134 モーツアルトのピアノ協奏曲 その3 クララ・ハスキルによるdisc




 一応 「レコード」と言ったらレコードのこと。「CD」はもちろんCDのこと。"disc"と言ったらレコードとCDのことだとご理解下さい。よく、「レコードと言ったらすべてレコードなんだ!」とか「アナログLPだとかアナログディスクなんてことばは認めない!」なんて、威勢よく吠えている人がいますが、読者のみなさまにおかれましては、好きなように呼んでいただいてかまわないんですよ。私も特段厳密な規則を定めているわけではなくて、「なんとなく」そのように使い分けているというだけの話です。

 今回はクララ・ハスキルによるモーツアルトのピアノ協奏曲のdiscです。


Clara Haskil、左はCharlie Chaplinと―。

 LP篇


モーツアルト:ピアノ協奏曲第23番 K.488
 クララ・ハスキル(ピアノ)
 パウル・ザッハー指揮 ウィーン交響楽団
 1954.10
仏PHILIPS G05.335R (10inch) mono


モーツアルト:ピアノ協奏曲第20番 K.466
 クララ・ハスキル(ピアノ)
 ベルンハルト・パウムガルトナー指揮 ウィーン交響楽団
 1954.10
蘭PHILIPS A00752R (10inch) mono


 以上2点は10inch盤。この2曲はこの10inch盤で聴くのが好き。EQカーヴはRIAAで問題なし。どちらを聴いても1曲で満足できる。1曲聴き終わって、ほっといたら次の曲が始まってしまうCDでは得られない余韻。


モーツアルト:ピアノ協奏曲第23番 K.488
同:ピアノ・ソナタ 第10番 K.330
同:デュポールのメヌエットによる9つの変奏曲 K.573
 クララ・ハスキル(ピアノ)
 パウル・ザッハー指揮 ウィーン交響楽団
 1954.10(協奏曲)、1954.5.5-6(協奏曲以外)
仏PHILIPS L02.084L (LP) mono


 23番は上記10inch盤と同じ。これもいい音で聴ける。


モーツアルト:ピアノ協奏曲第9番「ジュノーム」 K.271
同:ピアノ協奏曲第23番 K.488
 クララ・ハスキル(ピアノ)
 パウル・ザッハー指揮 ウィーン交響楽団
 1954.10
仏PHILIPS 6570 393 (LP) 疑似stereo


 これも23番は10inchと同じ演奏ながら、こちらは疑似stereo盤。ややもやつく。


モーツアルト:ピアノ協奏曲第20番 K.466
同:ピアノ協奏曲第24番 K.491
 クララ・ハスキル(ピアノ)
 イーゴリ・マルケヴィチ指揮 コンセール・ラムルー管弦楽団
 1960.11
仏PHILIPS 6500 265 (LP) stereo


 さすがにstereo録音は鮮明だが、マルケヴィチのアタックが厳しすぎるというか、鋭すぎる。鋭角のモーツアルト。


モーツアルト:交響曲第29番 K.201
同:ピアノ協奏曲第20番 K.466
 クララ・ハスキル(ピアノ)
 フェレンツ・フリッチャイ指揮 ベルリンRIAS交響楽団
 1955.10.1(交響曲)、1954.1.11(協奏曲)
独DG 2535 708 (LP) mono

 折り目正しいフリッチャイ。アンサンブルがやや荒いと聴こえるのは録音が古いせいか。


モーツアルト:ピアノ協奏曲第19番 K.459
同:ピアノ協奏曲第27番 K.595
 クララ・ハスキル(ピアノ)
 フェレンツ・フリッチャイ指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(19番)
 バイエルン国立管弦楽団(27番)
 1955.9(19番)、1957.5(27番)
独DG 18 383 LPM (LP) mono


 ジャケットは仏盤なれど中身は独プレス盤。若い頃、27番がいちばん好きだったので、よく聴いた。


モーツアルト:ピアノ協奏曲第9番「ジュノーム」 K.271
同:ピアノ協奏曲第19番 K.459
 クララ・ハスキル(ピアノ)
 カール・シューリヒト指揮 シュトゥットガルト放送交響楽団
 1952.5.23(9番)、1956.7.4(19番)
仏IPG 7618 (LP) mono


 9番は放送用録音か。19番はルートヴィヒスブルク音楽祭live。


モーツアルト:ピアノ協奏曲第20番 K.466
同:ピアノ協奏曲第19番 K.459
 クララ・ハスキル(ピアノ)
 ヘンリー・スウォボダ指揮 ヴィンテルトゥール交響楽団
 1950.9
日本コロムビア OW-9058-AW (LP) mono
ワーナーパイオニア G-10534 (LP) mono


 Westminster原盤。これもいいレコード。


モーツアルト:ピアノ協奏曲第27番 K.595
同:ピアノ協奏曲第20番 K.466
 クララ・ハスキル(ピアノ)
 オットー・クレンペラー指揮 ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団(27番)
 フィルハーモニア管弦楽団(20番)
 1956.9.9、モントルー(27番)、1959.9.8、ルツェルン(20番)
日本コロムビア OS-7079-BS (LP) mono


ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番
モーツアルト:ピアノ協奏曲第24番 K.491
 クララ・ハスキル(ピアノ)
 マリオ・ロッシ指揮 RAIトリノ管弦楽団(ベートーヴェン)
 アンドレ・クリュイタンス指揮 フランス国立放送管弦楽団(モーツアルト)
 1960.4.22(ベートーヴェン)、1955.12.8(モーツアルト)
日本コロムビア OS-7152-BS (LP) stereo(ベートーヴェン)、mono(モーツアルト)


