157 フランクのヴァイオリン・ソナタのdiscから




 今回はLP篇とします。

フランク:ヴァイオリン・ソナタ
フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番
ジャック・ティボー(ヴァイオリン)
アルフレッド・コルトー(ピアノ)
1929、1927
東芝 GR-2025 (LP)


 ジャケット違いで2枚所有。東芝のGRシリーズも2000番台までは悪くない音。1980年代になって出た70000番台と仏Pathe Referenceシリーズは過剰なノイズ除去によって、空気感が失われているので注意。

 技巧に関してはティボーもコルトーもほどほど、ヴァイオリンのポルタメントが甘美この上なく、ピアノは華やか。フランク、フォーレともに、演奏史上の奇跡。


フランク:ヴァイオリン・ソナタ
グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第3番
ピエール・ドゥーカン(ヴァイオリン)
テレーズ・コシェ(ピアノ)
1959頃
仏Erato LDE3091 (LP) mono
日本コロムビア(Erato) RE-1021-RE (LP) stereo


 original盤はmono。stereoは国内盤のみか。この国内盤は見つけるたびに買っているので複数枚所有している。

 ヴァイオリンが美しい。フランス音楽らしい予定調和ではなく、あくまで作品に寄り添う。ピアノが黒子に徹しているのが惜しい、もう少し主張があってもいい。


フランク:ヴァイオリン・ソナタ
ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
アルフレッド・デュボア(ヴァイオリン)
マルセル・マース(ピアノ)
1930年代
キャニオン(Artisco) YD-3006 (LP)


 Artiscoレーベルの1枚。よって疑似stereoだが、音質は鮮明で聴きやすい。

 甘美なポルタメントはティボー以上。落ち着いたテンポで自然。名人芸の域。


フランク:ヴァイオリン・ソナタ
ジョコンダ・デ・ヴィート(ヴァイオリン)
ティット・アプレア(ピアノ)
1955.7.18, 21-23
CLASSICS MO-1003 (LP)


 "not for sale"との表示あり。中古レコード店disk unionの特典盤。"Transfer & mastering / Art Direction & Designe : Hisao Natsume"の表示あり、SP盤の板起こしと思われる。

 ノイズはある程度除去されていると思われるが、著しく空気感を損なっているようなものではなく、鮮明な響き。息の長い歌わせ方が特徴。


フランク:ヴァイオリン・ソナタ
ダヴィッド・オイストラフ(ヴァイオリン)
レフ・オボーリン(ピアノ)
1952頃
仏Le Chant du Monde LDA8112 (10inch LP)


 1952年頃のロシア・メロディア録音の仏盤。1955年以前のこの時代だとMELODIYA盤の盤質、トレーシングの難しさから、仏盤のほうがよさそう。

 イン・テンポを保った端正な演奏。それでいてにじみ出てくるものがある。


フランク:ヴァイオリン・ソナタ
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第3番
ダヴィッド・オイストラフ(ヴァイオリン)
スヴァトスラフ・リヒテル(ピアノ)
1968.12.28
東独ETERNA 8 26 214 (LP)


 これももちろんメロディア録音。

 国内盤は「リヒテル&オイストラフ・ライヴ」としてVOL.1、VOL.2、いずれも2枚組で日本ビクターから出ていた。参考までに所有しているものを記載しておくと―

VOL.1
フランク:ヴァイオリン・ソナタ
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第3番
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン・ソナタ
1968.12.28, 1969.5.3
VIC-5309~10 (2LP)

VOL.2
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第2番
プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第1番
バルトーク:ヴァイオリン・ソナタ第1番
1972.3.29, 1972.3.19, 1972.3.29
VIC-5311~12 (2LP)


 スケールの大きい(大きすぎる)演奏であるとよく言われるが、それでいい。スケールの大きな音楽だもの。mono録音のオボーリンもいいが、やはりリヒテルのピアノで聴けるのはうれしい。


 次のレコードを忘れてはいけない―

フランク:ヴァイオリン・ソナタ
ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
イヴリー・ギトリス(ヴァイオリン)
マルタ・アルヘリッチ(ピアノ)
1977
独CBS 76714 (LP)
日CBS Sony 25AC464 (LP)


 これは「114 イヴリー・ギトリスのレコードから」で紹介済みなので参照願う。

 奔放といえば奔放、自由にやっているのに、恣意的とは聴こえないのが不思議だが、これこそこの大ベテランヴァイオリニストが到達した「心の欲するところに従えども矩を踰えず」の境地。学生が真似したら落第するかも知れないが、ギトリスだけに許される演奏。やはり、ギトリスが歩んできた(背負ってきた)人生を抜きに語ることはできない。


