148 ミシェル・オークレールのdisc フランスの名ヴァイオリニスト、ミシェル・オークレールMichele Auclairは1924年11月26日パリ生まれ(1930年説もあるがおそらく誤り)。父親は著名な画家。6歳から学びはじめたヴァイオリンでパリ音楽院へ入学してジュール・ブーシュリに師事。このブーシュリという名教師はジネット・ヌヴー、ローラ・ボベスコ、ドニーズ・ソリアーノ、ジャンヌ・ゴーティエといった女流ヴァイオリニストを世に送り出した人。卒業後にはジャック・ティボーからも教えを受け、1943年、19歳にしてロン=ティボー国際コンクールで優勝、以後国際的なキャリアを開始しました。1951年にはシャルル・ミュンシュに招かれてアメリカ・デビュー、1958年にはソヴィエトでチャイコフスキーの協奏曲を演奏して絶賛されています。 ところが30代にして早々と引退。家庭に入ったためとも、事故により左手を故障したためとも言われています(引退の理由はその両方かも知れません)。ちなみに夫はアントワーヌ・デュアメルといって、なんでもジョルジュ・デュアメルの次男だとか。その後は後進の指導。パリの国立芸術学校で1969年から1990年まで教鞭を取り、パリ音楽院の名誉教授のほか、桐朋学園の客員教授も務めて、1977年には初来日しています。1989年から2004年にはボストンのニューイングランド音楽院で教師生活を送っていましたが、2005年に没。 ※ 以下のレコードに収録されたサン=サーンスの協奏曲が「最後の演奏会」だとすると、このとき46歳ということになるので、正式な引退が46歳なのか、この演奏会が例外だったのかはわかりません。 Michele Auclair いずれにせよ、残された録音は1950年代から1960年代半ばまでのものが中心になります。 LP篇 オークレールといえば、なんといっても米Remington盤を第一に思い出します。 チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35 ミシェル・オークレール(ヴァイオリン) クルト・ヴェス指揮 オーストリア交響楽団 1950 米Remington RLP-199-20 (LP) ブルッフ:・ヴァイオリン協奏曲第1番 同:コル・ニドライ ミシェル・オークレール(ヴァイオリン) ヴィルヘルム・ロイブナー指揮 オーストリア交響楽団 1952 米Remington R・199・127 (LP) 以上は前回取り上げた米Remington盤。 次に、PHILIPSへの正規録音を― メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ミシェル・オークレール(ヴァイオリン) ロベルト・ワーグナー指揮 インスブルック交響楽団 1963.2.17-20 仏PHILIPS 836.901 DSY (LP) 日PHILIPS 30PC-28 (LP) 日fontana FG-5 (LP) モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第4番 K.218 同:ヴァイオリン協奏曲第5番 K.219「トルコ風」 ミシェル・オークレール(ヴァイオリン) マルセル・クーロー指揮 シュトゥットガルト・フィルハーモニー管弦楽団 1961.12 仏fontana 200 063 WGL (LP) mono 蘭fontana 700 161 WGY (LP) 日PHILIPS 30PC-32 (LP) 日PHILIPS PC-1516 (LP) ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ミシェル・オークレール(ヴァイオリン) ウィレム・ヴァン・オッテルロー指揮 ウィーン交響楽団 1958 仏fontana FCM-44 (LP) 日fontana 6554 031 (LP) 正規stereo録音、"mono"と表記したモーツアルトの仏fontana 200 063 WGLmono以外はstereo盤。 日PHILIPS 30PC-28と日PHILIPS 30PC-32は、ジャケットがキンキラキンの「オーディオファイルコレクターズ」シリーズのもの。音質はたいしてよくなっていない。モーツアルトの日PHILIPS PC-1516は"Artist Gallery"シリーズの1枚。このシリーズはわりあい音質良好、盤も重くて厚いものが多い。メンデルスゾーンとチャイコフスキーは伴奏もなかなかの熱気。モーツアルトもいいが、ブラームスはいま一歩か。 東芝の国内盤を1枚― ルクレール:ヴァイオリン協奏曲 op.7-6 同:ヴァイオリン協奏曲 op.10-6 ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ ミシェル・オークレール(ヴァイオリン) カール・リステンパルト指揮 ザール室内管弦楽団 ジャクリーヌ・ボノー(ピアノ) 1950年代(ルクレール)、1943(ドビュッシー、ラヴェル) 東芝 AB-8137 (LP) ルクレールのoriginal盤はたしか仏 Les Discophiles Francaisの10inch盤。