063 10inch盤を聴く その3




 手持ちの10inch盤のなかからいくつか取り上げますが、例によって稀少盤を系統立てて集めたりはしていないため、取り上げたものがこの盤でしか入手できないということではなく、普通に12inch盤(30cmLP)やCDで出ているものも含まれています。今回は管弦楽曲。フランスの指揮者、オーケストラ、作品を基本に選んでみます。

リスト ハンガリー狂詩曲 第2番
マスネ 「ウェルテル」から 前奏曲、クリスマスの夜
アルベール・ヴォルフ指揮 パリ音楽院管弦楽団
英DECCA LW5150


 1951年のmono録音。英プレス盤。EQカーヴはDECCAffrr。

 リストの「ハンガリー狂詩曲 第2番」といえば、往年の通俗名曲ですね。私などが音楽を聴き始めた時期にはもうあまり取り上げられることもなく、ラジオなどで聴くことも滅多にありませんでしたが、おそらく1950年代ないし1960年代頃は我が国で人気があった作品であったはず。もっとも海外ではリストの管弦楽曲なんて、あまり演奏されなかったんじゃないでしょうか。

 アルベール・ヴォルフはパリ生まれでパリ音楽院で学んだ指揮者、作曲家。「音楽を聴く 001」ではビゼーの歌劇「カルメン」を取り上げましたね。活躍したのはmonoからstereo録音初期まで。フランスのオーケストラがローカルな響きを保ち、とりわけ管楽器などに名人級の奏者を揃えていた時代です。ノーブルな品の良さが持ち味。ちなみにこの指揮者のドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」SP盤は宮沢賢治が愛聴したことでも知られています。stereo初期の録音では、10inch盤ではありませんがチャイコフスキーの交響曲第4番も忘れがたいレコードです。


ドビュッシー ビュッセル編曲 小組曲
ビュッセル 小組曲
アンリ・ビュッセル指揮 フランス国立放送管弦楽団
仏Pathe 33DT1014


 mono録音。EQカーヴはRIAAで問題ありません。

 ドビュッシーの「小組曲」はもともとピアノ4手連弾の作品、管弦楽で演奏されているのはアンリ・ビュッセルによる編曲版。この10inch盤はそのビュッセルの指揮による演奏と、ビュッセルの同名の作品の自作自演を組み合わせたもの。なんだか似たような音楽です(笑)ビュッセルは作曲家、指揮者、またパリ音楽院の名教師としても知られた人。ドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」初演の際には合唱指揮も担当しています。


ソーゲ バレエ音楽「旅芸人」
アンリ・ソーゲ指揮 コンセール・ラムルー管弦楽団
仏PHILIPS S 05.800R



 Collection”CLASSIQUES POUR TOUS”、〈minigroove 33 1/3〉表記あり。mono録音。「音楽を聴く 005」でも紹介した10inch盤。EQカーヴはRIAAで問題なさそうです。

 作曲者自演による演奏です。10inch盤なので両面で「旅芸人」一曲のみ。録音年はわかりませんが、音質はmono録音として良好なもの。ときどき見かける、わりあい入手しやすい盤なんじゃないでしょうか。


フォーレ 劇音楽「ペレアスとメリザンド」(4曲)
フォーレ 劇音楽「シャイロック」(6曲)
アンリ・ルゲ(テノール)
デジレ=エミール・アンゲルブレシュト指揮 フランス国立放送管弦楽団
Ducretet-Thomson 270 C 082


 オーケストラ名は"Orchestre du Thetre des Champ-Elysees"とありますが、実体はフランス国立放送管弦楽団のはず。

ベルリオーズ 序曲「ローマの謝肉祭」
ベルリオーズ 劇的物語「ファウストの劫罰」(抜粋)
デジレ=エミール・アンゲルブレシュト指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
Ducretet-Thomson 255 C 044


 「ファウストの劫罰」はラコッツィ行進曲、妖精の踊り、鬼火のメヌエットの3曲。

 上記アンゲルブレシュトの録音はTestamentからCDでも出ていましたね。フォーレは確かにちょっと鄙びた、フランスのオーケストラの香り高い響きが聴けるもの。ベルリオーズはロンドン・フィルハーモニー管弦楽団がその機能性をそのままに、わずかに明るめの、エレガントな響きを附加したような演奏になっています。

 Ducretet-Thomson盤はEQカーヴがDECCAffrrと認識していたのですが、この2枚に関してはRIAAで合うようです。


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 レコード(LP)を再生した装置について書いておきます。
 今回はすべて古いmono盤なので、カートリッジは、ortofon CG 25 Dを基本に、一部SHELTERのmonoカートリッジを使いました。スピーカーはSiemensのCoaxial、いわゆる「鉄仮面」をチャンネルあたり2基の後面開放型Sachsen 202で聴いています。なお、私はmono盤でもスピーカーは2本で聴きます。部分的に、TANNOYのMonitor Gold10"入りCornettaでも聴いています。
 また、EQカーヴはRIAAで疑問を感じたものは適宜ほかのカーヴを試し、結果はなるべく記載しておきました。



(Hoffmann)