイオリン)
ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮 北西ドイツ放送交響楽団 1948.5.3
ジャン=ポール・ヌヴー(ピアノ) 1949.9.21
キングインターナショナル TALTLP-001/2 (2LP)


ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
ジネット・ヌヴー (ヴァイオリン)
ハンス・ロスバウト指揮 南西ドイツ放送交響楽団 1949.9.25(ベートーヴェン)
ロジェ・デゾルミエール指揮 フランス国立放送管弦楽団 1949.4.25(ブラームス)
キングインターナショナル TALTLP-003/4 (2LP)


 この2組はいまは無きtahraで出たもののLP化。tahraの復刻には当たり外れがあるが、これはいい方。


"The Complete Recording Lagacy of Ginette Neveu"
英EMI RLP739 (4LP)


 これは英EMIの"The HMV Treasury"シリーズのうちの1セット。"Playable on STEREO & MONO equipment"と表記されているが、疑似stereo盤ではない。収録曲は省略。録音年だけ記しておくと、1938、1939、1945、1946、1948年。やはりナチスによるパリ占領下では録音が行われていないということがわかる。

 このなかに収録されている録音のなかで、ドブロウェンとのブラームスのヴァイオリン協奏曲やジュスキントとのシベリウスのヴァイオリン協奏曲は東芝GR盤も所有している(GR-2045、GR-84)。後者GR-84は所謂赤盤。一部でありがたがる人もいるようだが、概ね赤盤は、あまり音質がよくないように感じている。痛んだ盤が多い傾向もあり。


ラヴェル:ツィガーヌ
スーク:4つの小品
ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
ラヴェル:ハバネラ形式の小品
ファリ~クライスラー編:歌劇「はかなき人生」~スペイン舞曲
スカルラテスク:バガテル
ディニーク~ハイフェッツ編:ホラ・スタッカート
ジネット・ヌヴー(ヴァイオリン)
ジャン・ヌヴー(ピアノ)
1946-1948
波Ars Musica MS003C (LP)


 収録されているのはHMVの正規録音によるもの。


Ginette Neveu


 CD篇

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
ジネット・ヌヴー (ヴァイオリン)
ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮 北西ドイツ放送交響楽団
1948.5.3
仏STIL 0305SAN48 (CD)


 上記LPと同じ内容のCD。


ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
同:ヴァイオリン・ソナタ第3番
ジネット・ヌヴー (ヴァイオリン)
ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮 北西ドイツ放送交響楽団 1948.5.3
ジャン=ポール・ヌヴー(ピアノ) 1949.9.21
TAHRA TAH465 (CD)


ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
ジネット・ヌヴー (ヴァイオリン)
ロジェ・デゾルミエール指揮 フランス国立放送管弦楽団
1949.4.25
tahra Tah731 (SACD)

 これも上記tahraのCD。いま気がついたが、デゾルミエール盤はSACDだった。


ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
ラヴェル:ツィガーヌ
ショーソン:詩曲
ジネット・ヌヴー (ヴァイオリン)
ハンス・ロスバウト指揮 南西ドイツ放送交響楽団 1949.9.25(ベートーヴェン)
シャルル・ミュンシュ指揮 フィルハーモニック交響楽団 1949.1.2(ラヴェル、ショーソン)
Music & Arts CD-550 (CD)

 ロスバウトとのベートーヴェンは、やはり上記tahraのLPでも聴くことができる。


ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
ジネット・ヌヴー (ヴァイオリン)
アンタル・ドラティ指揮 ハーグ・レジデンティ管弦楽団
1949.6.10
Epitagraph EPITA007 (CD)


  この演奏のみ、このCDでしか持っていない。オーケストラがやや弱い。

 どうも概ねLPで所有しているものと同じなので、特筆すべきこともありません。やはり残されている録音が少ないということです。


Ginette Neveu


(Hoffmann)