一度タッチ差で買い逃して、ほっと安心したことがある(高かったから・笑)。 Erato原盤のシューベルト シューベルト:ソナチネ1、2、3番 op.137 同:ソナタ「デュオ」 op.162 同:幻想曲 op.159 同:華麗なるロンド op.70 ミシェル・オークレール(ヴァイオリン) ジュヌヴィエーヴ・ジョワ(ピアノ) 1962.9.29-10.1 米MHS 606/607 (2LP) 日コロムビア RE-1040-RE、RE-1041-RE (2LPバラ) Erato原盤。米MHSは米盤、プレスはColumbia。これが満更悪くない音がする。 以下は復刻盤となる― J・S・バッハ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ミシェル・オークレール(ヴァイオリン) マリー=クレール・アラン(オルガン) 1956 LEXINGTON LEXC1026-1027 (2LP) 原盤はErato。 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」 ルクレール:ヴァイオリン協奏曲 op.7-6 同:ヴァイオリン協奏曲 op.10-6 ミシェル・オークレール(ヴァイオリン) ジュヌヴィエーヴ・ジョワ(ピアノ) カール・リステンパルト指揮 ザール室内管弦楽団 1964頃(ベートーヴェン)、1950年代(ルクレール) 波Ars Musica MSTN004C (LP) ベートーヴェンのoriginal盤は仏Musique et CultureのMC 3003 GUか? バルトーク:ヴァイオリン・ソナタ第1番 プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第2番 ミシェル・オークレール(ヴァイオリン) ジャクリーヌ・ロバン(ピアノ) 1958.10.11, 958.11.25 Coup d'Archet COUP0011 (LP) これはINA音源。 次はSpectrum SoundによるINA音源のLP化、制作はキングインターナショナル― プロコフィエフ:ヴァイオリンソナタ第2番 ニ長調 ブラームス:ヴァイオリンソナタ第3番 ニ短調 ミシェル・オークレール(ヴァイオリン) ジュヌヴィエーヴ・ジョワ(ピアノ) 1967.11.24 LPSMBA003 (LP) メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ラヴェル:ヴァイオリンソナタ バルトーク:ラプソディー第1番 ミシェル・オークレール(ヴァイオリン) マニュエル・ローザンタール指揮 フランス国立管弦楽団 ジャン=クロード・アンブロジーニ(ピアノ) 1959.4.2 stereo (メンデルスゾーン) 1958.11.25 mono (ラヴェル) 1967.11.24 mono (バルトーク) LPSMBA007 (LP) バルトーク:ラプソディ第1番 サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲第3番 ミシェル・オークレール(ヴァイオリン) ジャン=クロード・アンブロジーニ(ピアノ) ロジェ・アルバン指揮 ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団 1968.7.5 (バルトーク)mono 1970.6.27 (サン=サーンス) stereo LPSMBA011 (LP) 1970年のサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番は、オークレール最後の演奏会となったものとのこと。 テレマン:組曲 ト長調 ストラヴィンスキー:協奏的二重奏曲 シューベルト:幻想曲 ハ長調 D.934 ミシェル・オークレール(ヴァイオリン) ジュヌヴィエーヴ・ジョワ(ピアノ) 1967.4.10 LPSMBA020 (LP) 1967年のボルドーにおけるlive録音。 モーツァルト:協奏交響曲 K.364 J・S・バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番 ミシェル・オークレール(ヴァイオリン) ロジェ・ルパウ(ヴィオラ) フェルナン・ウーブラドゥ指揮 パリ室内管弦楽団 (モーツアルト) ピエール・カプドヴィーユ指揮 RTF室内管弦楽団 (バッハ) 1961.3.5 (モーツアルト)stereo 1959.1.8 (バッハ)mono LPSMBA021 (LP) Michele Auclair CD篇 Spectrum Soundから出たもの、とくにINA音源のものは注目に値する― J・S・バッハ:ヴァイオリン・ソナタ全6曲(第1番 ロ短調 BWV1014、第2番 イ長調 BWV1015、第3番 ホ長調 BWV1016、第4番 ハ短調 BWV1017、第5番 ヘ短調 