154 J・S・バッハの「マタイ受難曲」のdiscから その2 音楽を聴く「015 J・S・バッハの『マタイ受難曲』のdiscから その1」で取り上げたのは、以下のdisc― カール・リヒター指揮 ミュンヘン・バッハ管弦楽団 エルンスト・ヘフリガー(福音史家)、キート・エンゲン(イエス)、 イルムガルト・ゼーフリート(ソプラノ)、ヘルタ・テッパー(アルト)、 アントニア・ファーベルク(ソプラノ)、マックス・プレープストル(バス)、 ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バス) ミュンヘン・バッハ合唱団 ミュンヘン少年合唱団(合唱指揮:フリッツ・ロートシュー) 1958年6~8月 ミュンヘン、ヘルクレスザール 独Archiv 2712 001 (4LP) stereo盤 独Archiv 14 125-8 APM (4LP) mono盤 カール・リヒター指揮 ミュンヘン・バッハ管弦楽団 ペーター・シュライアー(福音史家)、ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(イエス)、 エディット・マティス(ソプラノ)、 ジャネット・ベイカー(アルト)、マッティ・サルミネン(バス) ミュンヘン・バッハ合唱団 レーゲンスブルク大聖堂聖歌隊(合唱指揮:ゲオルク・ラッツィンガー) 1979年6月14-16、23-7月1日、8月18日 ミュンヘン、ヘルクレスザール stereo 日Archiv MAF8142/52 (4LP) ウィレム・メンゲルベルク指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 カール・エルプ(福音史家)、ウィレム・ラヴェッリ(イエス)、ジョー・ヴィンセント(ソプラノ)、 イローナ・デュリゴ(アルト)、ルイ・ヴァン・トゥルダー(テノール)、ヘルマン・シャイ(バス) アムステルダム・トーンクンスト合唱団 ツァンクルスト少年合唱団 1939年4月2日 アムステルダム、コンセルトヘボウ live録音 mono 蘭H73 AX310 (3LP) ルドルフ・マウエルスベルガー指揮 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 ペーター・シュライヤー(福音史家)、テオ・アダム(イエス)、アデーレ・シュトルテ(ソプラノ)、 アンネリース・ブルマイスター(アルト)、ハンス=ヨハヒム・ロッチュ(テノール)、 ジークフリート・フォーゲル(バス)、ヘルマン・クリスティアン・ポルスター(バス)、 ギュンター・ライプ(バス) ライプツィヒ聖トーマス教会合唱団(合唱指揮:エアハルト・マウエルスベルガー) ドレスデン聖十字架教会合唱団(合唱指揮:ルドルフ・マウエルスベルガー) 1970年、ドレスデン、ルカ教会 stereo 東独ETERNA 826141-144 (4LP) 日コロムビア OP-7173~40-K (4LP) ヘルムート・リリンク指揮 シュトゥットガルト・バッハ・コレギウム アダルベルト・クラウス(福音史家)、ジークムント・ニムスゲルン(イエス) アーリン・オージェ(ソプラノ)、ユリア・ハマリ(アルト)、アルド・バルディン(テノール)、 フィリップ・フッテンロッハー(バス) シュトゥットガルト・ゲヒンガー・カントライ 1978年3月22-23日、26-31日、4月6-9日、5月16-17日 シュトゥットガルト、Gedaechtniskirche stereo 日CBS Sony 00AC 430~3 (4LP) ニコラウス・アーノンクール指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 クルト・エクヴィルツ(福音史家)、ローベルト・ホル(イエス)、アーリーン・オージェ(ソプラノ)、 シェリー・グリーナヴァルト(ソプラノ)、ヤトヴィガ・ラッペ(アルト)、 ニール・ローゼンスハイン(テノール)、 ルード・ヴァン・デル・メール(バス)、アントン・シャリンガー(バス) アムステルダム・コンセルトヘボウ合唱団 ハーレム聖バーヴォ大聖堂少年合唱団 1985年3月31日 アムステルダム live stereo 独TELDEC 6.35668GK (3LP) アンソン・ファン・デア・ホルスト指揮 ハーグ・レジデンティ管弦楽団 トム・ブランド(福音史家)、 ローレンス・ボフトマン(イエス)、 エルナ・スポーレンベルク(ソプラノ)、アニー・ヘルメス(アルト)、 アリャン・ブランケン(テノール)、 グース・ヘクマン(バス)、ダヴィド・ホーレステレ(バス) オランダ・バッハ協会合唱団 アムステルダム平和学校少年合唱団 1957年4月12日(19日?) ナールデン、聖ヴィトス教会 live録音 mono 独Telefunken LT 6598/6601 (4LP) フリジェシュ・シャンドール指揮 ブダペスト・フランツ・リスト室内管弦楽団 ツェーガー・ヴァンデルシュテーン(福音史家)、イシュトヴァーン・ガーティ(イエス)、 マグダ・カルマール(ソプラノ)、ユリア・ハマリ(アルト)、エルンスト=ゲロルト・シュラム(バス) 国際青少年音楽協会合唱団 ブダペスト音楽学校少年合唱団 1976年5月23日 stereo Hungarian