モーツアルト:デュポールのメヌエットによる9つの変奏曲 K.573
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第18番 op.31-3
シューベルト:ピアノ・ソナタ D.845 op.42
シューマン:子供の情景 op.15
モーツアルト:ピアノ協奏曲第9番「ジュノーム」 K.271
 クララ・ハスキル(ピアノ)
 オットー・アッカーマン指揮 北西ドイツ放送管弦楽団
 1956.5.17、チュリヒ、トーンハレ(協奏曲以外)
 1954.6.11(協奏曲)
日本コロムビア OS-7077→8-BS (LP) mono


 この米ブルーノ・ワルター協会原盤の3点の国内盤は、大学生の時に購入したと記憶している。CDでより音質の良いものが出たとしても手放せない(笑)クリュイタンスとの24番は後に出たINA ArchivesのCDの方がいい。


"Clara Haskil Mozart"
蘭PHILIPS 6768366 (7LP)


 1970年代に出たPHILIPS録音のセット。若い頃に買ったので、当時国内盤で聴くよりは良かった。たとえばマルケヴィチとの共演盤など、国内盤でジャケットがキンキラキンの"Audiophile Collector's"というシーズで出たものよりも余程良い。いまとなっては上記の諸盤とくらべて音質的に特段優位とも思えず、詳細は省略する。


Clara Haskil

 CD篇

チャイコフスキー:交響曲第4番ヘ短調 Op.36
ラヴェル:スペイン狂詩曲
モーツァルト:交響曲第35番ニ長調 K.385「ハフナー」
モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番イ長調 K.488
モーツァルト:交響曲第41番ハ長調 K.551「ジュピター」
 クララ・ハスキル(ピアノ)
 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 フィルハーモニア管弦楽団
 ロンドン、ロイヤル・フェスティヴァル・ホール、1955.5.1(チャイコフスキー)、
 1955.10.18(ラヴェル)、1956.2.6(モーツアルト) live
Ica Classics ICAC5142 (2CD) mono


モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466
同:交響曲第39番変ホ長調 K.543
同:デュポールのメヌエットによる9つの変奏曲 K.573(ボーナス・トラック)
 クララ・ハスキル(ピアノ)
 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 フィルハーモニア管弦楽団
 ザルツブルク、モーツァルテウム大ホール、1956.1.28 live
 ブザンソン音楽祭、1956.9.7(ボーナス・トラックのみ)
Ica Classics ICAC5166 (CD) mono


 この時期のカラヤン(とフィルハーモニア管弦楽団)との20番、23番の記録が残っていたのはありがたい。後のようにレガート主体で濁った音響になってしまうこともなく、ソリストを強引に支配下におこうとすることもない。バランスのよさ。前回も言ったが、未だにこのdiscに収録された交響曲は聴いていない(笑)


モーツアルト:ピアノ協奏曲第9番「ジュノーム」 K.271
 イーゴリ・マルケヴィチ指揮 フランス国立放送管弦楽団 1955.6.8 live
同:ピアノ協奏曲第19番 K.459
 イェジー・カトレヴィッツ指揮 パリ音楽院管弦楽団 1956.9.6 live
モーツアルト:ピアノ協奏曲第24番 K.491
 アンドレ・クリュイタンス指揮 フランス国立放送管弦楽団 1955.12.8 live
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466
 エルネスト・ブール指揮 パリ音楽院管弦楽団 1948.7.25 live
 クララ・ハスキル(ピアノ)
INA IMV081 (2CD) mono


 INA Archives音源。liveで4曲も入っている、とてもうれしい2枚組。

 このなかで第20番は、第1回エクサン・プロヴァンス音楽祭でのlive録音で貴重。第2次大戦中の録音はないため、この録音が戦後初の記録ということになる。かつてフランスのFNACからLPで出ていたらしい。


モーツアルト:ピアノ協奏曲第9番「ジュノーム」 K.271
同:ピアノ協奏曲第19番 K.459
 クララ・ハスキル(ピアノ)
 カール・シューリヒト指揮 シュトゥットガルト放送交響楽団
 1952.5.23(9番)、1956.7.4(19番)
ITM 950021 (CD) mono


 仏IPG 7618 (LP)と同じ。シューリヒトの共演はシューマンのピアノ協奏曲もある。


モーツアルト:ピアノ協奏曲第24番 K.491
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番
 クララ・ハスキル(ピアノ)
 アンドレ・クリュイタンス指揮 フランス国立放送管弦楽団
 1955.12.8
MUSIC & ARTS CD-863 (CD) mono
Altus ALT503 (CD) mono


 モーツアルトは日本コロムビア OS-7152-BS (LP)と同じ。Altus盤はINA音源。さすがにワルター協会原盤のレコードよりも聴きやすい音質。


"Clara Haskil The Collection"
VENIAS VN035 (23CD)


 既出盤をコピーしてまとめたものと思われる格安CDセット。もちろん法的には問題ない。お手軽に制作されたものとして批判的な意見もあるが、これだけまとまってくれるのはやはりありがたい。内容は省略。



Clara Haskil


 レコード(LP)を再生した装置について書いておきます。
 古いmono盤は、カートリッジをortofon CG 25 D、再発mono盤はSHELTERのmonoカートリッジ、唯一のstereo盤であるマルケヴィチとの共演盤はSPU AEを使いました。スピーカーはSiemensのCoaxial、いわゆる「鉄仮面」をチャンネルあたり2基の後面開放型Sachsen 202と、TANNOYのMonitor Gold10"入りCornetta、HarbethのHL Monitor MkIIIのいずれかで聴きました。
 なお、CDはすべてHarbethで聴きました。



(Hoffmann)