153 ザーラ・ネルソヴァのdisc




 ザーラ・ネルソヴァZara Nelsovaは、私の中では女流チェリストのトップの座。

 1918年、カナダのウィニペグ生まれ。本名はサラ・カッツネルソンSarah Katznelson。フルート奏者だった父から幼時より音楽の手ほどきを受け、6歳からチェロを習いはじめ、ピアノを弾くアンヌとヴァイオリンを弾くアイダとの3人姉妹で地元の音楽祭に参加して成功。1928年に一家でイギリスに移住。1929年から姉妹とカナディアン・トリオを結成して、1934年からオーストラリアやアフリカなどの演奏旅行を成功させており、このトリオは1939年まで活動していたそうです。

 一方で、1930年にはラロのチェロ協奏曲を弾いて独奏者としてデビュー。1939年にはカナダに戻り、トロント交響楽団の首席チェロ奏者を務め、キャスリーン・パーロウやアーネスト・マクミランと二回目のカナディアン・トリオを結成して室内楽の方面でも活躍。1942年にはニューヨークでの演奏会でアメリカ・デビューを果たし、バルビローリの紹介でパブロ・カザルスのレッスンを受け、そのほかエマヌエル・フォイアマンやグレゴール・ピアティゴルスキー等の薫陶を受けています。1953年(1955年説あり)にはアメリカ市民権を獲得。1963年から没年までジュリアード音楽院で教鞭を執り、2002年にニューヨークにて死去。


Zara Nelsova


 LP篇

ドヴォルザーク:チェロ協奏曲
ザーラ・ネルソヴァ(チェロ)
ヨーゼフ・クリップス指揮 ロンドン交響楽団
1951
英DECCA LXT2727 (LP)
米LONDON LL537 (LP)


 EQカーヴはDECCAffrr。


サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番
ラロ:チェロ協奏曲
ザーラ・ネルソヴァ(チェロ)
サー・エイドリアン・ボールト指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
1953
英DECCA LXT2906 (LP)
米LONDON LL967 (LP)


 EQカーヴはDECCAffrr。


ブロッホ:荒野の叫び声
同:ヘブライ狂詩曲「シェロモ」
ザーラ・ネルソヴァ(チェロ)
エルネスト・アンセルメ指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
1955
英DECCA LXT5062 (LP)
米LONDON LL1232 (LP)


 EQカーヴはRIAA。

 この「シェロモ」は以前取り上げた10inch盤と同じ録音。10inch盤にはブロッホ指揮とあるが、アンセルメの指揮が正しいものと思われる。別にブロッホとアンセルメが「ふたりともファースト・ネームがエルネストErnestだから、いいんじゃね?」とか思ったわけではなくて、こうしたことはよくあること。ラヴェルの自作自演だって、指揮もピアノもラヴェル自身ではない。

 以下に10inch盤を再掲しておく―

エルネスト・ブロッホ:ヘブライ狂詩曲「シェロモ」
ザーラ・ネルソヴァ(チェロ)
エルネスト・ブロッホ指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
Kingsway Hall, 3 March 1955
米LONDON LPS138 (10inch LP)


 10inch盤のEQカーヴはDECCAffrr。


ラフマニノフ:チェロ・ソナタ Op.19
ザーラ・ネルソヴァ(チェロ)
アルトゥール・バルサム(ピアノ)
1956年録音
米LONDON LL1480 (LP)


 EQカーヴはRIAA。



Zara Nelsova


 CD篇

 まず最初に挙げておきたいのはこれ―

エルガー:チェロ協奏曲
ザーラ・ネルソヴァ(チェロ)
サー・チャールズ・グローヴズ指揮 BBC交響楽団
1969.8.28 live
BBC RADIO CLASSICS BBCRD9111 (CD)


 その他の収録曲グローヴズ、マルコム・アーノルド指揮によるV=ウィリアムズ、パーセルなどだが、省略。BBC RADIO CLASSICSのシリーズも、この初期の頃はいいタイトルが多かった。デザインが変わってからの新シリーズが、いかにも一般受けしそうな有名演奏家の通俗名曲主体になってしまったのは残念。

 冒頭に収録されたエルガーのチェロ協奏曲、これぞ同曲の最高の演奏。まったく胸が締め付けられるような感動的な演奏。あまり過激なことは言いたくないが、これを聴かずしてエルガーは語れない。バックのサー・チャールズ・グローヴズ指揮BBC交響楽団もすばらしい。グローヴズによる同曲の伴奏は、ポール・トルトゥリエのチェロで、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団を振ったlive録音(1988年)もあり、そちらも見事。


