120 フルトヴェングラーのレコード その6 フランス盤いくつか 所有しているフルトヴェングラーのフランス盤からいくつか取り上げます。断っておきますけどね、マニアにうらやましがられるようなレア盤は持っていませんよ。だからもちろん自慢しようというのではなく、自分のための整理です。 まずはオペラ全曲録音。ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」は以前こちらで取り上げています。そこから引用しておきます― Wilhelm Frutwaengler, Philharmonia Orchestra London Suthaus, Flagstad, Thebom, Greindl, F-Dieskau London, Juni 1952 LA VOIX DE SON MAITRE FALP 221a226 (LP) ※ これが仏盤 EMI 2c153-00899/903 (LP) Electrola 1C147-00899/903 (LP) Toshiba WF45~49 (LP) MELODIYA D 0022869-78 (LP) プロデューサーはWalter Legge。第二幕の2ヶ所のハイCを、Flagstadに代わってLegge夫人のE.Schwarzkopfが歌っているというのは有名な話。そんなことは抜きにして、Flagstadの歌はきわめて評判がよろしいのですが・・・。 Frutwaenglerとしてはいかにもスタジオ録音といった、燃焼不足の演奏ですね。歌手も、Flagstadを含めてさほどすぐれたものとも思えません。Suthausも冴えず、マルケ王のGreindlなんて、第二幕では長々と愚痴をたれているように聴こえます。 (追記) 以上は東芝の国内盤を聴いての感想でしたが、仏盤FALP221a226を入手して聴いたところ、かなり印象が変わりました。戦前戦中の「荒れ狂った」演奏ではありませんが、少なくともオーケストラに関しては、決して悪くありません。また、露MELODIYA盤も案外と良い音です。レコード番号は10枚組のように見えますが、MELODIYA盤は片面ごとに番号を振るので、これで5枚組です。 ワーグナーの楽劇「ワルキューレ」も以前こちらで取り上げています。これも引用しておきます― Wilhelm Frutwaengler, Wiener Philmarmoniker Moedl, Suthaus, Rysanek, Franz, Frick Wien, 28.September bis 6.Oktober 1954 LA VOIX DE SON MAITRE FALP 383a387 (LP) ※ これが仏盤 Electrola 1C149-00 675/79 (LP) Toshiba WF40~44 (LP) FrutwaenglerとWiener Philmarmonikerによる"Ring"全曲録音の第一弾だったんですが、Furtwaenglerの死によりこれが最後の指揮・録音となってしまったものです。 Furtwaengler死の年の録音で、衰えは隠せず。とはいえ、オーケストラはイタリアのオーケストラを振った2種の録音とくらべれば圧倒的にすぐれており、「Frutwaenglerとしては・・・」という聴き方をしなければ、指揮とオーケストラがよく整った、完成度の高い熱演です。 Wilhelm Furtwaengler そのほか、二種類の「ニーベルングの指環」は仏盤ではありません。また、仏フルトヴェングラー協会盤は先日こちらで取り上げたばかりなので省略します。 あとは、仏La Voix de son Maitreのベートーヴェンの交響曲で私が所有しているものからいくつか― ベートーヴェン:交響曲第9番 エリーザベト・シュヴァルツコップ、エリーザベト・ヘンゲン、 ハンス・ホップ、オットー・エーデルマン バイロイト祝祭管弦楽団 同合唱団 1951.7.29 仏La Voix de son Maitre FALP381-2 (2LP) 仏La Voix de son Maitre FALP381-2 (2LP) 仏La Voix de son Maitre FALP30048-9 (2LP) ムカシから有名な「バイロイトの第九」です。近頃、これぞ正真正銘のliveだと言って、一部だか全部だかが別演奏のCDが出ていますが、私はいまもってこのEMI録音のレコードが好きです。ここでフランスにおける当盤の流れを追ってみると― 1955年頃、仏La Voix de son Maitre FALP381-2、銀大ニッパー、内溝、フラット Cassandre工房による五線譜デザインの箱入り ↓ 1958年頃、仏La Voix de son Maitre FALP381-2、つまり同一番号 銀大ニッパー、内溝、フラットも同じ 箱のデザインが変わって、Cassandre工房による松明デザインの箱入り ↓ 1959年頃、5桁番号で銀大ニッパー、内溝、外輪なし ジャケットは灰クロス、紙ペラ、バラ2枚 ↓ 5桁番号、銀大ニッパー、段付き ↓ 5桁番号、白SCニッパー、段付き ↓ 5桁番号、白SCニッパー、段なし ↓ カラー切手ニッパー ・・・と、このように変遷しているようです。 ※ 間違いがありましたらご指摘いただければ幸いです。 私が所有しているFALP381-2の2組は、ひとつが五線譜デザイン箱、つまりフランス初出。もうひとつが松明デザイン箱、第2版です。