110 あえて聴くmono盤 その4 ルドルフ・ケンペ篇 stereo盤が存在するのに、「あえて聴くmono盤 その4」は、「『同曲同演・異盤』聴きくらべ その1」で取り上げた指揮者、今回はルドルフ・ケンペのレコードです。 "Nights in Vienna" スッペ:「ウィーンの朝・昼・晩」序曲 1958.2.18-19 ホイベルガー:「オペラの舞踏会」序曲 1958.2.12,19,20,22 J.シュトラウスII世:「こうもり」序曲 レハール:ワルツ「金と銀」1958.2.12,19,20,22 レズニチェク:「ドンナ・ディアナ」序曲1958.2.18-19 ヨゼフ・シュトラウス:「天体の音楽」1958.2.12,19,20,22 J.シュトラウスI世:「ラデツキー行進曲」1958.2.12,19,20,22 ルドルフ・ケンペ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1958.2.12-22 英His Master's Voice ALP1637 (LP) (mono) スメタナ:「売られた花嫁」序曲 22 Dec 1958 ニコライ:「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲 19, 22 Dec 1958 ウェーバー:「オベロン」序曲 18, 19 21 22 Dec 1958 メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」18, 19 21 22 Dec 1958 ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」21 Dec 1958 ルドルフ・ケンペ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1958.12.18-22 英His Master's Voice ALP1765 (LP) (mono) シューベルト:「ロザムンデ」から グルック arr.モットル:バレエ組曲 ルドルフ・ケンペ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1961.12.11,12,15、1961.12.12-13 英His Master's Voice ALP1910 (LP) (mono) 仏La Voix de son Maitre FALP735 (LP) (mono) 仏La Voix de son Maitre ASDF735 (LP) (stereo) コダーイ:「ハーリ・ヤーノシュ」組曲 チャイコフスキー:主題と変奏 ゴトヴァッツ:「あの世からきた悪漢」から ヴァルター・バリリ(ヴァイオリン・ソロ) ルドルフ・ケンペ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1961.12.17、1961.12.12-13、1961.12.11-17 英His Master's Voice ALP1930 (LP) (mono) ここまで、オーケストラはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団。レーベルはすべてmono期の半円ニッパー。 個人的にはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の美点を最大限に引き出し、活かすのはこの時期のケンペと'60年代のバルビローリであったと思っています。"Nights in Vienna"や、シューベルト、グルック(モットル編曲版)などはとくにウィーンの音色が似合います。ニコライ、ウェーバー、メンデルスゾーンなどの序曲も、うまいものですね。ことさらに効果を狙ったりはしていないのに、その充実ぶりは作品の格まで押し上げてしまっているようです。チャイコフスキーの主題と変奏はヴァルター・バリリの独奏であることから、ムカシから有名な盤です。おかげでstereo盤は超高価なはず。ついでに付け加えると、コダーイの「ハーリ・ヤーノシュ」はツィンバロン・ソロにJohn Leachの名前がクレジットされています。このツィンバロン奏者は、イシュトヴァン・ケルテスのDECCA盤、フェレンツ・フリッチャイのDG盤の同曲のレコーディングにも参加していました。 ベートーヴェン:「フィデリオ」序曲 同:「レオノーレ」序曲 第3番、 同:「コリオラン」序曲 同:「プロメテウスの創造物」序曲 同:「エグモント」序曲 ルドルフ・ケンペ指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1957.7.1, 9.5 英EMI MFP2056 (LP) (mono) R・シュトラウス:ドン・キホーテ 同:ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら ポール・トルトゥリエ(チェロ) Giusto Cappone(ヴィオラ) Siegried Borries(ヴァイオリン) ルドルフ・ケンペ指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1958.1.1-7 英His Master's Voice ALP1759 (LP) (mono) チャイコフスキー:交響曲第5番 ルドルフ・ケンペ指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1959.5.2-6 英His Master's Voice ALP1800 (LP) (mono) ここまで、オーケストラはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。レーベルはベートーヴェンのみmfpエンジ、後の2枚はmono期の半円ニッパー。 なるほど、ベートーヴェン、R・シュトラウス、チャイコフスキーにはウィーンよりもベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の響きがふさわしいように思えます。重量感が違います。どことなく、未だフルトヴェングラーの刻印が残っている時期に、その音色を活かしていると思えます。録音に関しては、なかでもベートーヴェンがたいへん美しい。 スメタナ:「売られた花嫁」組曲 1961.1、4.26,27 ドヴォルザーク:スケルツォ・カプリチオーソ 1961.1、4.26,27 ワインベルガー:「バグパイプ吹きのシュワンダ」からポルカとフーガ 1961.1 ルドルフ・ケンペ指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 英His Master's Voice ALP1880 (LP) (mono) フンパーディンク:「ヘンゼルとグレーテル」組曲 メンデルスゾーン:「真夏の夜の夢」から ルドルフ・ケンペ指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 1961.1、1961.1.31, 2.2-3 英His Master's Voice ALP1892 (LP) (mono) こちらはロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団。レーベルはすべてmono期の半円ニッパー。CG 25 Dで聴きました。 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団は、ケンペが1960年にビーチャムから要請されて、1961年に首席指揮者となっています。なので、これは就任直前か直後の録音ということになりますが、もう前年2月にはブラームスの交響曲第4番のたいへんすぐれた演奏を録音済み。「売られた花嫁」の序曲はウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との録音からわずか2年での再録音ですが、こちらは計4曲を演奏した組曲版。メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」も4曲、フンパーディンクは5曲です。 以上、挙げたレコードは、すべてstereo盤も所有していますが、それはstereo盤を先に入手していたから。なので、さすがにoriginal盤は少なく、後の再発盤や国内盤も含めての話。その再発盤や国内盤がダメだとは思いませんが、こうしてmono盤を次々と聴いて、特段不満もありません。とくに空間表現に関しては、自然な奥行き感はmono盤の方が上。広がりだって、mono盤にこそ、スピーカーの前の空間での3次元的な広がりはあると感じています。すくなくとも、あまり良質でないstereo録音の不自然な2channelよりは、ずっと自然。個人的には「mono盤も持っている」のではなくて、「stereo盤も持っている」なのです。 (Hoffmann) |