166 BiddulphのCDから その1 Biddulph Recordingsは、1987年に弦楽器商、ピーター・ビダルフと弦楽器専門誌"Strad"の元編集者であるエリック・ウェンによって創設された、歴史的音源専門のCDレーベルです。なので、中心は名だたるヴァイオリニストたちの復刻中心。その後、レパートリーは指揮者、ピアニスト、室内楽に拡大され、若干の新録音も行われていましたが、一時期CDリリースが途絶えたりもしながら、現在に至るまで活動は続いているようです。どうやら、詳細は不明ながら、2021年頃に「新体制」となった、と言われています。 Biddulph Recordingのロゴ どうも出しているCDは質の高いものながら、代理店や外部パートナーに対しては結構不義理を働いて顰蹙を買っているという噂があるんですよね。別に聖人君子でなくてもかまいませんから、息長く良質な復刻盤を出し続けてもらいたいものです。 BiddulphのCDが我が国の輸入CDショップの店頭に並びはじめた頃には、見かけると購入していたんですよ。そうのうちにしばらく見かけなくなって、もうやめちゃったのかと残念に思っていたところ、また新譜のリリースが発表されて、嬉しい限りです。 そこで、手許にあるBiddulphのCDからいくつか取り上げてみるにあたって、今回はこれまでに取り上げたものを振り返っておこうと思います― Brahms:Viola Sonata No.1(1946) William Primrose (viola)、William Kapell (piano) Brahms:Viola Sonata No.2(1937) William Primrose (viola)、Gerald Moore (piano) Brahms:Two Songs for alto, viola obbligato and piano(1941) Marian Anderson (contralto), William Primrose (viola), Franz Rupp (piano) Brahms:Dein Blaues Auge, Immer Leise wird mein Schlummer, Der Schmeid, Alto Rhaosody(1939) Marian Anderson (contralto), Eugene Ormandy, The Philadelohia Orchestra, University of Pennsylvania's Men's Glee Club BiddulphLAB150(CD) このdiscを取り上げるのはもう3度目(笑)え? 前にも聞いたって? 私は老人だから同じ話を何度もするんです。黙って聞きなさい。 ヴィオラ(すなわちアルト)とアルト歌手によるブラームスの録音をまとめたユニークな企画。ヴィオラのプリムローズとマリアン・アンダーソンに焦点を当てたブラームスの歴史的録音集。マリアン・アンダーソンは「アルト・ラプソディ」は1945年にピエール・モントゥーと、1950年にフリッツ・ライナーとも再録音しています。このオーマンディとの共演はCDで、ライナーとの共演はLPで、モントゥーとの共演はSP盤で所有しているので、どれかの系統の機械が故障しても、アンダーソンの「アルト・ラプソディ」は聴くことができます(笑) 「054 マリアン・アンダーソン リンカーン記念堂の75,000人コンサート」 「126 ブラームス アルト・ラプソディのレコードから」 "Erich Kleiber conducts waltzes by Strauss, Heuberger & Weber" ウェーバー(ベルリオーズ編曲):舞踏への勧誘 1932 ヨゼフ・シュトラウス:オーストリアの村つばめ June 1933 J・シュトラウスII:「ジプシー男爵」序曲 June 1933 同:芸術家の生活 3/2/1929 同:「こうもり」序曲 June 1933 同:Du und Du Walzer 3/2/1929 同:皇帝円舞曲 1932 ホイベルガー:「オペラ舞踏会」序曲 June 1932 R・シュトラウス(Singer編曲):「薔薇の騎士」からワルツ September 1934 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(芸術家の生活、Du und Du) ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 Biddulph WHL002 (CD) 英Biddulphでオーケストラものは比較的めずらしく、これ以外にはフルトヴェングラーのチャイコフスキー「悲愴」と、トスカニーニのBBC交響楽団を振ったHMV録音を所有しています。もちろん音質(復刻)は最上級。このエーリヒ・クライバーに関しては、戦後のDECCA録音と同列に比較するものでもないかもしれませんが、これらの旧い録音の方が、より生き生きとしており、戦後のDECCA録音だけ聴いて、この指揮者は穏健派かと思っていたところ、少し印象が変わりました。意外と骨太で引き締まった厳しい表情も。それでいて、高貴なまでに上品です。ただし、その音楽造りはあらかじめリハーサルで徹底して準備されたもの、即興性とは無縁です。 「115 クライバーと言えばエーリヒ」 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」 ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第2番 同:ヴァイオリン・ソナタ第3番 イゾルデ・メンゲス(ヴァイオリン) アルトゥール・デ・グリーフ(ベートーヴェン)、ハロルド・サミュエル(ブラームス) 1925.10., 1929.6., 1929.12. Biddulph LAB076 (CD) "Isolde Menges The Auer Legacy" Disc1 1. J.S.