Radio at the ConcertでのLiszt Ferenc Music Akademy、Budapest主催によるlive録音 洪Hungaroton SLPX 12069-72 (4LP) エドゥアルト・ファン・ベイヌム指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 エルンスト・ヘフリガー(福音史家)、ハインツ・レーフス(イエス)、 エルナ・スポーレンベルク(ソプラノ)、アニー・ヘルメス(アルト)、 シモン・ファン・デル・ギースト(テノール)、 デイヴィッド・ホルレステーレ(バス)、ハンス・ヴィルブリンク(バス) Het Jongenskoor van Zanglust Choirmaster:Willem Hespe Het Toonkunstkoor van de Afdeling Amsterdam 1958年3月30日 アムステルダム、コンセルトヘボウ大ホール live mono Audiophile Classics APL-101.302 (3CD) どうも、本を読む「057 『マタイ受難曲』 礒山雅」の関連企画だったので、メンゲルベルク盤以外は適当に取り上げてしまって、録音年もなにもかも脈絡がありません。あれからかなり経ちましたが、引き続き、録音年順とかではなく、連想の赴くままに、残る手許の「マタイ受難曲」のdiscを取り上げていきます。 まず、前回初回録音と最後の録音を取り上げたカール・リヒターによる別録音を2種― カール・リヒター指揮 ミュンヘン・バッハ管弦楽団 同合唱団 エルンスト・ヘフリガー(福音史家) キート・エンゲン(イエス) ウルズラ・ブッケル(ソプラノ) マルガ・へフゲン(アルト) ペーター・ファン・デア・ビルト(バス) 東京文化会館、1969.5.5 日Archiv 96MA0113/6 (4LP) これは1969年の東京公演のlive録音。レチタティーヴォの通奏低音がオルガンからチェンバロに変わっている。旧盤よりも構えが大きくなった印象、悪く言えば緊張感が若干緩んだようにも聴こえる。旧盤の主張の強さが内面的であったのに対して、劇的になった分、外面的とも思える。 カール・リヒター指揮 ミュンヘン・バッハ管弦楽団 同合唱団 ペーター・シュライアー(福音史家) エルンスト・ゲロルド・シュラム(イエス) ジークムント・ニムスゲルン(バリトン) ヘレン・ドナート(ソプラノ) ユリア・ハマリ(アルト) ホルスト・R・ラウベンタール(テノール) ヴァルター・ベリー(バス) 演出:フーゴー・ケッヒ ミュンヘン、1971.5 DG 00440 073 4149 (DVD) これは1971年に収録された映像。少なくとの2箇所での収録? 一方は巨大な十字架が天井から吊り下げられた白いスタジオ。キリスト教信者だとこの映像で感動できるのか? 私の目には陳腐かつ幼稚(さらに、その思わせぶりがほとんど滑稽)な演出としか見えず、個人的には演奏を云々する以前に鑑賞に堪えない。 次に、前回2回目の録音を取り上げたアーノンクールの初回録音と3回目の録音を― ニコラウス・アーノンクール管弦楽指揮 ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス デイヴィッド・ウィルコックス合唱指揮 レーゲンスブルク大聖堂少年聖歌隊 ケンブリッジ・キングス・カレッジ合唱団 クルト・エクヴィルツ(福音史家) カール・リッダーブッシュ(イエス) ウィーン少年合唱団員(ソプラノ) ポール・エスウッド(カウンターテナー) ジェイムズ・ボウマン(カウンターテナー) ナイジェル・ロジャース(テノール) マックス・ヴァン・エグモント(バス) ミヒャエル・ショッパー(バス) 1970 独Telefunken SAWT9572/75-A (4LP) アーノンクールの初回録音。当時大型のレコード店に行くと、直輸入盤が日本語の解説書付きで売られていたが、あまりよく売れていた様子でもなかった。アーノンクール自身もチェロ及びヴィオラ・ダ・ガンバのソリストとして演奏している。 いまとなっては過渡期の記録ながら、当時は古楽団体といえば、使用楽器がどうとかいう以前のこと、当時の衣装に鬘をかぶって演奏しているだけ、というのもめずらしくなかった。そのような、未だピリオド楽器が市民権を得るより前の時代に、これだけの成果を上げているところが、さすがアーノンクール。声楽も男声のみによっている。 ニコラウス・アーノンクール指揮 ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス アーノルト・シェーンベルク合唱団 ウィーン少年合唱団 クリストフ・プレガルディエン(福音史家) マティアス・ゲルネ(イエス) クリスティーネ・シェーファー(ソプラノ1) ドロテア・レシュマン(ソプラノ2) ベルナルダ・フィンク(アルト1) エリーザベト・フォン・マグヌス(アルト2) ミヒャエル・シャーデ(テノール1) マルクス・シェーファー(テノール2) ディートリヒ・ヘンシェル(バス1) オリヴァー・ヴィトマー(バス2) ウィーン、2000.5 Warner Classics 0190 2965 18539 (3LP) アーノンクールによる3度めの録音。個人的にはあまり興味を惹かれてもいなかったが、LPで出たので入手してみた。 