151 カミラ・ウィックスのdisc 今回とりあげる女流ヴァイオリニスト、カミラ・ウィックスCamilla Wicksです。ウィックスは1928年生まれのアメリカ人。父親はノルウェー出身のヴァイオリニストで、母親はピアニストだったそうです。3歳半でヴァイオリンを欲しがり、父に師事。4歳でヴィヴァルディを暗譜で奏き、7歳でモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第4番でデビュー、10歳でジュリアード音楽院に入学してパーシンガーやテミアンカに師事しました。 シベリウスが彼女の演奏する自分のヴァイオリン協奏曲を聴いて絶賛したというのは有名な話ですね。ヌヴーのように「男勝り」ではありませんが、なかなか情熱的な演奏です。 1950年代の初めに結婚して、子供は5人、1950年代後半にはしばらく演奏から遠ざかり、大切にしていた楽器である1725年製ストラディバリウスも売却していますが、やがて演奏活動を再開。なんでも1970年代初めにワシントン州に定住し、ワナッチー・バレー・カレッジで教鞭をとっていたときには、アマチュアのコミュニティ・オーケストラと時々演奏していたのですが、オーケストラの指揮者は彼女が誰なのか知らずに、最初は第2ヴァイオリンのセクションに座らせたんだそうです。スナオに言われたところに座った彼女も偉い(笑)晩年は、デトロイト交響楽団などと共演したほか、海外でも演奏してミシガン大学、ライス大学、イーストマン音楽学校で教鞭をとっていました。 2005年に引退して、2020年11月に92歳で亡くなっています。4月には新型コロナウイルスに感染して、このときは42日間入院の後、陰性になっていたそうです。 Camilla Wicks LP篇 ・・・といっても、以前取り上げたシベリウスのヴァイオリン協奏曲しか持っていません。 Sibelius:Violin Concerto Camilla Wicks (violin) Sixten Ehrling, Symphony Orchestra of Radio-Stockholm 1952 米Capitol P8175 (LP) 東芝 GR-2202 (LP) 東芝GR盤にはエールリンク指揮ストックホルム放送管弦楽団によるシベリウスの4つの伝説曲の第3曲と第4曲の「トゥオネラの白鳥」「レミンカイネンの帰郷」の併録あり。 CD篇 "Great Norwegian Performers 1945-2000. Vol.III" グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲イ短調 op.82 ヴォーン・ウィリアムズ:揚げひばり カミラ・ウィックス(ヴァイオリン) ケルステン・アンデルセン指揮 ベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団 1985.1.17 live ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番~第1楽章 1975.6.25 ブルースター:無伴奏ヴァイオリンのための組曲 1969.7.9 サラサーテ:マラゲーニャ カミラ・ウィックス(ヴァイオリン) ロベルト・レヴィン(ピアノ) 1950.11.9 ノルウェー放送 (NRK) アーカイヴの音源 Simax PSC1832 (CD) 「ノルウェーの偉大な演奏家たち」シリーズは第二次大戦後のノルウェーの記録を全10作のアルバムによって紹介したもので、ノルウェー文化評議会、ノルウェー国立音楽アカデミー、ノルウェー放送 (NRK)、Simax Classics の共同プロジェクトとのこと。この「ノルウェーの偉大な演奏家たち 1945年-2000年 第3集」はその1枚。 音源はノルウェー放送のアーカイヴに保存されていた録音で、グラズノフの協奏曲とヴォーン・ウィリアムズの「揚げひばり」 は、ベルゲンのコンサートのlive録音。ブルスターの組曲は、ウィックスに献呈された作品とのこと。ちなみに「揚げひばり」というのを、ヒバリの唐揚げのことだと勘違いする人がいるかもしれませんが、もちろん「舞い上がるひばり」の意味なのでお間違いなきよう。 "Five Decades of Treasured Performances Camilla Wicks" メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調 Op.64 フリッツ・ブッシュ指揮 デンマーク国立交響楽団 1949.9.22、コペンハーゲン ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.77 アリ・ラシライネン指揮 ノルウェー放送管弦楽団 1994 or 1995 stereo ブラームス~ヨアヒム編:ハンガリー舞曲第7番イ長調 メンデルスゾーン~アクロン編:歌の翼に Op.34-2 ロバート・レヴィン(ピアノ) 1950、ノルウェー ドゥシュキン(伝パラディス):シシリエンヌ ホレス・マルティネス(ピアノ) 1973.11.4、ワシントン州ワナッチー stereo チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.35 ブルースタ:トロールの風車 ウィリアム・スタンバーグ指揮 ハリウッド・ボウル交響楽団 1953.8.18 ヴィエニャフスキ:ヴァイオリン協奏曲第2番ニ短調 Op.22 レオポルド・ストコフスキー指揮 ハリウッド・ボウル交響楽団 1946.8.14. サラサーテ:序奏とタランテラ Op.43 指揮者不詳 サンフランシスコ交響楽団 録音時期不明 バーバー:ヴァイオリン協奏曲 Op.14 シクステン・エールリンク指揮 ストックホルム・フィル or ストックホルム放送響 録音時期不明 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第10番ト長調 Op.96 R・シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 Op.18 マーティン・カッツ(ピアノ) 1986.2.11、ミシガン州アナーバー stereo R・シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 Op.18~第2楽章 ホレス・マルティネス(ピアノ) 1973.11.4、ワシントン州ワナッチー stereo ショスタコーヴィチ~ツィガーノフ編:前奏曲集 前奏曲第10番嬰ハ短調 Op.34-10 前奏曲第15番変ニ長調 Op.34-15 前奏曲第16番変ロ短調 Op.34-16 前奏曲第24番ニ短調 Op.34-24 マーティン・カッツ(ピアノ) 1986.2.11、ミシガン州アナーバー stereo ガーシュイン~ハイフェッツ編:3つの変奏曲 ロズリン・フランツ(ピアノ) 1980、カリフォルニア州フラトン(ステレオ) シューベルト~ヴィルヘルミ編:アヴェ・マリア ホレス・マルティネス(ピアノ) 1960.10.8、カリフォルニア州アナハイム ショーソン:詩曲 Op.25 アルバート・ハーシュ(ピアノ) 1963.2.26、テキサス州ダラス イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番ニ短調 Op.27-3「バラード」 1988夏、テキサス州、ラウンド・アップ・フェスティヴァル stereo フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番イ長調 Op.13 マイルズ・グレイバー(ピアノ) 1985.3.24、サンフランシスコ stereo タイユフェール:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ブライアン・コネリー(ピアノ) 1990.10.15、サンフランシスコ ニン~コチャンスキ編:4つのスペインの歌 マーティン・カッツ(ピアノ) 1986.2.11、ミシガン州アナーバー stereo ブロッホ:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ロズリン・フランツ(ピアノ) 1980、カリフォルニア州フラトン stereo ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ニール・カーツ(ピアノ) 1991.4.5、ヒューストン stereo バルトーク:ラプソディ第2番 ジーン・バー(ピアノ) 1984.3.4(ステレオ) ラヴェル:ツィガーヌ アルバート・ハーシュ(ピアノ) 1963.2.26、テキサス州ダラス イングヴァル・ヴィックス:砂漠への讃歌 ホレス・マルティネス(ピアノ) 1973.11.4、ワシントン州ワナッチー グリーグ:ピアノ・ソナタ第3番ハ短調 Op.45~第1楽章 ロバート・レヴィン(ピアノ) 1947(ドキュメンタリー映画より) グリーグ:ピアノ・ソナタ第3番ハ短調 Op.45~第2、3楽章 ロバート・レヴィン(ピアノ) 録音時期不明(ラッカー盤からの復刻、恐らくライヴ) ヴィエニャフスキ:ヴァイオリン協奏曲第1番嬰ヘ短調 Op.14 ホレス・マルティネス(ピアノ) 1960.8.10、カリフォルニア州アナハイム ヴィエニャフスキ:スケルツォ=タランテラ Op.16 ホレス・マルティネス(ピアノ) 