BWV1018、第6番 ト長調 BWV1019) ミシェル・オークレール(ヴァイオリン) マリー=クレール・アラン(オルガン) 1956年12月、1957年1月、ドゥーヴィル 使用音源: Japanese Lexington LEXC-1026/27 LP(Sonatas No.2~5)、French Les Discophiles Francais DF 209 LP(Sonatas No.1&6) 【ボーナストラック】 J・S・バッハ: ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ(第1番 ト長調 BWV1027、第2番 ニ長調 BWV1028、第3番 ト短調 BWV1029) ポール・ドクター(ヴィオラ) フェルナンド・ヴァレンティ(チェンバロ) 1955年 使用音源: U.S.A Westminster XWN 18869 Blue label LP CDSMAC017 (CD) これはマリー=クレール・アランとのバッハにボーナストラックとしてパウル・ドクトルのバッハ、ヴィオラ・ソナタを収録したもの。 以下はINA音源によるもの― (1)モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第41番変ホ長調 K.481 (2)シューベルト:ドイツ舞曲 (3)ウェーベルン:4つの小品 Op.7 (4)ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番イ長調 Op.47「クロイツェル」 ドゥヴィ・エルリー(ヴァイオリン) ブリジット・エンゲラー(ピアノ) ライヴ録音:1980年10月7日、パリ、サル・ガヴォー stereo (5)ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ ト長調 (6)バルトーク:ラプソディ第1番 BB.94 ミシェル・オークレール(ヴァイオリン) ジャクリーヌ・ボノー(ピアノ:1-3) ジャン・クロード・アンブロジーニ(ピアノ:4) セッション録音:(5)1958年11月25日、(6)1960年9月23日 mono (7)メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調 Op.64 ミシェル・オークレール(ヴァイオリン) マニュエル・ロザンタル指揮 フランス国立放送管弦楽団 ライヴ録音:1959年4月2日 stereo CDSMBA008 (2CD) Disc 1の(1)から(4)まではドゥヴィ・エルリーの演奏。これも貴重な録音。 プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第2番 ニ長調 Op.94a ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第3番 二短調 Op.108 バルトーク:ラプソディ第1番 BB94 ミシェル・オークレール(ヴァイオリン)、ジュヌヴィエーヴ・ジョワ(ピアノ) 録音:1967年11月24日/パリ ブラームス:チェロ・ソナタ第1番 ホ短調 Op.38 アンドレ・レヴィ(チェロ)、ポール・ロヨネ(ピアノ) 録音:1961年5月23日/パリ フォーレ:エレジー Op.24、蝶々 Op.77 ドビュッシー:チェロ・ソナタ ニ短調 L.135 アンドレ・レヴィ(チェロ)、ジュヌヴィエーヴ・ジョワ(ピアノ) ライヴ録音:1958年6月27日/パリ モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第21番 ホ短調 K.304 ジャンヌ・ゴーティエ(ヴァイオリン)、ラザール・レヴィ(ピアノ) 録音:1956年2月5日/パリ モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第23番 ニ長調 K.306 モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第26番 変ロ長調 K.378 ジャンヌ・ゴーティエ(ヴァイオリン)、レリア・グッソー(ピアノ) 録音:1953年10月29日/パリ CDSMBA009 (2CD) オークレールによる演奏は3曲で、あとはアンドレ・レヴィのチェロ、ジャンヌ・ゴーティエのヴァイオリンという、これまた貴重な録音集。 ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.61 J・S・バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調BWV 1004よりサラバンド(アンコール) レオニード・コーガン(ヴァイオリン)、 エマニュエル・クリヴィヌ指揮 フランス放送ニュー・フィルハーモニー管弦楽団 ライヴ録音:1977年2月18日/メゾン・ドゥ・ラ・ラジオ stereo バルトーク:ラプソディ第1番 Sz.87、ルーマニア民俗舞曲 ミシェル・オークレール(ヴァイオリン) ジャン=クロード・アンブロジーニ(ピアノ) セッション録音:1968年7月5日/シャンゼリゼ劇場 mono サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲第3番 ロ短調 Op.61 ミシェル・オークレール(ヴァイオリン) ロジェ・アルバン指揮 ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団 ライヴ録音:1970年6月27日/ストラスブール ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77 アルテュール・グリュミオー(ヴァイオリン) ジャン・マルティノン指揮 フランス国立管弦楽団 ライヴ録音:1969年3月12日/シャンゼリゼ劇場 stereo CDSMBA012 (2CD) オークレール、コーガン、グリュミオーの協奏曲集。 プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第2番 ニ長調 Op.94a ジャクリーヌ・ボノー(ピアノ) 録音:1958年11月25日 バルトーク:ヴァイオリン・ソナタ第1番 Sz.75 ジャクリーヌ・ボノー(ピアノ) 録音:1958年10月11日 J・S・ バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番 ホ長調 BWV1042 ピエール・カプドヴィーユ指揮 RTF 室内管弦楽団 ライヴ録音:1959年1月8日/パリ モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K.364 フェルナン・ウーブラドゥ指揮 ロジェ・ルパウ(ヴィオラ) パリ室内管弦楽団 ライヴ録音:1961年3月5日/パリ テレマン:組曲 ト長調 ストラヴィンスキー:協奏的二重奏曲 シューベルト:幻想曲 ハ長調 D.934 ジュヌヴィエーヴ・ジョワ(ピアノ) ライヴ録音:1967年4月10日/ボルドー 以上すべて ミシェル・オークレール(ヴァイオリン) CDSMBA016 (2CD) プロコフィエフ、バルトークのヴァイオリン・ソナタほかを収録したもの。 このほか、Spectrum Soundからは"Great Artists"と題された4CD+4DVDのセットが出ており、DVD 3にオークレールのテレマン、シューマン、ドビュッシー、サン=サーンスの協奏曲の映像が収録されている。オークレール以外で収録されたものでは、CDではモーリス・マレシャルのチェロ、DVDではドゥヴィ・エルリー、ピエール・ドゥーカンのヴァイオリンがとりわけ貴重。収録曲、演奏者は省略。下記番号で検索して下さい。 CDSMBA035 (4CD+4DVD) Michele Auclair あとはLPで出ていたもののCD化、あるいは板起こしによりCD化されたものなど。簡略化して記載します。 Green Doorの5点― GDCL-0006(CD) これはRemingtonのチャイコフスキー、ヴァイオリン協奏曲の板起こし。 GDCL-0009(CD) 同じくRemingtonのブルッフの板起こし。 GDCL-0013(CD) 「クライスラー・アンコール&フェイヴァリット」の板起こし。ピアノはアットー・シュルホフ。収録曲は省略。 GDCL-0051(CD) ルクレールの協奏曲2曲に、ボーナストラックとしてエゴン・モルヴィッツァーによる3曲を収録。 GDWS-0017/18(2CD) シューベルト、ドビュッシー、ラヴェル、ハイドン(協奏曲)などをLCDにまとめたもの。 WINGレーベルから2枚― WCD20(CD) Remingtonのチャイコフスキー、ブルッフの協奏曲とハイドンの協奏曲の3曲を収録。 WCD44(CD) Remingtonの「コル・ニドライ」にルクレールの協奏曲2曲とクライスラーほかの小品6曲。 次にPHILIPS国内盤― PHCP-1250~2(3CD) PHILIPSのメンデルスゾーン、チャイコフスキー、モーツアルト、ブラームスのヴァイオリン協奏曲を3CDにまとめたセット。 Eratoも出している― WPCC-3353~4(2CD) シューベルトのヴァイオリンとピアノのための作品集。 melo CLASSICから― MC2014(CD) ラヴェル、バルトーク、テレマン、ストラヴィンスキー、シューベルトの5曲を収録。 Michele Auclair 今回、画像はすべてSpectrum SoundのDVDから。オークレールは笑顔の写真が見当たらないので、この映像は貴重ですね(笑) (おまけ) Devy Erlih Spectrum SoundのDVDから、ドゥヴィ・エルリーDevy Erlihの映像。これはチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。右はソロの休みのところで、それでもバックのオーケストラ演奏に合わせて、身体が揺れているところ。 (Hoffmann) |