バッハ:ヴァイオリン・ソナタ第3番ホ長調 BWV.1016 録音:1928年6月11日&12月13日/初出盤:HMV C 1632/33 2. J.S.バッハ:管弦楽組曲第3番ニ長調 BWV.1068~エア(ウィルヘルミ編) 録音:1927年6月27日/HMV D 1288 3. J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番ホ長調 BWV.1006~ガヴォット(クライスラー編) 録音:1929年6月26日/HMV B 3465 4. J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番ト短調 BWV.1001~フーガ 録音:1922年9月7日/HMV E 269 5. J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調 BWV.1004~シャコンヌ 録音:1924年4月27日/HMV D 875/76 6. ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.61 録音:1923年9月4,5,6,21日/HMV D 767/71 Disc2 7. ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタ イ長調 Op.1-3, HWV.361 録音:1926年10月11日/HMV D 1371 8. ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタ ニ長調 Op.1-13, HWV.371 録音:1921年12月16日、1922年1月11日/HMV E 279/80 9. シューベルト:ヴァイオリン・ソナタ(ソナチネ)第3番ト短調 D.408 録音:1927年12月13日/HMV D 1398/99 10. シューベルト:アヴェ・マリア(ウィルヘルミ編) 録音:1927年6月27日/HMV D 1313 11. ブラームス:ハンガリー舞曲 第7番イ長調(ヨアヒム編) 録音:1930年1月10日/HMV B 3465 12. フバイ:チャールダーシュの情景 第4番『ヘイレ・カティ』 Op.32 録音:1926年12月1日/HMV D 1223 13. フバイ:花の生命~第5曲『ゼフィール』 Op.30-5 録音:1930年1月10日/HMV B 3749 14. ショパン:夜想曲 変ホ長調 Op.9-2(サラサーテ編) 録音:1927年6月27日/HMV D 12881 15. ヴィエニャフスキ:ヴァイオリン協奏曲第2番ニ短調~第3楽章「ア・ラ・ツィンガラ」 録音:1916年9月1日/HMV D 529 16. ファリャ:スペイン舞曲(クライスラー編) 録音:1927年10月31日/HMV E 508 17. スタンフォード:妖精の踊り Op.89-3 録音:1928年6月12日/HMV C 1623 18. エルガー:愛の挨拶 Op.12 録音:1927年6月27日/HMV D 1313 19. ヴォーン・ウィリアムズ:揚げひばり 録音:1928年3月21日/HMV C 1622/23 イゾルデ・メンゲス(ヴァイオリン) ハロルド・サミュエル(ピアノ:1) アイリーン・ビーティー(ピアノ:2,3) サー・ランドン・ロナルド指揮、ロイヤル・アルバート・ホール管弦楽団(6) アイリーン・ビーティー(ピアノ:7,8,10-14,16-18) アルトゥール・デ・グリーフ(ピアノ:9) チャールトン・キース(ピアノ:15) サー・マルコム・サージェント指揮、オーケストラ(19) 復刻プロデューサー: Eric Wen 復刻エンジニア:Raymond Glaspole デジタル・マスタリング:Rick Torres Biddulph BIDD85047 (2CD) 後者は最近の発売で、"The Auer Legacy"シリーズのうちのひとつ。 つい先日取り上げたばかりなので、コメントはそちらをご参照ください。そこでも言いましたが、イゾルデ・メンゲスによるバッハのシャコンヌ、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲、ヴォーン・ウィリアムズは、記念すべき世界初録音です。 「163 女流ヴァイオリニストのdiscから その2」 バッハ:無伴奏チェロ組曲 BWV1007~BWV1012のヴィオラ版 リリアン・フックス(ヴィオラ) 1番、3番:1954年5月14,17,26日 2番、6番:1951年5月3,7,8日 4番、5番:1952年5月16日(4,5) Biddulph 85002-2 (2CD) ヴィオラ版の、セッションによるmono録音。 以下の2曲を併録。 モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲変ロ長調 K.424 マルチヌー:ヴァイオリンとヴィオラのための「3つのマドリガル」 こちらのヴァイオリンはリリアンの兄ジョセフ・フックス、録音は1950年6月12日。 これも最近の発売。Biddulphには良質な復刻盤をどしどしリリースしてもらいたいものです。 「146 バッハの無伴奏チェロ組曲のdiscから」 (Hoffmann) |