 文句なしのお気に入りはここまで。あとは一長一短あるが、ときどき聴いているもの―

フランク:ヴァイオリン・ソナタ
ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ
ジェラール・ジャリ(ヴァイオリン)
ジョルジュ・プリュデルマシェール(プルーデルマッハー)(ピアノ)
1970年代
仏Pathe Marconi(EMI) 2C069-12537 (LP)


 やや線が細い、すべてが控えめ。よく言えば純情。


フランク:ヴァイオリン・ソナタ
同:Andatino Quietoso op.6
同:Duo op.14
オーギュスタン・デュメイ(ヴァイオリン)
ジャンーフィリップ・コラール(ピアノ)
1989
仏Pathe Marconi(EMI) 2C069-14186 (LP)


 SQエンコード盤。

 歌わせ系。冒頭、いかにも慎重に開始するが、やや意識しすぎではないか。ヴァイオリンの音に付帯音がまとわりつくように濁るのは、SQエンコードのせいか。


R・シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ
フランク:ヴァイオリン・ソナタ
ウルフ・ヘルシャー(ヴァイオリン)
ミシェル・ベロフ(ピアノ)
1970年代
独Electrola 1C065-02995Q


 SQエンコード盤。

 デュメイの後に聴くと、のびのびと明晰・明快なヴァイオリンと聴こえるだが、やや上ずったように響くのはSQエンコードのせいかもしれない。ピアノがベロフらしい独特の響き。よく言えば華麗。悪く言えば付帯音がまとわりついたような濁った音。


フランク:ヴァイオリン・ソナタ
ルクー:ヴァイオリン・ソナタ
クリスチャン・フェラス(ヴァイオリン)
ピエール・バルビゼ(ピアノ)
1965
仏DG 139 124 (LP)


 抑揚、ダイナミクスの変化で表情をつけているが、呼吸が浅いと感じる。DGらしく、直接音主体の録音で、マイクが近いため、スケールが小さい。


フランク:ヴァイオリン・ソナタ
ルクー:ヴァイオリン・ソナタ
カトリーヌ・クルトワ(ヴァイオリン)
カトリーヌ・コラール(ピアノ)
1979
仏Erato STU71280 (LP)


 ヴァイオリンはこれといって特徴を感じないが、ピアノがいい。


フランク:ヴァイオリン・ソナタ
シマノフスキ:神話
同:ロクサーナの歌
同:クルピエ地方の歌
カヤ・ダンチョフスカ(ヴァイオリン)
クリスチャン・ツィメルマン(ピアノ)
1980.7.14-17
仏DG 2531 330 (LP)


 今回、聴き返して、なにも感じなかった(笑)


フランク:ヴァイオリン・ソナタ
グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第3番
ピエール・アモイヤル(ヴァイオリン)
ミハイル・ルディ(ピアノ)
1984.11.27, 28
仏Erato NUM75258 (LP)


 屈託のないヴァイオリン。目を見張るような名手ではないかもしれないが、この基本陽性傾向は悪くない。わずかに、単調か。


フランク:ヴァイオリン・ソナタ
グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第3番
アルテュール・グリュミオー(ヴァイオリン)
イストヴァン・ハイデュ(ピアノ)
1961
日本ビクター SFL-7603 (LP) stereo


フランク:ヴァイオリン・ソナタ
グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第3番
アルテュール・グリュミオー(ヴァイオリン)
ジェルジ・シェベク(ピアノ)
1978
英PHILIPS 9500 568 (LP) stereo


 これまた屈託のない美音ながら、さすがグリュミオー、懐が深い。これは新旧とも、どちらもいい。


グリーグ:チェロ・ソナタ
フランク:チェロ・ソナタ(ヴァイオリン・ソナタのチェロ版)
ロバート・コーエン(チェロ)
ロジャー・ヴィニョールズ(ピアノ)
1980頃
英crd 1091 (LP)


 チェロ版で聴ける落ち着いた響きもいい。なお、チェロ版はほかにもいくつかレコードを入手して聴いたが、これ1枚で十分と判断して、ほかのものは処分した。


フランク:フルート・ソナタ(ヴァイオリン・ソナタのチェロ版)
ピエルネ:フルート・ソナタ
ジャンーピエール・ランパル(フルート)
ピエール・バルビゼ(ピアノ)
1972.12.21-22
仏Erato STU70786 (LP)


 これもいい、さすがランパル。バルビゼのピアノも雄弁。


 CD篇はまたいずれ機会をみて取り上げます。


(Hoffmann)