164 女流ヴァイオリニストのdiscから その3




 今回は我が国の女流ヴァイオリニストを取り上げます。最初はこの人から―

「諏訪根自子 コロムビア録音全集」
ドヴォルザーク:ユーモレスク*(Rec: 1933/8/22 SP No.27575)
ドルドラ:思い出(Rec: 1933/8/22 SP No. 27641)
クライスラー:「プニャーニの形式による前奏曲とアレグロ」より アレグロ*(Rec: 1933/8/22 SP No.27575)
ゴダール:ジョスランの子守歌*(Rec: 1933/8/22 SP No.27609)
リース:無窮動*(Rec: 1933/10/3 SP No.27609)
フィオリロ:カプリス(Rec: 1933/10/3 SP No.27641)
チャイコフスキー:アンダンテ・カンタービレ(Rec: 1934/12/5 SP No.28141)
マリー:金婚式(Rec: 1934/12/5 SP No.28141)
フォーレ:夢のあとに(Rec: 1934/12/12 SP No. 28185)
ドリゴ:セレナード(Rec: 1934/12/12 SP No.28185)
サラサーテ:アンダルシアのロマンス(Rec: 1934/12/20 SP No.28225)
キュイ:オリエンタル(Rec: 1934/12/20 SP No.28225)
マスネ:タイスの瞑想曲(Rec: 1935/1/27 SP No. 28298)
サン=サーンス:白鳥(Rec: 1935/1/27 SP No. 28298)
シューベルト:セレナード(Rec: 1935/3/6 SP No.28383)
J・S・バッハ:ガヴォット(Rec: 1935/3/6 SP No. 28383)
J・S・バッハ=グノー:アヴェ・マリア(Rec: 1935/3/20 SP No.29319)
グラズノフ/クライスラー編:スペイン風セレナード(Rec: 1935/3/20 SP No.28645)
グノー:セレナード(Rec: 1935/4/10 SP No.29453)
瀧廉太郎/山田耕筰 編:荒城の月(Rec: 1935/4/10 SP No. 29453)
田中穂積/山田耕筰 編:美しき天然(Rec: 1935/4/23 SP No.28768)
ドヴォルザーク/クライスラー編:インディアンの悲歌(Rec: 1935/4/23 SP No.28768)
ドリゴ:火花のワルツ(Rec: 1935/5/8 SP No.28645)
パデレフスキ/クライスラー編:メヌエット(Rec: 1935/5/8 SP No.29319)
ファリャ:スペイン舞曲(Rec: 1935/5/29 SP No.29734)
シューマン:トロイメライ(Rec: 1935/5/29 SP No.29734)
諏訪根自子(ヴァイオリン)
上田仁(ピアノ*)
ナデイダ・ロイヒテンベルク(ピアノ)
録音:1933年~1935年
Altus ALTLP139/140 (2LP)




 諏訪根自子は1920年生まれ、13歳でデビューして「天才少女」「神童」と呼ばれたヴァイオリニスト。外務省の後援により1936年にベルギーへ留学。1938年にはパリに移り、翌1939年の第二次世界大戦勃発後も帰国せず、1943年10月19日と20日の両日、ハンス・クナッパーツブッシュの指揮するベルリン・フィルと共演。ブラームスのヴァイオリン協奏曲を演奏して成功を収める。ドイツ宣伝相ゲッベルスからはストラディヴァリウスとされるヴァイオリン(真贋・来歴不明)を贈られる。その後もスイスで演奏会を開くなど演奏活動を継続したが、ベルリンが陥落してドイツが連合国に降伏するとアメリカ軍に身柄を拘束され、米国を経て1945年12月6日に帰国。

 1960年以後は演奏の第一線から引退。伝説中の人物となっていたところ、1978年から1980年に録音されたバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」がキングレコードから発売。その後1990年代になって、時折私的なサロン・コンサートを開くなどしていた模様。2012年に死去。

 上記のレコードは、1933年から1935年にかけて、13歳から15歳の少女期、コロムビアのSPレコードに録音した商品をまとめて復刻したもの。SP盤の板起こしでしょう。CDで出たときはあまり聴きたいとも思わず、LPで出たので入手。録音は古いながらも、音質はたいへん聴きやすい上質なもの。なぜか、我が国ではヴァイオリン・ソナタばかりが好まれて、小品集などというと軽く見られる傾向があるんですが、私などはSP盤も聴くので、そうした感覚がありません。むしろ小品集も愉しめるのは、なんだか得した気分です(笑)


J・S・バッハ:シャコンヌ
巖本眞理(ヴァイオリン)
1949
日本Columbia G30、G31 (2SP)


 1926年、日本人の父、アメリカ人の母の間に生まれ、出生時の戸籍名は巖本メリー・エステル、後に巖本眞理と改名。活動の大半を弦楽四重奏に費やしており、とくにある時期以降はソロ活動をやらないと公言していたことから、ソロを受け持った録音はごく初期のものに限られ、その数も少ない。巖本眞理弦楽四重奏団を名乗っての活動は1966年から。この、当時の我が国を代表する四重奏団の録音は少なくからず残されているが、1979年、巖本眞理が53歳で他界して活動を終了している。

 上記はSP盤2枚。巖本眞理のソリストとしてのdiscはこれしか所有していません。たとえ見つけても、CDでは聴きたくない(笑)


巖本眞理


 次は藤川真弓。ヴァイオリニストにふさわしい名前ですね(笑)1970年チャイコフスキー・コンクールで第2位。ちなみにこのときの1位はギドン・クレーメル。初期の録音では以下の3枚を所有しています。

「藤川真弓 / ヴァイオリン・リサイタル」
ヴィターリ:シャコンヌ
ルクレール:ヴァイオリン・ソナタニ長調
タルティーニ:ヴァイオリン・ソナタ「悪魔のトリル」
クライスラー:前奏曲とアレグロ(プニャーニのスタイルによる)
藤川真弓(ヴァイオリン)
清水由香里(ピアノ)
1971.12
東芝 EAC-80132 (LP)





モーツアルト:ヴァイオリン協奏曲第3番、第5番「トルコ風」
藤川真弓(ヴァイオリン)
パーヴォ・ベルグルンド指揮 日本フィルハーモニー管弦楽団
1971.11.29-30
東芝 EAA-80024 (LP)
Pathe Marconi 2C065-93594 (LP)


チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番
藤川真弓(ヴァイオリン)
エド・デ・ワールト指揮 ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
1973?
蘭PHILIPS 6500 708 (LP)


 以上3枚の中では、最初のリサイタル盤が好きです。モーツアルトの協奏曲は後に全集録音があります。

モーツアルト:ヴァイオリン協奏曲全集
藤川真弓(ヴァイオリン)
ヴァルター・ウェラー指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
1979.4, 1980.2, 1980.9, 1980.10,
英DECCA D239D4 (4LP)




 蘭プレス。

 この演奏はすばらしい。オイストラフ、グリュミオーと同等以上とまでは言いませんが、取り出す機会が多いのはむしろこれ。伴奏も上出来です。残念ながら、録音がややカン高い。高域を少し落としたくなります。

 今回、続けて石川静のレコードからいくつか・・・と思っていたんですが、私がもっとも好む我が国の女流ヴァイオリニストでもあるので、次回、あらためて取り上げることとします。


(Hoffmann)