139 チャイコフスキー作品のレコードから




 チャイコフスキー作品のレコードを取りあげようと思ったのですが、交響曲第6番「悲愴」はmono盤、stereo盤とも取り上げたばかり。よって、交響曲第6番は除くことにします。

 交響曲第6番「悲愴」のレコードについては以下を参照願います。

101 mono盤の再生 カートリッジの選び方 あるいはmono盤で聴くチャイコフスキー交響曲第6番『悲愴』」

102 stereo盤で聴くチャイコフスキー交響曲第6番『悲愴』」

 6番以外の交響曲で真っ先に思いつくのはリッカルド・ムーティ指揮、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団による第1番とカルロ・マリア・ジュリーニ指揮、フィルハーモニア管弦楽団による第2番、それに小澤征爾指揮、パリ管弦楽団による第4番です。

チャイコフスキー:交響曲第1番「冬の日の幻想」
リッカルド・ムーティ指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
1975.2.11,12.
英EMI ASD3213 (LP)
仏Pathe Marconi 2C 065-02691 (LP)

チャイコフスキー:交響曲第2番
ムソルグスキー:「禿山の一夜」
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団
1956.9.29
英Columbia 33CX1523 (LP) (mono)
英Columbia SAX2416 (LP) (stereo)

チャイコフスキー:交響曲第4番
小澤征爾指揮 パリ管弦楽団
パリ、1970.10.22,23
仏Pathe Marconi(EMI) 2C 069-02159 (LP)


 じつはこの3枚も以前取り上げています。その時のコメントは次のページに―

057 フィルハーモニア管弦楽団時代のリッカルド・ムーティ」

109 あえて聴くmono盤 その3 カルロ・マリア・ジュリーニ篇」

035 小澤征爾のレコードから」

 たいしたことは書いてありませんが、この3枚はかなり「特別」です。

 それではこれまでに取り上げていないレコードを。まずは交響曲第4番―

チャイコフスキー:交響曲第4番
セルゲイ・クーセヴィツキー指揮 ボストン交響楽団
1949.3.11
米RCA VICTOR LM1008 (LP)


 mono録音。

 ボストン交響楽団の音色が美しい。意外と柔軟な表情。


チャイコフスキー:交響曲第4番
ヘルマン・アーベントロート指揮 ライプツィヒ放送交響楽団
1951
東独ETERNA 8 22 128 (LP)


 mono録音。

 表情付けは淡白。なにもしていないかと思うくらいそっけないが、確信を持ってそのようにやっているという意志を感じさせる。骨太のロマンティスム。


チャイコフスキー:交響曲第4番
アルベール・ヴォルフ指揮 パリ音楽院管弦楽団
1959.5.5-6
米LONDON CS-6150 (LP)
英DECCA SDD131 (LP)


 stereo録音。CS-6150はBB盤、SDD131は"Ace of Diamonds"シリーズの1枚。EQカーヴはいずれもRIAA。

 いかにもDECCA録音。直接音成分が多めで明晰。オーケストラの音色は明るく、上品。


 次に交響曲第5番。あまり好きな音楽ではないんですが、演奏がいいと聴いてしまいます―

チャイコフスキー:交響曲第5番
ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮 北ドイツ放送交響楽団
1952.9-10
米LONDON(RICHMOND) B19006 (LP)


 mono録音。

 ドイツ的な構築性。いや、そもそもそういう音楽だから(笑)それでもダイナミクスの妙に聴き取ることができる豊かなカンタービレ。終楽章にカットあり。


チャイコフスキー:交響曲第5番
ジークフリート・クルツ指揮 ドレスデン国立歌劇場管弦楽団
1978
東独ETERNA 8 27 376 (LP)


 一転して渋い。誇張のない、暖かい音色はこのオーケストラならではのもの。


チャイコフスキー:交響曲第5番
同:バレエ音楽「くるみ割り人形」から
同:幻想序曲「ロメオとジュリエット」
ハンス・フォンク指揮 ハーグ・フィルハーモニー管弦楽団
1985.9
UITGAUE VAN HET RESIDENTIE-ORKEST 6818.549/550 (2LP)


 これも誇張や派手な演出のないところがいい。指揮はひたすら真面目で、効果造りとは無縁。オーケストラは上記シュターツカペレ・ドレスデンにくらべればやや不利ながら、重厚。指揮はひたすら誠実で真面目。