"Zara Nelsova Decca Recording 1950-1956"
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ 第1番 ヘ長調 作品5-1
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ 第2番 ト短調 作品5-2
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ 第3番 イ長調 作品69
ベートーヴェン:「魔笛」の主題による12の変奏曲 作品66
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ 第4番 ハ長調 作品102-1
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ 第5番 ニ長調 作品102-2
ベートーヴェン:「ユダス・マカベウス」の主題による12の変奏曲 WoO.45
J・S・バッハ:無伴奏チェロ組曲 第3番 ハ長調 BWV1009~ブーレーⅠ&Ⅱ
コダーイ:無伴奏チェロ・ソナタ 作品8
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104
ラフマニノフ:チェロ・ソナタ ト短調 作品19
ラロ:チェロ協奏曲 ニ短調
サン=サーンス:チェロ協奏曲 第1番 イ短調 作品33
バーバー:チェロ協奏曲 作品22
レーガー:無伴奏チェロ組曲 第2番 ニ短調 作品133c-2
ブロッホ:3つのスケッチ「ユダヤ人の生活より」
ブロッホ:荒野の叫び声
ブロッホ:ヘブライ狂詩曲「シェロモ」
ザーラ・ネルソヴァ(Vc)
アルトゥール・バルサム(ピアノ)(ベートーヴェン、ラフマニノフ、ブロッホの3つのスケッチ)
ヨーゼフ・クリップス指揮 ロンドン交響楽団(ドヴォルザーク)
サー・エードリアン・ボールト指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(ラロ、サン=サーンス)
サミュエル・バーバー指揮 ロンドン新交響楽団(バーバー)
エルネスト・アンセルメ指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(ブロッホの荒野とシェロモ)
DECCA 4756327 (5CD)


 「ザーラ・ネルソヴァ/DECCAレコーディングス 1950-1956」と題された、DECCA録音を集大成した5CDのセット。ネルソヴァが30代にDECCAに録音した演奏を集めたもの。ベートーヴェンやラフマニノフなどは世界初のCD化。


ラロ:チェロ協奏曲
サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番
ブロッホ:ヘブライ狂詩曲「シェロモ」
ザーラ・ネルソヴァ(チェロ)
サー・エイドリアン・ボールト指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 1953(ラロ、サン=サンス)
エルネスト・アンセルメ指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 1955(ブロッホ)Testament SBT1361 (CD)


 これもDECCA録音。LPで所有しているものと同じ。


"Zara Nelsova Cello Cincertos, Sonatas & Suites Berlin, 1956-1965"
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲ロ短調 Op.104
 ゲオルク・ルートヴィヒ・ヨッフム指揮 ベルリン放送交響楽団
 1960年5月5日、ジーメンスヴィラ、ランクヴィッツ(ベルリン)
シューマン:チェロ協奏曲イ短調 Op.129
 ゲオルク・ルートヴィヒ・ヨッフム指揮 ベルリン放送交響楽団
 1960年2月1,2日、ジーメンスヴィラ、ランクヴィッツ(ベルリン)
ミヨー:チェロ協奏曲第1番 Op.136
 ゲオルク・ルートヴィヒ・ヨッフム指揮 ベルリン放送交響楽団
 1960年2月1日、ジーメンスヴィラ、ランクヴィッツ(ベルリン)
J・S・バッハ:無伴奏チェロ組曲第2番ロ短調 BWV.1008
 1959年4月30日、RIASフンクハウス、第7スタジオ(ベルリン)
J・S・バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調 BWV.1009
 1959年5月4日、RIASフンクハウス、第7スタジオ(ベルリン)
J・S・バッハ:無伴奏チェロ組曲第6番ニ長調 BWV.1012(
 1959年5月4日、RIASフンクハウス、第7スタジオ(ベルリン)
ボッケリーニ:チェロ・ソナタ第4番ニ長調 G.4
 ローター・ブロダック(ピアノ)
 1959年4月30日、RIASフンクハウス、第7スタジオ(ベルリン)
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第1番ヘ長調 Op.5-1
 ローター・ブロダック(ピアノ)
 1959年4月30日。、RIASフンクハウス、第7スタジオ(ベルリン)
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第2番ト短調 Op.5-2
 ローター・ブロダック(ピアノ)
 1959年4月30日、RIASフンクハウス、第7スタジオ(ベルリン)
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第5番ニ長調 Op.102-2
 アルトゥール・バルサム(ピアノ)
 1960年5月8日、RIASフンクハウス、第7スタジオ(ベルリン)
シューマン:幻想曲 Op.73(I. 2:30/ II. 2:47/ III. 3:22 = 8:39)
 ローター・ブロダック(ピアノ)
 1959年4月30日、RIASフンクハウス、第7スタジオ(ベルリン)
ブラームス:チェロ・ソナタ第2番ヘ長調 Op.99
 ローター・ブロダック(ピアノ)
 1956年5 月16日、RIASフンクハウス、第7スタジオ(ベルリン)
ブラームス:チェロ・ソナタ第1番ホ短調 Op.38
 ローター・ブロダック(ピアノ)
 1960年5月8日、RIASフンクハウス、第7スタジオ(ベルリン)
カバレフスキー:チェロ協奏曲ト短調 Op.49
 ゲルト・アルブレヒト指揮 ベルリン放送交響楽団
 1965年9月20日、ジーメンスヴィラ、ランクヴィッツ(ベルリン)
 ザーラ・ネルソヴァ(チェロ)
 すべて放送用mono録音
audite 21.433 (4CD)


 この嬉しいセットは、auditeによるネルソヴァのベルリン録音集(1956~1965)。録音はmonoながらoriginal tapeからの復刻であり、比較的良質。


Zara Nelsova


 DVD篇

"Zara Nelsova Grande Dame of the Cello"
VAI 4370 (DVD)


 Radio-CanadaのArchiveから。収録されているのは、ボッケリーニ、ベートーヴェンのチェロ・ソナタ、カバレフスキーのチェロ協奏曲。収録年は順に1961年、1962年、1955年ですべてモノクロ。左はボッケリーニ、中央はカバレフスキー。右の画像はBonus Selectionとして収録されているショパンのチェロ・ソナタ、1972年。これのみカラー。




(Hoffmann)