FALP30048-9は5桁の灰クロス、2枚バラです。EQカーヴはFALP381-2がColumbia、5桁番号のFALP30048-9はRIAAです。 この3種の盤ならどれで聴いてもいいですよ。EQカーヴがRIAAで再生しやすいという意味では灰クロス、バラ2枚のFALP30048-9なんか、狙い目じゃないでしょうか。別に「おれさまのは五線譜箱だぞー」なんてマウントをとるつもりはありませんからご安心を(笑)もしもそういう人がいたとしても、相手にする必要はありません。 ところで、フルトヴェングラーのバイロイトの第九については、演奏前の足音や拍手、フルトヴェングラーがなにかしゃべっている声が入っているものがあるのはよく知られていることですが、これは拍手も含めて、すべて後から付け足した編集。HMVが1955年11月に発売したALP 1286-7が初出で、その初版発売後、売上向上を狙ったものか、拍手等が付け加えられたわけです。ですから、拍手等が入っていたら、それは初回プレスではないということ。ただし、拍手入りかどうかはレコードの外見から見分ける方法はありません(第4面のスタンパーでわかるという説があります)。 なお、近頃バイエルン放送局のtapeとかスウェーデン放送局のtapeによるCDが出ており、私も入手して聴いてはいるんですが、聴きくらべなどはしていません。そんなことをしているよりも、聴いて愉しむ時間をとった方が幸せになります。ただ、ぱっと聴いたときの印象では、やっぱりLPで聴きたくなって、いまでも上記HMV録音の仏盤を手に取ることが多いですね。BISのLPは、あれもスウェーデン放送局のtapeによるものですが、買っただけで聴いていません(笑)なお、フルトヴェングラーによるベートーヴェンの交響曲第9番で、私がいちばん好きな演奏は、1942年3月のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を振ったものです。一般には「荒れ狂った爆演」なんて言われますが、案外とまとまりもいい。ブルーノ・キッテル合唱団も優秀です。 ベートーヴェン:交響曲第5番 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1954.2.28/3.1 仏La Voix de son Maitre FALP260 (LP) 仏La Voix de son Maitre FALP30128 (LP) FALP260は銀大ニッパー、内溝、フラット。EQカーヴはColumbia。フランスのoriginal。 FALP30128はジャケットが灰クロス。SCニッパー、段付き。 ベートーヴェン:交響曲第7番 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1950.1.18-19 仏La Voix de son Maitre FALP115 (LP) 銀大ニッパー、内溝、フラット。EQカーヴはColumbia。フランスのoriginal。 ベートーヴェン:交響曲第6番 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1952.11.24-25 仏La Voix de son Maitre FALP288 (LP) 銀大ニッパー、内溝、フラット。EQカーヴはColumbia。フランスのoriginal。ジャケットがペイネのイラスト。 ベートーヴェン:交響曲第3番 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1952.11.26-27 仏La Voix de son Maitre FALP287 (LP) これはジャケットは仏盤なれど、中身が英プレス盤ALP1060だったもの。金大ニッパー、中溝フラット。EQカーヴはColumbia。 フルトヴェングラーの演奏については、多くの方がいろいろ語っていると思うので省略します。あえて言っておくならば、1950年代のセッション録音ですから、戦中のliveのような荒れ狂った演奏ではなく、落ち着いて聴くことができるものであり、演奏も音質もそれなりに整ったものです。これはこれで愉しめます。とくに第3番の終楽章に関しては、このセッション録音がもっとも充実しているんじゃないでしょうか。 フルトヴェングラーの仏La Voix de son Maitre盤はプレス数が多いので、比較的reasonableなお値段で購入できるのもうれしいところ。英プレス盤は結構レアで高額。音質は英プレス盤の方がいいという人もいると聞きますが、仏盤には仏盤のよさがあると思います。今回取り上げてはいませんが、私も何枚か持っている棒付き厚手ボードの仏盤は、さらに買いやすいお値段のはず。Cassandre工房デザインの立派なジャケットが好きだといって集めている人もいるようです。 レコード(LP)を再生した装置について書いておきます。 今回はすべて古いmono盤なので、カートリッジは、ortofon CG 25 Dで、スピーカーはSiemensのCoaxial、いわゆる「鉄仮面」をチャンネルあたり2基の後面開放型Sachsen 202で聴きました。ま、フルトヴェングラーのワーグナーにベートーヴェンですからね(笑)なお、私はmono盤でもスピーカーは2本で聴きます。 また、EQカーヴはRIAAで疑問を感じたものは適宜ほかのカーヴを試し、結果はなるべく記載しておきました。 (Hoffmann) |