ソリストは優秀。大筋はこれまでどおりのアーノンクール。個人的には、アーノンクールが「なかったことにしたい」、2回目のコンセルトヘボウでのlive録音が好き。 前回メンゲルベルクを取り上げているので、ここでフルトヴェングラー盤も― ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ウィーン・ジングアカデミー合唱団 ウィーン少年合唱団 アントン・デルモータ(福音史家) ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(イエス) エリーザベト・グリュンマー(ソプラノ) マルガ・ヘフゲン(アルト) オットー・エーデルマン(バス) アントン・ハイラー(チェンバロ) フランツ・シュッツ(オルガン) ヴィリー・ボスコフスキー(ヴァイオリン) エマニュエル・ブラベック(チェロ) ハンス・レズニチェク(フルート) ハンス・カメシュ(オーボエ) ウィーン、コンツェルトハウス大ホール、1954.4.14-17 伊FONIT CETRA FE34 (3LP) 伊MOVIMENT MUSICA 03.008 (3LP) 日キングレコード GT7048-50 (3LP) フルトヴェングラーが亡くなる半年前に指揮した、1954年復活祭週間における上演のlive録音。初出は1979年で、伊CETRAのLO-508。FE34は1984年、"Furtwaengler Edition"での再発売。じつはキングレコードのGT7048-50が、音源の制作元ミラノのディスコスからマスターテープの提供を受けて、1979年という早い時期に発売されたもの。さすが日本はフルトヴェングラーのマニアがたくさんいますからね。 カットが多数あるのは元からそうなんだからしかたがないが、CD化されるときには、CD収録時間に合わせて、録音tapeにあるのに、さらに「勝手な」カットを施している例が多いので注意。演奏されており記録されているものの一部をカットして市販するなど、詐欺行為・犯罪行為ではないのか。同様の例はメンゲルベルク盤のCDにもあった。 さすがフルトヴェングラー、メンゲルベルクとくらべると、まだしも主観的になりすぎず、ために細部がことさらに恣意的とは聴こえない・・・だから、メンゲルベルク盤の方に、より心を惹かれる、と言ったら逆説に聞こえるだろうか。よくいえばしみじみとしているが、悪くいえばフルトヴェングラー晩年の衰え。冒頭はオーケストラがモノモノしいが、だんだん調子がよくなってくる・・・のに、第2部はカットが多いので、もったいない。 フルトヴェングラーの次にはブルーノ・ワルターを。ただし第1部のみの記録― (第1部のみ) ブルーノ・ワルター指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック ウェストミンスター合唱団 ウィリアム・ハイン(福音史家) ロレンツォ・アルヴァリー(イエス) ナディン・コナー(ソプラノ) ジーン・ワトソン(アルト) マック・ハーレル(バス) ヘルベルト・ヤンセン(バス) ラルフ・カークパトリック(Cem) エドゥアルド・ニース=ベルガー(Org) ヤーノシュ・ショルツ(Viola da Gamba) ジョン・コリリアーノ(Vn) マイケル・ローゼンケル(Vn) ジョン・ワマー(Fl) ハロルド・ゴンバーグ(Ob) ニューヨーク、1944.4.9 AS disc AS406 (CD) ワルター指揮によるニューヨー・フィルハーモニックの「マタイ受難曲」は1944年4月6、7、9日の3公演行われており(1945年にも演奏しているらしい)、これはその最終日のlive録音。英語歌唱で音質は貧しく、しかも第1部のみ。 いつもどおりのワルターらしい、滋味あふれる「マタイ受難曲」になっている。やはり英語歌唱には違和感があり、オーケストラに細かい表情・ニュアンスを期待しても無駄。せめてオーケストラがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団であったら・・・。 英語歌唱ということもでもうひとつ― レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック ニューヨーク大学混声合唱団 トランスフィギュレーション教会少年合唱団 デイヴィッド・ロイド(福音史家) ウィリアム・ウィルダーマン(イエス) ドナルド・ベル(バス・バリトン) アデーレ・アディソン(ソプラノ) ベティ・アレン(メゾ・ソプラノ) チャールズ・ブレスラー(テノール) ニューヨーク、1962.4.23, 24 米Columbia M3S 692 (3LP) セッションによるstereo録音。英語歌唱で大幅なカットあり。総演奏時間は137分。Bonus Recordとして"Leonard Bernstein discusses the musical and dramatic Structure of the Saint Matthew Passion"という7inch盤が附属している。 冒頭からしてニューヨークの雑踏のにぎわい。ガチャガチャしていて、ガーシュウィンのよう。その中からなにやらがなり立てる声が聞こえてきたと思ったら、福音史家だった、という印象(笑) (Hoffmann) |