160 ブラームスの交響曲のdiscから その2




 ブラームスの交響曲、今回は全集以外のレコードから私の好きなものを思いつくまま取りあげてみます。最初は個人的に特別であるこの2枚―

ブラームス:交響曲第2番
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮 ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団
1980.11
独DG 2532 014 (LP)

ブラームス:交響曲第4番
ルドルフ・ケンペ指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
1960.2
英WRC ST932 (LP)


 ジュリーニの2番はこのオーケストラのみならず、ジュリーニが残したレコードの中でも白眉。同曲はフィルハーモニア管弦楽団との1962年10-11月録音(EMI)、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との1991年4月録音(DG)もあるが、私がいちばん好きなのはこれ。いかにもロマン主義のシンフォニー。

 ケンペ盤はWRC盤。別盤も所有しているが、original盤は持っていない(見たこともない)。構築性と旋律の歌謡性との見事なバランス。ビーチャムの招きでロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者となったのが1961年。その前年の録音。晩年のミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団との録音(BASF)も優れた演奏ながら、オーケストラの響きの充実度でこちらが上。なお、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との全曲録音も忘れ難いが、1956年録音の4番のLPを所有しておらず、見たこともない。これがリリースされたのはCD時代になってからでは?

ブラームス:交響曲第2番、悲劇的序曲
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1966.12.7-9、1967.12.18
英EMI ASD2421 (LP)


 前回全集盤で取りあげたものは省略しようかと思っていたが、これは例外。幸い、ASDナンバーの1枚があるのでこれを。数あるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のレコードの中でも、このオーケストラの魅力をもっとも引き出しているのがこのレコードではないか。もちろん、1番から4番まですべてすばらしいが、とりわけ2番は格別。4番のレコードに併録された大学祝典序曲も、とくに見事なもの。

 以上3枚は私の中で別格級の位置付け。以下はこれに次ぐもの―


ブラームス:交響曲第3番、ハンガリー舞曲 第3、10、1番
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団
1963.7.8-9
独TELEFUNKEN SLT43 088 (LP) stereo

ブラームス:交響曲第4番
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク国立フィルハーモニー管弦楽団
1960.4.21-25
独TELEFUNKEN 6.41841 (LP) stereo


 カイルベルトは同じTELEFUNKENからベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との1、2番も出ているが、この3番と4番を挙げたい。3番はそれなりに古い盤、4番はおそらく1970年代の再発盤だが、それでも国内廉価盤とはかなり音が異なるので、ぜひともTELEFUNKEN盤で聴いて欲しい。ピッチが低いと感じる人もいるかもしれないが、おそらくこの時代のそれぞれのオーケストラのチューニングと思われる(1960年代から徐々にピッチが高くなっていったのはよく知られていること)。ちなみに、学生時代、私の部屋に来た友人3人に、指揮者名を明かさずにカイルベルトの4番を聴かせて、次にカラヤンの同曲のレコード(DG)に針を下したところ、全員が爆笑してしまったことがある。だれの演奏だか知らずに聴くと、かえっていろいろわかっちゃうんですよ(笑)

 ここまで、1番のレコードが出てきていないので、ここで1、2枚取りあげておくと―

ブラームス:交響曲第1番
ヨーゼフ・クリップス指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1956.10
英DECCA LXT5292 (LP) mono
米LONDON CS6110 (LP) stereo


 DECCA盤はmono、LONDONの方はBB盤、英プレスで"STEREOPHONIC"。EQカーヴはいずれもRIAA。

 知る人ぞ知る(?)レコード。音色は明るめ、カイルベルトの渋さとは異なる魅力で、こうした暖色系の響きも捨て難い。かなり熱気漲る1番。

ブラームス:交響曲第1番、悲劇的序曲
ブルーノ・ワルター指揮 コロムビア交響楽団
1959.11.25、1960.1.23
日CBS Sony SOCL1072 (LP)


 これも全集盤で取りあげているが、例外としてこの国内盤を。ただしきわめて個人的な思い入れで、中学生の時に初めてブラームスの音楽を聴いたレコードだから。オーケストラの編成はわりあい小規模で、static。熱気とか高揚感とかいったものとは無縁。それでも、音楽の運びはワルターらしく、たいへんロマン主義的で、ときどきこの国内盤を取り出して、中学生時代、このレコードを熱心に聴いたときの気分に浸りたくなる。

 そんなの、個人的な思い入れじゃないかって? だからそう言ってるじゃないですか。だれだって、そんなdiscのひとつやふたつは持っているでしょ。遠慮するこたぁありません。個人的な思い入れというものを、自分だけに許された特権だと思っていればいいいんですよ(笑)


(Hoffmann)