112 あえて聴くmono盤 その6 ジョージ・セル篇




 stereo盤が存在するのに、「あえて聴くmono盤 その6」は、指揮者ジョージ・セルです。

マーラー~クルシェネク編:交響曲第10番からアダージョ、プルガトリオ
R・シュトラウス:交響詩「死と変容」
ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団
1958.11.1、1957.3.29
英Columbia 33SX1845 (LP) (mono)

R・シュトラウス:ドン・キホーテ
同:交響詩「ドン・ファン」
ピエール・フルニエ(チェロ)
ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団
1960.10.28-29、1957.3.29
英Columbia 33SX1852 (LP) (mono)

シューマン:交響曲第2番
ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団
1960.10.21,24
英Columbia 33SX1853 (LP) (mono)


 以上は紺金。EQカーヴはColumbiaか。


ベートーヴェン:交響曲第7番
ワーグナー:「タンホイザー」序曲
ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団
1959.10.30-31、1962.1.26
英Columbia 33SX1869 (LP) (mono)

シューベルト:交響曲第9番「グレート」
ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団
1957.11.1
英Columbia 33SX1873 (LP) (mono)

メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」
同:「フィンガルの洞窟」序曲
ウェーバー:「オベロン」序曲
ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団
1962.10.26、1962.10.26、1963.1.4
英Columbia 33SX1880 (LP) (mono)

モーツアルト:ディヴェルティメント第2番 K.131
同:交響曲第33番 K.319
ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団
1963.4.20、1962.10.26
英Columbia 33SX1913 (LP) (mono)

ブラームス:交響曲第1番
ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団
1966.10.7
英Columbia (EMI) CX5279 (LP) (mono)


 以上、セミサークル。EQカーヴはRIAAだと思われるのですが、ややカン高い。少し高域を落としたくなります。


"Magic Vienna"
ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団
J・シュトラウスII:美しく青きドナウ
J・シュトラウスII&ヨーゼフ・シュトラウス:ピチカート・ポルカ
J・シュトラウスII:うわごと
同:春の声
同:オーストリアの村つばめ
同:常動曲
1962.1.5
英Columbia 33SX1618 (LP) (mono)


 黒地に青いロゴの通称"BLUE COLUMBIA"。EQカーヴはRIAA。

 総じて言えることなんですが、CBS Sonyの国内stereo盤は線が細いというか、ちょっと音が痩せて神経質な印象があります。それに、バランスも高域上がりで、それがセル、クリーヴランド管弦楽団の明るい(明るすぎる)音色のimageを作っていたんじゃないでしょうか。

 ここで聴けるmono盤の印象はかなり異なっており、とくに紺金の3枚は線が太くて重厚です。この3枚ではとくにマーラーがすばらしいですね。国内stereo盤だと神経質に聴こえるところ、また金管が突出して聴こえるところ、鋭くなりすぎず、オーケストラの中に有機的に溶け合って響きます。

 セミサークルの盤は、やや高域寄りのバランスと聴こえますが、それでもこれらのmono盤だと響きが豊かになった印象があります。高域側を少し補正するとさらに表情が落ち着いて、ウエーバーの「オベロン」序曲など、国内stereo盤では、弦の動きが速いパッセージがせわしなく聴こえたところ、こちらではアンサンブルの妙技と感じられます。おかげで演奏に対する評価も上がってしまいそう(笑)なかでも国内盤では埃っぽく聴こえたシューベルトとの音質差は著しく、メンデルスゾーンは交響曲第4番も「フィンガルの洞窟」もスケール・アップします。ベートーヴェン交響曲第7番やワーグナー「タンホイザー」序曲も、後の国内盤や米Columbia盤で聴くよりも、響きが豊かになって、はるかに重厚、いかにも血が通っているといった印象です。つまり国内盤や米Columbia盤は響きが痩せてやや貧血気味に聴こえるということです。いわんやCDにおいておや(笑)

 "BLUE COLUMBIA"の"Magic Vienna"は、以前、stereo盤をさしおいて取り上げた盤です。密度、実在感ともにstereo盤の出る幕ではないなと思っています(笑)

 ジョージ・セルの英Columbiaのstereo盤は滅多に見かけず、見つかってもかなりの高額盤です。じつは少数ながら私も持っている盤はあるんですが、特段優秀なstereo録音とも感じられず、mono盤でも一向にかまわないと判断しています。

 なお、ブラームスの交響曲第1番は1957年の旧録音(mono録音)もあり、それもまた優秀な演奏なんですが、上に挙げたのは1966年のstereoによる全集録音のmono盤です。ついでに言ってしまうと、上記のレコードのstereo盤しか聴いたことがなかった頃は、ジョージ・セルのレコードは、クリーヴランド管弦楽団でもニューヨーク・フィルハーモニックでも、1950年代のmono録音の方が、すぐれた演奏だと思っていたんですよ。でも上記mono盤を聴くようになってからは1960年代のセルもいいなと思うようになりました。


(Hoffmann)