 ここからはお気に入りのものを思いつくまま―

チャイコフスキー:弦楽セレナード op.48
ドヴォルザーク:弦楽セレナード op.22
パーヴォ・ベルグルンド指揮 ニュー・ストックホルム室内管弦楽団
1983.7.14-15
瑞BIS LP-243 (LP)


 表題は"Serenades!"。演奏は細部のニュアンスが豊かで滔々と歌われる。この指揮者らしく、自然な、深い呼吸感がすばらしい。録音も良好ながら、BISとしては普通か。


チャイコフスキー:バレエ組曲「眠りの森の美女」
I=イワーノフ:コーカサスの風景
ロジェ・デゾルミエール指揮 パリ音楽院管弦楽団
1951
米LONDON LLP440 (LP)


 英プレス盤。

チャイコフスキー:バレエ音楽「白鳥の湖」から
ロジェ・デゾルミエール指揮 フランス国立放送管弦楽団
1951?
仏Pathe Marconi 2C051-86029 (LP)


 Pathe Referencesシリーズ。

 バレエ・スエドワ、バレエ・リュスの指揮者も務めたデゾルミエールが振ったバレエ音楽は、チャイコフスキーでもかなりの辛口、厳しさが際立つ。たしかデゾルミエールは1952年に発作に見舞われて、以後10年間寝たきりとなってしまったため、上記は指揮者としては最晩年の記録となってしまったもの。


 バレエ組曲では次の1枚も挙げておきたい―

チャイコフスキー:バレエ組曲「白鳥の湖」
同:バレエ組曲「眠りの森の美女」
リッカルド・ムーティ指揮 フィラデルフィア管弦楽団
1984.2.25,27
英EMI 067.EL 27 0113 1(LP)


 DMM盤。

 上記デゾルミエールの辛口から連想するのがこれ。張り詰めた緊張感。バレエ音楽であることを意識させないで、組曲版で十分満足させる一貫性がある。


 あと、ちょっと変わったレコードを3点―

チャイコフスキー:幻想序曲「ロメオとジュリエット」(1869年初稿版)
同:ニコライ=ルビンシュテインの誕生日のためのセレナード
同:デンマーク国歌による祝典序曲
同:歌劇「マゼッパ」からポルターヴァの戦とコサックの踊り
同:附随音楽「ハムレット」
Janis Kelly(ソプラノ)、Derek Hammond=Stroud(バリトン)
ジェフリー・サイモン指揮 ロンドン交響楽団
1981.1
英CHANDOS DBRD2003 (2LP)


チャイコフスキー:交響曲第2番(1872年初稿版)
ジェフリー・サイモン指揮 ロンドン交響楽団
1982.8.3 & 5
英CHANDOS ABRD1071 (LP)


チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲(1876年版)
同:6つの小品 op.19 第4曲 夜想曲 嬰ハ短調(チェロと管弦楽編曲版)
同:カプリッチョ風小品 op.62(1887年版)
同:子供のための16の歌 op.54 第5曲 伝説(チェロと管弦楽編版)
同:7つの歌 op.47 第7曲 私は野辺の草ではなかったのか(チェロと管弦楽編版)
同:弦楽四重奏曲第1番 op.11 第2楽章 アンダンテ・カンタービレ(チェロと弦楽オーケストラ編曲版)
ラファエル・ウォルフィッシュ(チェロ)
ジェフリー・サイモン指揮 イギリス室内管弦楽団
1983.2.23 & 24
英CHANDOS ABRD1080 (LP)


 最初の2枚組は「ハムレット」以外はFirst Recording、「ハムレット」もFirst complete Recording。とりわけ「ロメオとジュリエット」の初稿版が面白い。冒頭部分に「ローレンス僧」の主題はなく、別な作品かと思うくらい。現在聴く形に手が加えられたのは1880年。たしかに、簡潔にまとまった現行版の完成度の高さも納得できる。演奏は作品を愉しむのにまったく問題はないが、強いて言えば、総じてちょっと薄味かなとも思われる。


 レコード(LP)を再生した装置について書いておきます。
 今回古いmono盤は、カートリッジは、ortofon CG 25 D、スピーカーはSiemensのCoaxial、いわゆる「鉄仮面」をチャンネルあたり2基の後面開放型Sachsen 202で聴いています。なお、私はmono盤でもスピーカーは2本で聴きます。stereo盤はortofonのMC20、TANNOYのMonitor Gold10"入りCornettaで聴きました。
 また、EQカーヴはRIAAで疑問を感じたものは適宜ほかのカーヴを試し、結果はなるべく記載しておきました。



(Hoffmann)