1973.11.4、ワシントン州ワナッチー stereo サラサーテ:マラゲーニャ ホレス・マルティネス(ピアノ) 1960.8.10、カリフォルニア州アナハイム サラサーテ:サパテアード ロズリン・フランツ(ピアノ) 1980、カリフォルニア州フラトン stereo ショパン~ミルシテイン編:夜想曲 嬰ハ短調 ホレス・マルティネス(ピアノ) 1960.8.10、カリフォルニア州アナハイム ショパン~ヴィルヘルミ編:夜想曲 ニ長調 Op.27-2 ベンジャミン:聖ドミンゴ クライスラー:中国の太鼓 ピアノ伴奏 1948頃 スカルラテスク:バガテル ホレス・マルティネス(ピアノ) 1960.8.10、カリフォルニア州アナハイム ベンジャミン:ジャマイカのルンバ マイケル・クーパー(ピアノ) ミシガン州アナーバー stereo カミラ・ウィックス(ヴァイオリン) Music And Arts M&ACD1282 (6CD) 録音年は幅広く、1940年代から1990年代まで。結婚後の1950年代末からは家庭生活を優先していたわけですが、演奏活動をやめてしまっていたわけではないので、限定的ながら録音が残っていたんですね。やはり若い頃の方が冴えているようですが、タイユフェールの作品はめずらしいし、1985年のフォーレのヴァイオリン・ソナタ第1番なんて、いいですね(残念、ピアノがいまひとつ)。妙なたとえかも知れませんが、その演奏には、大家然としたものではなく、マイナー・ポエットの佳品を聴くかのような味わいがあります。 "Camilla Wicks Violin Concertos & Pieces" Disc1 1. ブラームス~ヨアヒム編:ハンガリー舞曲第7番イ長調 2. ショパン~ミルシテイン編:ノクターン嬰ハ短調(遺作) 3. ショパン~ウィルヘルミ編:ノクターン Op.27-2 4. クライスラー:中国の太鼓 5. シューベルト~ウィルヘルミ編:アヴェ・マリア 6. メンデルスゾーン~アクロン編:歌の翼に 7. メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調 Op.64 カミラ・ウィックス(ヴァイオリン) ロバート・レヴィン(ピアノ:1,6) ホレス・マルティネス(ピアノ:2,5) フリッツ・ブッシュ指揮 デンマーク王立交響楽団(7) 1950/ノルウェー(1,6)、1960.8.10/カリフォルニア(2,5)、1948年放送(3,4)、 1949.9.22/コペンハーゲン(7) Disc2 1. チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.35 2. ヴィエニャフスキ:ヴァイオリン協奏曲第2番ニ短調 Op.22 3. ヴィエニャフスキ:ヴァイオリン協奏曲第1番嬰ヘ短調 Op.14 カミラ・ウィックス(ヴァイオリン) ホレス・マルティネス(ピアノ:3) ウィリアム・スタインバーグ指揮 ハリウッドボウル交響楽団(1) レオポルド・ストコフスキー指揮 ハリウッドボウル交響楽団(2) 1953.8.18(1)、1946.8.14(2)、1960.8.10(3)/カリフォルニア Disc3 1. ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.61 2. サラサーテ:序奏とタランテラ Op.43 3. サラサーテ:マラゲーニャ カミラ・ウィックス(ヴァイオリン) ブルーノ・ワルター指揮 ニューヨーク・フィル(1) ホレス・マルティネス(ピアノ:3) 伴奏団体不明(2) 1953.2.15/カーネギー・ホール(ライヴ)(1)、1960/サンフラシスコ(3) Disc4 1. シベリウス:ヴァイオリン協奏曲ニ短調 Op.47 2. ブルースタ:トロールの風車 3. スカルラテスク:バガテル 4. バーバー:ヴァイオリン協奏曲Op.14 5. ベンジャミン:サントドミンゴ 6. ベンジャミン:ジャマイカ・ルンバ カミラ・ウィックス(ヴァイオリン) シクステン・エールリンク指揮 ストックホルム放送交響楽団(1,4?) ホレス・マルティネス(ピアノ:3) 伴奏者不明(5) 1952(1)、1953/ハリウッドボウル(2)、1960.8.10(3)、1948年放送(5) すべてmono録音。 Profil PH18095 (4CD) Profileレーベルによるドイツ放送局音源発掘シリーズのひとつ。ブルーノ・ワルターとのベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲などはわりあい古くから知られていた録音ですね。 Camilla Wicks 右は6歳の時の写真ですから、この翌年にデビューしたんですね。 (Hoffmann) |